
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年8月22日 13時15分
ドル安いったん収束、米データを確認しながら改めて議長発言を消化
米ドル/円、148円台へ上昇
米ドル/円は、パウエル米FRB議長の講演を控え、調整売りが先行し、146.866円まで下落する場面もありました。しかし、米国の企業景況感の改善を受けて、FRBの利下げペースを巡る見方が少し修正されると、米ドル/円は底堅さが増して148.70円台まで上昇幅を広げました。8月の米製造業購買担当者景気指数(PMI)は53.3と、7月の49.8から大幅上昇し、2022年5月以来の高水準となったほか、サービス業PMIでは価格指数が3年ぶりの高水準となり、インフレに対する警戒心が広がりました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
ハト派的トーンをパウエル議長が示す可能性は低い
執筆時点では、パウエルFRB議長の講演はまだ行われておらず、その内容次第で米ドル/円の方向性が変わる可能性があることは言うまでもありません。まずは、パウエル議長の発言に注目が集まります。
個人的には、住宅市場の低迷や労働市場の鈍化を背景に、抑制的な金融政策の度合いを調整する余地が少し広がっているように感じています。ただし、8月20日に公表された7月分のFOMC議事要旨では、「複数のメンバーが現行金利は中立金利を大きく上回らない可能性がある」と指摘されており、利下げの余地が限られていることが示されました。
この点を踏まえると、市場の期待に沿うほどハト派的トーンをパウエル議長が示す可能性は低いと考えられます。市場は利下げが2回程度との見方を持っているようですが、ややハト派に傾きすぎている印象があり、こうした見方の修正が進む中で、米ドル/円はショートカバーを伴い、150円台の回復を目指す展開も想定されます。
ただし、9月5日に発表される8月分の米雇用統計が7月よりも悪化していた場合、9月の利下げ実施の可能性が高まるため、今回の議長の発言だけを根拠に買い進めるのは危険です。こうした状況では、9月に関する明確な意向は示されない可能性が高く、バランスの取れた発言になるのではないでしょうか。
今後発表される経済データの重要度が増す中で、来週の米ドル/円は新規失業保険申請件数や個人消費支出などを確認しながら、パウエル議長の発言内容を改めて消化していくことになりそうです。
条件次第では150円台で戻り売りも(テクニカル分析)
右肩上がりの日足一目均衡表の雲が米ドル/円をサポートしている様子は、もう一段上を試す期待を高めています。ただし、相場の判断基準とされる200日移動平均線をいまだ割り込んでいる状態であり、上昇の勢いが今後強まるかどうかは不透明です。
仮に200日線を上回ったとしても、さらに上側での定着には、一目均衡表の基準線と転換線の好転など、新たな材料が欲しいところで、条件が揃わない中で150円台乗せとなるようであれば、短期的な過熱感から戻り売りを検討したいと考えています。
【米ドル/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:USD/JPY:146.000-151.000
8/25 週のイベント:

一言コメント
米ドルの主要通貨に対する強弱を示すドルインデックスは、8月14日に短期的な底を打ち、徐々に下値を切り上げる展開となっています。8月の弱い雇用統計を材料に進んでいた米ドル安の流れは、いったん収束したように見受けられます。
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来週の為替予想 米ドル 円
なお、日本円以上に選好されているのがスイスフランである。月初来で日本円はスイスフランで下落している。4日時点でスイスフランがG10通貨のなかで最も選好されている。
昨年9月16日の安値と今年1月10日高値のフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準144.13レベルを完全に下方ブレイクする場合は、142円台を視野に下落幅が拡大するサインとして警戒したい。
最後に、AIに「基本シナリオ、急激な円高シナリオ、超円安シナリオについて確率を予測してください」と指示したところ、図表4の分析が示された。基本シナリオが65%と最も高い発生確率を示している。急激な円高シナリオの発生確率は20%と算出された。このシナリオでは、地政学的ショックやグローバル金融危機、ドル信認の急激な低下といった要因により、政権移行期に突発的で急激な変動が発生し、その後も円高基調が継続すると予測されている。超円安シナリオの発生確率は15%と算出された。このシナリオでは、日本経済の構造的悪化や国際金融秩序の崩壊、制御不能なパニック売りを背景に極端な円売り圧力が発生し、政権移行期以降も異常な円安が加速する可能性が指摘されている。
東京株式市場で日経平均は4日ぶりに反発し、前営業日比23円12銭高の4万2633円29銭で取引を終えた。ジャクソンホール会議でのパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演を今晩に控え、様子見ムードが広がる中、積極的な売買は手控えられた。保険、銀行などの金融株の一角には買いが入り、TOPIX優位の展開となった。
3月のインフレ指標-CPIとPPI トランプ関税リスクが米ドル安と円高の要因になりつつある以上、来週のドル円(USD/JPY)も下値トライを意識する状況が続くだろう。トレンドは米経済指標に左右されるだろう。注目の指標は、10日の3月消費者物価指数(CPI)と11日の3月生産者物価指数(PPI)、4月のミシガン大学消費者態度指数および期待インフレ率(速報値)である。
第三に、想定外シナリオについては、AIが極端な市場変動の可能性を示唆している点が注目される。特に円高・超円安の両極端なシナリオを提示したのは、現在の国際金融市場が抱える構造的な脆弱性をAIが認識しているためだろう。
日足のMACDとモメンタムのトレンド、そして一目均衡表が「三役逆転」の状況にあることもドル円の地合い弱さを示唆している。
来週も下値トライを警戒、予想レンジの下限は142.00レベル 通貨オプション市場では、対円のリスクリバーサルがドルプットへ急速に傾いている。特に1週間のそれは、昨夏のリスク回避相場の回復途上にある水準までドルプットが進行している(4日時点で-2.575)。
弱気地合いでの「急反発」を警戒、まずは148円の攻防、上振れすれば149円が視野に 現在のドル円(USD/JPY)は、下値を意識する状況にある。しかし、週足のローソク足では長い下ヒゲが表れ、下落相場が一服するサインが点灯している。一時的にせよ今週の米経済指標が米ドルの買い戻し要因となれば、ドル円は弱気地合いのなかの「急反発」を警戒したい。
円高シナリオでは、政治的混乱による市場パニックや米国債市場での売り圧力から政権移行期で120~130円まで進行し、世界貿易の縮小や米国債格付け引き下げにより2029年初には90~105円に達すると予測。一方、超円安シナリオでは、極端な保護主義政策期待や日銀の金融緩和維持により政権移行期で160~180円まで進行し、対日貿易制裁や日本からの資本逃避を経て、2029年初には金融システムへの信認崩壊により250円以上も視野に入るとの分析が示された。
さらに、AIに「想定外シナリオについて就任日から任期終了までの予測を示してください」と指示したところ、AIは2つの極端なケースを提示した(図表3)。1つは「急激な円高シナリオ」で、米国の政治・経済の不安定化によるドル売りとリスク回避の円買いが同時進行するケースである。もう1つは「超円安シナリオ」で、市場の過剰反応による円売りの加速や日米の金融政策の乖離拡大が要因となるケースである。
現在のドル円は、下値トライの局面で特にボラティリティが拡大しやすい状況にある。昨年の9月下旬にサポート転換した142.00レベルを来週の予想レンジ下限と想定したい。再び144円を目指すサインとして、146.00と145.00の攻防に注目したい。
金融政策面では、急激な円安進行時に日銀が利上げし、住宅ローン金利の上昇など家計の負担増加につながる可能性がある。また、米中対立の激化は日本企業のサプライチェーンに混乱をもたらすおそれがあり、特に中国に生産拠点や市場をもつ企業では、事業戦略の見直しを迫られるのではないか。地域経済への影響も無視できず、輸出産業が集積する地域では雇用・所得の改善が期待される一方、内需依存型の地域では物価上昇による消費低迷が懸念される。
転換線と基準線を上方ブレイクし、ドル円が148円台へしっかりと上昇する場合は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準148.21レベルの突破が焦点となろう。
ブルームバーグがまとめた市場予想によれば、3月CPIは前月比のコアを除きインフレが鈍化の予想にある。問題はPPIである。3月は前月比と前年同月比でともにインフレの粘着性が示される可能性がある。インフレの再燃は米金利の上昇要因だが、現在は景気不安の方が強く意識されている。3月のインフレ指標が上振れて「米金利の反発→米ドルの買い戻し」となっても、一過性の動きで終わる展開を想定したい。米ドルの買い戻し局面では、戻り高値の水準を見極めることがドル円の焦点となろう。


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