日本に8人 切手デザイナーの世界
その作り手が、日本にわずか8人しかいないことを、ご存じでしょうか。
沢山のアイデアを頂いてとてもうれしかったです!ありがとうございます。春ののんびりした雰囲気を表現した、素敵な切手を作りたいです。この企画を通して、切手や手紙にもっともっと興味をもっていただけたらうれしいです!
──明治時代からスタートした日本の切手文化ですが、ビジュアル表現においてどのような可能性を感じていますか?
取材を通して驚いたのは、それぞれ多くのこだわりを持って切手をデザインされていながら、そうしたこだわりの数々は切手という成果物から必ずしもすべてがわかるわけではないということでした。切手デザイナーの方々に切手の話を聞くとたくさん話してくださり、デザイナーの方々は饒舌で雄弁なんですけど、切手は無口。でも、それが切手の魅力でもあります。全部わかっても面白くないですし、切手の奥には何かあると感じながら使うのが楽しいように思います。
また、国の記念日や周年などの記念切手では比較的堅いイメージのモチーフが選ばれがちですが、利用者層を考えてやわらかい方向のモチーフにすることも少なくありません。郵便局にいらっしゃるお客様の7~8割は女性だといわれているので、堅いデザインの切手だと、あまり喜んでいただけないんです。ですから堅い題材を扱いつつも、いかにお客様の心にフックするように仕上げるかというところでデザイナーの力量が試されるんです。
教授からは、「自分を大きく見せずに、等身大で面接を受けたほうがいいよ」と言ってもらったので、ありのままの自分で臨んでいくことにしたんです。そしたら、日本郵便とのご縁に繋がったというのが経緯ですね。
こんにちは。今日は自分が担当した切手をいろいろ持ってきました!
多分、楠田デザイナーがこの切手を作り始めたときから、つまりはまだ絵になる前から、そこに時が流れ、空気があったんだと思います。1本目の線を描く前にどれだけ考えて、どれだけ心を動かしたか。そういうものを感じたんです。ひと言でいえば「世界観」のようなものがある。だから、私はそこに言葉が足せたんだと思います。
──丸山さん流、切手の楽しみ方があれば教えてください。
災害などに関連した寄附金付き切手を発行する際に、第一に求められるのはスピード感です。被災地の悲しみに寄り添い、国民とともに立ち向かっていくには、とにかく早く動く必要があります。翌週、早速、寄附金付き切手を発行することが決まりました。今回は未曽有の災害なので初めての試みとして「災害そのものをテーマにした切手」を制作することになりました。
蒸気機関車や黒電話がなくなっていったように、より便利なものが選ばれるようになるのはあたりまえのこと。ただ、手紙や切手がゼロになることはないとも考えています。手書きには、デジタルのテキストでは表現しきれないメタ情報がある。昔の恋人にもらった手紙を見返すと、当時のことが蘇ってくるじゃないですか(笑)。そうしたコミュニケーションは、価値あるものとしてこれからも残っていくと思っています。
楠田デザイナーといえば、私の中では2019〜2021年に発行された「ふみの日にちなむ郵便切手」の数々。楠田デザイナーの中にある世界から飛び出した切手だと思っています。今回の本を書く際、これらの切手を見ただけで、私の中から次々と言葉が浮かびました。例えば、2019年のものなら、「犬を連れてポストに入れたあの手紙、猫がまどろむ郵便受けにそろそろ届くころかしら。その手紙を届けてくれるのは、赤い自転車? 白い鳩?」といった具合に。
――間部さんが考える、8人の切手デザイナーの個性が際立つ切手をそれぞれ教えてください。本に登場する順番で、まずは玉木デザイナーからお願いします。
切手であることの緊張感はすごくお持ちですね。本には登場しませんが、楠田デザイナーが手がけた「楽器シリーズ 第1集」では、金管楽器のカーブや裏側がどうなっているのか、動画なども参考に、楽器をさまざまな角度から見て描いたそうです。
150年以上も前から、手紙や絵葉書にのせて私たちの想いを運び続けてきた、小さな小さな「切手」。日本で最初の郵便切手が発行されたのは、1871年4月20日のことでした。



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