
21日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、8月米購買担当者景気指数(PMI)速報値や7月米中古住宅販売件数が予想より強い内容だったことで、米長期金利の上昇とともに148.41円まで上昇した。ユーロドルは、米PMI速報値や米住宅指標が予想より強い内容となり、米長期金利が上昇幅を拡大したことなどで1.1601ドルまで下落した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、8時30分発表の7月の全国コア消費者物価指数(CPI)を見極めた後は、23時から予定されているジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長の講演を控えて動きづらい展開が予想される。
8時30分に発表される7月の全国コア消費者物価指数(CPI)は前年比+3.0%と予想されており、6月の同比+3.3%からの伸び率の鈍化が見込まれている。電気・都市ガス代の支援策は25年3月使用分でいったん終了したが、7~9月使用分(CPIヘの反映は8~10月)から再開される。また、ガソリンへの補助金は、原油価格高騰を受けて6月末から1リットル当たり175円を上回る部分を全て補助する仕組みに切り替えられることとなったため、エネルギー価格は今後前年比でマイナスとなる公算が大きくなっている。すなわち、コアCPIの上昇率は、エネルギー価格の上昇率の低下を受けて伸び悩む可能性が高まっている。
しかしながら、経済・物価情勢の展望(展望リポート)での2025年度のコアCPI見通しは+2.7%となっていることで、利上げ再開の条件である「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」をクリアすることになる。
さて、今夜のジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長の発言を推測しておきたい。昨年は「利下げの時が来た」と表明し、9月米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.50%の大幅利下げに踏み切っていた。
タカ派シナリオとして、パウエルFRB議長が、フェドウオッチがほぼ確実視している9月FOMCでの0.25%の利下げ見通しにも関わらず、8月のデータを見極めたい、と言及する背景は以下の通りとなる。パウエルFRB議長は、「この夏にかけてトランプ関税は目に見えて物価に影響してくる」と述べていた。7月の米消費者物価指数(CPI)の伸び率は鈍化していたが、卸売物価指数(PPI)は、川上の輸入業者が関税分を価格に転嫁しつつあるため伸び率が上昇していた。8月の川下のCPIへ波及する可能性が高まっており、9月16-17日のFOMCの前の11日に発表される米8月CPIまで待つ理由となる。7月のFOMC議事要旨でも、「過半数のメンバーはインフレリスクが雇用リスクを上回ると認識」しており、「物価の安定」に軸足を置いていた。
ハト派シナリオは、パウエルFRB議長や多数派の据え置きの前提である「労働市場は堅調」という見立てが、米7月雇用統計ショックで崩れたことで、「雇用の最大化」に軸足を移すことになる。
(山下)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
市場概況 東京為替見通しドル円 7月コアCPIを見極めた後はパウエルFRB議長講演待ち
2024年8月、日本株式市場の代表指標であるTOPIX(配当込み)は前月末比2.90%下落し、日経平均株価は前月末比1.16%下落しました。 当月の日本株式市場は歴史的な乱高下を演じ、日経平均株価の月間値幅(高値と安値の差、終値ベース)がバブル経済崩壊時期を超えて過去最大となりました。 7月31日の日銀金融政策決定会合での追加利上げが円高を呼び、さらに市場予想を下回った7月の米ISM製造業景気指数で米国景気減速懸念が台頭し円高が一層進行したことで、月前半の日本株式市場はリスク回避の流れが強まり暴落しました。5日には米国経済や雇用の減速への警戒などから円高が大幅に進み、午後には日経平均先物でサーキットブレーカーが13年ぶりに1日に2回発動され、日経平均株価は前日比4,451円の下落と過去最大の値下がりを記録しました。しかしながら翌6日には為替市場がいったん落ち着いたことで日本株式市場も落ち着きを取り戻し、TOPIXおよび日経平均株価は史上最大の上げ幅となりました。加えて、翌7日の内田日銀副総裁のハト派発言も投資家の安心感につながり、月半ばにかけて日本株式市場は急反発しました。 月後半は米国経済への先行きに対する警戒感がひとまず和らぎ、日本株式市場は緩やかなペースで回復し、月前半の急落分の大半を取り戻して当月の取引を終えました。
1.差別化された製品であれば関税による価格上昇があっても需要は減らない例えば2000年代から当ファンドで保有しているキーエンスは製造業向けにファクトリーオートメーションセンサを通じて圧倒的な付加価値を提供しています。省力化・省人化による合理化効果・生産性改善がはるかに売価を上回るため、関税による価格上昇は大きな問題にならないと考えます。 2.米国での現地生産体制が充実している企業も影響小さい例えば信越化学工業の塩ビ事業はルイジアナ州、テキサス州を中心に原料調達から生産までの一貫生産体制を築いており懸念は小さいと思われます。 3.日本企業が展開する非製造業は関税の対象にはならない米国で事業を行っている日本企業は必ずしも製造業だけではありません。リクルートホールディングス傘下のIndeed社(米国)が展開するオンライン求人プラットフォームサービスや東京海上ホールディングスの保険事業のような金融サービスもありますが、これらは関税の対象外です。
4)経営陣は4月18日にリリースしたValueAct社に反論するプレゼンテーション資料のなかで、Speedway社(米国)を買収したことによって、同社株のEV/EBITDAマルチプル(簡易買収倍率、買収にかかるコストを何年で回収できるかを⽰す値)が4.3倍から7.5倍に拡大したと主張し、あたかも株式市場からの評価が上がったかのような主張をしています。EV(Enterprise Value)は企業価値と呼ばれ、株式時価総額とネット有利子負債の合計であり、EBITDAは税引前利益に特別損益、支払利息、減価償却費を加えて算出される利益を表します。当ファンドの見解では、マルチプル拡大は同社がSpeedway社の買収のために多額の借入金を調達したことで、分子であるEVが大きく増えたことに起因しています。つまり買収によってEBITDAは増えたものの、EV増加率が上回ったためにマルチプルが押し上げられたに過ぎないと考えます。むしろ同社に対する株式市場の評価を株価収益率(PER)でみると、2005~2019年度の平均20倍以上から、現在は実質13.8倍程度(のれん償却前当期利益を前提としたPER)へと切り下がっていると考えられます。
2022年4月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比2.40%の下落となりました。 当月の日本株式市場は、堅調な米雇用統計や新年度入りに伴う新規の資金流入期待から上昇で始まりました。しかしその後、金融引き締めに慎重なハト派で知られるFRB(米国連邦準備制度理事会)のブレイナード理事が強い金融引き締め姿勢を見せたことで、米長期金利が大幅に上昇し、半導体株など中心に下落しました。 月半ばには、円安ドル高が進行したことで、輸出関連株中心に株価は堅調に推移したものの、FRBの更なる金融引き締めスタンスや、中国都市封鎖の長期化が嫌気され、上値は限られました。 月後半には、米長期金利上昇の一服感や好決算を発表した銘柄への物色が支えとなり、株価が上昇する局面もありました。しかし、引き続き米中経済の不透明感を懸念する売りも出て一進一退の展開となり、最終的に前月末を下回る水準で月を終えました。
注目された米7月CPIは前年比+2.7%、コアCPIは前年比+3.1%と発表され、パウエルFRB議長が「夏にかけ関税は目に見えて物価に影響する」と予告していたようなトランプ関税による物価上昇圧力は確認されず、8月分を待つことになった。
なお井上CEOは現在71歳なので、決して「若いCEO」とは言えません。同氏のコメントからは当面続投するエネルギーが十分みなぎっているようにみえますが、一方で後継者へのバトンタッチの時期が近付いていると示唆する発言も目立ちます。 「CEO就任から9年が経ちましたが、次世代へのバトンタッチは以前から意識しています。後継者は現在の方針を踏襲する人を選ぶべきという意見もあるようですが、私は違うと思っています。次世代のCEOは、むしろ私のやり方を否定するくらい明確な自己を持った人が務めるべきでしょう。」 当ファンドでは、同氏の経営手腕を高く評価しており、セルサイドのアナリストの間でも同氏を支持する声は多いように感じます。具体的な後継者がみえていないことを不安視する向きもありますが、当ファンドでは性善説の立場で、同社の指名委員会がしっかりとした人選を行ってくれると考えています。現在の市場による株価評価には少なくとも「井上プレミアム」なるものは認められません。一部の上場企業のようにカリスマ経営者を理由に株価が高く評価されているケースに比べるとCEO交代が大きくネガティブ視されるリスクは低いと考えます。
2022年9月の月次報告書において、当ファンドでは、企業が実際にビジネスを運営する際に使用している資本に対してどれくらいの利益を生み出しているかをみる指標としてROE(株主資本利益率)よりもROCE(使用資本利益率)が有効であるとお伝えしました。なぜなら高いROEは、株主資本を意図的に過小にすることで比較的容易に達成できてしまうからです(過小資本の企業は財務リスクが高くなるので必ずしも望ましいと言えません)。しかし、なかには株主資本が非常に分厚くても高いROEを実現している企業も存在します。その一社が、当ファンドが最近新規投資したHOYAです。 光学ガラス部品メーカーである同社は、日本のなかでも極めて収益性の高い製造業です。手掛けている製品は半導体製造に欠かせないマスクブランクスやハードディスク用ガラス基板といったハイテク部材、メガネレンズ、コンタクトレンズといった生活必需品、および眼内レンズや内視鏡といった医療用製品など多岐にわたります。 同社が素晴らしいのは過去5年平均ROE19.9%、同10年平均17.9%、同15年平均16.4%、同20年平均17.6%と、どの時間軸でみても日本企業の平均を大幅に上回る高い資本収益性を誇るところです。同社は自己資本比率が平均7~8割という分厚い資本構造にも拘わらずこれを達成しています。また営業利益は2008年金融危機以前のピークから2022年3月期にかけて約2倍に成長、過去10年の一株当たり利益成長率は年率16%です。 ではどのように経営陣はこれを達成しているのでしょうか? 一つ目は、手掛けている製品の利益率が非常に高いということです。最先端の半導体製造に使われるEUVマスクブランクスは世界シェア7割程度、ハードディスク用ガラス基板に至ってはシェア100%と言われています。このため同社は価格決定権が強く、これら製品の営業利益率は5割を超え、大きな超過利潤を得ることができていると考えます。同社の基本的な事業戦略に「小さな池の大きな魚」という考え方があります。これはニッチ市場において圧倒的なシェアを獲得すれば、高い利益率を確保できるという意味です。実際、マスクブランクス、ハードディスク用ガラス基板などは世界市場規模が1000億円~1500億円程度の「小粒」な分野です。しかし、これらの市場は成熟産業ではありません。今後市場拡大が続くことで同社の売上成長が期待されます。 二つ目は、生産設備などの資産効率が高いということです。同社のキャッシュフロー計算書を時系列で見ていくと、多くの年度において設備投資額が減価償却を下回っています。このため2008年3月期時点で1,522億円あった有形固定資産(純額ベース)は、2022年3月期においても1,697億円と微増に留まっています。それにも拘わらず、同社の連結売上は4,816億円から6,614億円へと約4割増えているのです。これは同期間にかなり効率的あるいは価格競争力のある経営が行われていたことを意味します。実際、同社は設備投資の経営判断を行う際、確度の高い顧客企業の短中期的な需要見通しのみを前提に生産能力増強を行うように心掛けています。このため、生産設備の稼働率は常に8割程度とフル稼働に近い状況が維持されています。 三つ目は、時代を通じて事業ポートフォリオの取捨選択を行っている点です。同社は1941年の創業です。当初はクリスタル食器製造を行い、その後1960年代にメガネレンズ、1970年代にコンタクトレンズ、半導体マスクブランクス、1980年代に眼内レンズ、1990年代にハードディスク用ガラス基板、2007年には内視鏡(ペンタックス㈱を買収)など、それぞれ有望市場と思われる分野に参入しています。一方で、2009年には祖業ともいえるクリスタル事業から撤退、2010年にはHDDガラスディスクのメディア事業から撤退(現在は基板事業に特化)、2011年にはペンタックス㈱買収時に取得したデジタルカメラ事業を売却するなどをしています。これによって常に収益性が高く、将来の展望が明るい製品群を維持し続けていると考えられます。 四つ目は、余剰資金を活用した自社株買い・消却によって株主資本の過度な膨張を防いでいるという点です。高い競争力からこれまで継続的に高水準の利益を生み出し、例えば同社の自己資本比率は2008年3月期の57%から2015年3月期に81%へと上昇しましたが、それ以降は自社株買いを定期的に行うようになっており、同比率は80%前後で安定推移しています。自己資本比率8割というのは同社の潜在的な事業リスクに対して過剰だとも言えますが、少なくとも高いROE維持の妨げともなりうる、必要以上の自己資本の積みあがりは抑えられていることがわかります。また自社株買いを行うようになって以降、一株当たり利益の成長率は当期利益全体の成長率を約1%強上回る状況が続いています。これは定期的に買い入れた自社株の消却を行なっているためです。 最後に同社はガバナンス面でも先進的な会社であることが広く知られています。社外取締役を置くようになったのは1995年と早く、また2000年代初頭には半数以上が社外取締役となるよう定款に定められています。経営の執行と監督の分離がしっかりと行われている模範のような会社と考えます。
では、アメリカの利下げの織り込みの変遷を確認します。7月雇用統計の前は9月の利下げを40%しかおり込んでいませんでした。これが、雇用統計を踏まえ先週末(8/8)の時点で89%、年内の利下げ回数を2.3回織り込むに至り、100近かったドル指数も2%程度下落しました。さらに、CPIとベッセント財務長官の発言後、さらに利下げの織り込みが進みました。特に、ベッセント財務長官の発言後、9月の利下げの織り込みが107%に達しています。これは25bpの利下げをフルに織り込んだ上、50bp利下げの可能性も7%ほど織り込んだことを意味します。但し、その後はアメリカの生産者物価指数を受けて利下げの織り込みが後退しています(6ページ)。
リクルートホールディングス 2023年3月期第1四半期決算では、売上収益は前年同期比26.8%増、調整後EBITDAは同15.9%増と当四半期は好調な決算が続きました。しかし、経営陣は主力のオンライン求人広告事業(HRテクノロジー部門)について、金利上昇に伴う景気減速感の台頭で7月以降に売上伸び率にも減速の兆しがでてきていることを認めており、通期の見通しは慎重に見たほうが良さそうです。とはいえ、同分野における同社の市場シェア・競争力ともに圧倒的と言われており(同社の2022年3月期決算説明会によると2021年の人材マッチング市場は前年比64%成長に対し、同社の売上増加率は100%以上)、労働市場環境が正常化すれば力強い成長力が戻ってくる可能性は高いと思われます。また国内で販促メディアを手掛けるマッチング&ソリューション部門では、コロナ終息後の経済再開に伴い成長軌道への回帰が見込めます。加えて、近年は顧客企業(飲食店、ヘアサロン、小売店など主に零細のパパママストア)の業務効率化を支援するためのSaaS(Software as a Service、ソフトウェアをインターネット経由で利用できるサービス)ベースのソリューション「Airビジネスツールズ」に注力しており、今後の牽引役になることも期待されます。同社の利益水準は過去5年でほぼ倍になっているうえ、同期間の平均ROEは18.8%と日本の上場大企業のなかでは屈指の水準です。
4)定量的な情報よりも定性的な情報 当ファンドは、定量的情報だけに依存せず、定性的情報も十分に加味します。もしくは定性的情報をより重視したうえで投資判断するように心がけています。財務データのような定量的情報は、市場参加者の誰もが同じデータを入手できます。一方、定性的な分析は、解釈が分かれやすく、情報として他人への伝達がされにくいという特徴があります。このため市場参加者は定量的情報をもとに投資行動をとる傾向が強く、定性的情報をもとに投資行動に移そうとする人は少ないように見受けられます。定量的情報の例としては「この会社のROE(株主資本利益率)は20%を維持し続けている」や「この会社は売上成長率10%を過去10年続けている」などが挙げられます。一方、「この会社の経営陣は質が高い」や「この会社の企業カルチャーは強い」などは定性的情報の典型です。当ファンドでは「この会社は、今は業績が悪いが、社長のリーダーシップ能力が高いので、将来は高成長が見込める」という理由で投資に踏み切ることも珍しくありません。これも差別化されたポートフォリオを構築するため必要不可欠なアプローチだと考えます。
2022年6月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比2.05%の下落となりました。 当月の日本株式市場は、国内では新型コロナウイルスに対する水際対策の緩和、海外では中国上海市の都市封鎖の解除に伴う部品供給や物流の改善期待から、上昇して始まりました。 月半ばには、FRB(米国連邦準備制度理事会)のおよそ28年振りとなる0.75%の利上げ実施や、スイス国立銀行がおよそ15年振りの利上げを決めたことから、世界的な金融引き締めによる景気減速の懸念が高まり、株式市場は大幅に下落しました。 月後半には、米長期金利の上昇一服で日本株式市場の下落幅も縮小されましたが、最終的には期初を下回る水準で月を終えました。
当ファンドのパフォーマンスは前⽉末⽐3.51%の下落となり、参考指数の同2.05%の下落を1.46%下回りました。 当月のプラス貢献銘柄は、ロート製薬、東京海上ホールディングスなどでした。一方、マイナス影響銘柄は、リクルートホールディングス、三菱商事などでした。
2023年7月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比1.49%の上昇となりました。 当月の日本株式市場は、FOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨にて年内2回以上の利上げが示唆されたことや、米国の雇用統計の結果を受け、利上げ継続への懸念が強まり下落して始まりました。一方で月半ばには、米国のCPI(消費者物価指数)が市場予想を下回り、利上げ停止が近いとの期待から堅調に推移しました。月後半は、日銀によるYCC(イールドカーブ・コントロール)の柔軟化が発表され、一時的に値動きの激しい展開となりましたが、現行の緩和姿勢を維持するとの受け止めから市場に安心感が広がり、最終的に期初を上回る水準で月を終えました。
一般的に高成長が見込まれるインターネット関連銘柄は、ダウンサイドリスクを定量的にイメージしたうえで投資を行うのは非常に難しいものです。これは解散価値の目安といわれる純資産価値や高い配当利回り、あるいは市場平均を大きく下回るPER(株価収益率)といった定量的に割安な指標を見出すことが期待にしくいためです。 多くの場合、PERやPBR(株価純資産倍率)でみると他業種に比べ割高にみえるため、どんなに本源的価値が現状の時価総額を上回っていたとしても、株式市場は一時的なネガティブ材料に敏感に反応し、株価変動が激しくなる傾向があります。リクルートも例外ではありません。 しかし限界利益率の高いことが特徴であるインターネット企業が株式市場の予想を大きく超える業績発表をすることは往々にしてあります。このため、一見割高と思われる株価もある程度は許容できるものと判断しております。このような銘柄がファンド内に一定割合で存在することは中長期的なファンドリターンにとって有益なことだと当ファンドは考えます。 そしてポートフォリオ全体としてみれば、保有銘柄ごとにダウンサイドリスク、アップサイドリスクのバランスが異なり、高度に分散された集中型ポートフォリオが引き続き維持できているというのが当ファンドの見解です。
少数銘柄にしか投資しない理由は他にもあります。それは当ファンドが超長期でみた日本経済を取り巻く環境を決して楽観視していないこと、そしてそれが理由で当ファンドが投資基準を満たすと考える投資対象の数が限られているためです。米国市場と異なり日本の株式市場は上場企業の新陳代謝が遅く、旧態依然とした企業が相対的に多く、(少なくとも最近まで)成長意欲にも乏しい企業が多いことが一因です。 このような理由で当ファンドが運用戦略の中心に据えている集中型ポートフォリオは、確信度の高い投資対象があって初めて実現するものです。確信度の高い銘柄がない中で、無理に集中型ポートフォリオを維持することはしません。明るい展望が描けない個別株をポートフォリオ分散効果のみを目的に組み入れて運用成績がかえって悪化してしまえば本末転倒なためです。確信度の高い銘柄が不足しているときは、一時的に組入銘柄数を増やす方策をとる可能性は今後もあると考えられます。 インデックスに対するポートフォリオの乖離度合いをみる指標として「アクティブシェア」という数値がありますが、当ファンドは現在70%台半ばです。高い数値ほどインデックスに対して差別化されていると言えます。2010年代の当ファンドの同数値は90%前後で推移していたので、近年低下していることになりますが、基準価額は株式市場全体から有意に異なる動きになっており、引き続き十分に差別化されたポートフォリオになっているとの認識です。一般的には同数値が60%を下回るとそのアクティブ型ファンドはインデックスと代わり映えしないという意味で「closet indexing」と呼ばれ、真のアクティブ型ファンドとはみなされない傾向があります。 一方、アクティブシェアがどんなに高くても常に差別化されたリターン(インデックスと異なるリターン)になるとは限らないことを理解するのも重要です。インデックスから大きく乖離した独自性のあるポートフォリオでも、組入銘柄群がインデックスと全く同じ株価変動となれば、運用成績は市場平均リターンと同じになってしまいます。言い換えると、高いアクティブシェアは差別化されたリターンの「必要条件」ですが、「十分条件」ではないのです(*)。言うまでもなく、どんなにポートフォリオを差別化させても超過リターンに結びつかなければ意味がありません。誤った銘柄選択をしてしまえば、パッシブ型ファンドに負けてしまうため気を付けなくてはなりません。


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