建設会社が突然倒産 債権者は憤り
たとえば、ビル建設中に電気工事の下請け会社が破産すれば、その部分の作業が止まり工期に遅れが生じかねません。当然、元請け会社は発注者から遅延の責任を問われるリスクがあります。したがって、工事をどう再開して納期を守るかが喫緊の課題となります。
一方、破産とは法律上の清算手続きのことで、支払い不能に陥った会社につき裁判所が財産を整理する正式な手段です。建設業の破産手続きも他業種と基本は同じですが、取引額が大きく未完成の工事案件が残るため影響も大きくなります。
建設業では仕掛かり中の工事契約があれば、破産管財人はその契約を続行するか途中で解除するかを判断することになります。
実際の破産手続きでは、未払い分の請求権(元請けから見れば下請けへ支払う義務)は破産債権として扱われ、払いすぎ分の返還請求権は財団債権(優先的に返済される債権)として扱われます。財団債権は優先的に弁済されますが、破産債権は弁済されない可能性が高いことになります。
請負契約という名目だったとしても実態として雇用契約であるケースもあり、その場合は雇用契約であるとみなして相手方のもつ債権は労働債権として処理するということもあります。
しかし、元請け会社が孫請けに立て替え払いをした場合、その金額について後で倒産した下請け会社に請求できる求償権を取得します。元請けはこの求償権と自らの下請けへの支払い債務を相殺したいと考えますが、破産手続き開始決定後に取得した債権を使った相殺は認められません(破産申し立て後や支払い停止後に立て替えた場合も同様です)。そのため、立て替え払いに応じても元請け会社が二重払いのリスクを負う可能性が高いのです。
建設会社が請負う業務は、請負代金が高額となりやすい、工程が複雑である、専門的な知識や技術が必要となるなど、途中で止めることが難しいことが少なくありません。
破産を視野にいれている建設会社の経営者の方は、是非ご一読ください。
ただし、その契約が破産手続き開始前に注文者により解除されていた場合は、注文者の返還請求権は財団債権ではなく通常の破産債権として扱われるため注意が必要です。
破産管財人は、破産財団に資金的・設備的な余裕があって仕掛物件を完成させることで債権者への配当を増加できる見通しがある場合、従前の従業員を雇用することや従前の下請業者に依頼したりすることで、仕事を完成させることがあります。
さらに、建設工事は多数の人々が関わって進めるため、建設会社が営業を止めた場合、その建設を依頼した注文者はもちろん、各工事を請負っている下請業者など、多数の関係者が破産手続の影響を受けます。
しかし、建設途中の工事を継続できる体制を確保できたとしても、建設途中に労災事故が発生するリスクや、完成後の契約不適合責任(瑕疵担保責任)が破産債権となることから、この選択肢がとられることはあまり多くはないでしょう。
どのタイミングで破産を決断するのが良いのか、代表者や申立代理人弁護士はどういう調整を行って破産手続を申立てるのが良いのか、そして破産管財人としてどのような処理をしていくのが良いのか、あらゆるシーンで調整が必要となるのが建設会社の破産手続の特徴です。


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