
このレポートの概要:米国株式市場と外国為替市場の最新動向と分析
金融マーケットで永く情報発信を行っている田嶋智太郎氏が、米国株式市場の最新動向を詳しく解説します。
FRBが優先するのは「雇用の安定」
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長はジャクソンホールでの講演において、労働市場の下方リスク上昇に伴って利下げが正当化する可能性に言及した。前回、筆者は市場のムードについて「ひとまず、雇用の安定の方を優先せざるを得ないだろうとの見方を強めている模様」と述べたが、その時点の市場の判断はパウエル氏の考えに近かった。
ところが、後に市場は「議長がタカ派姿勢を温存する可能性も大いにある」との見方を俄かに強め始める。それは、20日に公表された7月開催分のFOMC議事録に「多くの委員がインフレリスクは雇用リスクを上回っていると認識」と記されていたことが一因。むろん、このFOMCが7月の雇用統計前に開催された点を考慮する必要があることはわかっていたが、後に発表された8月の米製造業購買担当者指数(PMI)などが強い結果を示したこともあり、市場ではドルショートの巻き戻しが進む一幕があった。
S&P500種は先週の下げを埋め戻した
一旦後退した米利下げ期待が再度“復活”したことで、先週22日の米株市場は大いに活気づいた。S&P500種の日足ロウソクは5月以来の大きな陽線を描き、その終値は8月14日に付けた過去最高値に顔合わせしている。ただ、言い方を変えると同日のS&P500種の上昇は15日以降の価格調整を埋め戻したに過ぎない。つまり、14日の高値は9月米利下げ(0.25%ポイント)をほぼ織り込んだ値であり、一段の上値を追う展開となるためには、さらに追加の材料が必要になると考えることもできそうである。
今回のパウエル議長講演の内容は、緊急対応レベルとなる0.50%ポイントの利下げを正当化するほどのものではなかった。もちろん、9月5日に発表される8月の米雇用統計の結果が厳しいものとなれば、あらためて大幅利下げの思惑が市場に広がる可能性もあるが、それはそれで米国経済の先行きが一層危ぶまれて米株安につながりかねない。

しばらくはリリーフ・ラリーが続く?
なお、パウエル議長は「関税は長期的なインフレを誘発する可能性がある」と述べることも忘れなかった。7月のCPIが発表された際、市場関係者の多くが「どうやら関税の影響が本格的に出るのは8月以降になりそう」と解釈したことも忘れてはなるまい。
むろん、今しばらくS&P500種がリリーフ・ラリー(安堵の相場上昇)を続ける可能性もあると思われるが、遅くとも9月~10月あたりには一定の調整を交える局面が訪れるものと個人的には考える。価格調整時の下値サポートとしては、一つに25日移動平均線の信頼感が強いわけであるが、それだけに同線をひとたびクリアに下抜けると、ひとまずは6200ポイントあたりまで下落する可能性もあるものと見ておきたい。
またも31週線がドル/円の上値を押さえた
先週末22日のドル/円は、パウエル議長の講演が始まった後に同日の日中高値から一時的にも2円以上下落する場面があった。結果、ドル/円の週足ロウソクはまたしても終値で31週移動平均線(31週線、現在は147.30円処に位置)を超えられなかった。週の終値ベースでは、2月下旬以来長らく同線を超えられていない状況が続いており、今後も同線は一つの上値抵抗として意識されやすいと見ておくことが必要となろう。
もちろん、日々の動きのなかで短期的に上値を試す動きが見られることもあろうが、その場合は21日移動平均線(21日線、現在は147.85円に位置)に上値を押さえられやすいということも念頭に置いておきたい。
一段のドル安・円高には追加材料が必要
22日のドル/円の下げが146.57円処に留まり、8月14日の安値=146.21円処を試すまでには至らなかったということも見逃せない。振り返ると、14日の下げを演出したのは「FRBは0.5%ポイントの大幅利下げを実施すべき」、「日銀は利上げするだろう」と述べた前日のベッセント財務長官の発言である。つまり、ドル/円が一段の下値を試す展開になるためには、やはり何らかの材料が追加で必要になるということであり、その一つの候補が今週29日に発表される7月の米個人消費支出(PCE)価格指数の結果であることはあらためて押さえておきたい。
ドル円週足チャート

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米国NQ100(60分足):ナスダック総合

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田嶋智太郎氏
経済アナリスト 慶應義塾大学を卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券を経て、経済アナリストに転身。現場体験と綿密な取材活動をもとに、金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の資産掲載まで幅広い範囲を分析・研究。 WEBサイトで経済・経営のコラム執筆を担当し、株式・外為・商品などの投資ストラテジストとしても高い評価を得ている。 また、「上昇する米国経済に乗って儲ける法」など書籍も手掛けるほか、日経CNBCレギュラーコメンテーターも務める。
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パウエルFRB議長の講演で米利下げ期待再熱S ampP500は高値回復 ドル円の上値は限定的か
外国為替市場で円の上昇余地が総じて限られている。22日のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演を受けて米利下げの織り込みが改めて進んだものの、米金融政策への期待から米株価が押し上げられる「FRBプット」効果で投資家はリスクをとる余裕を保っている。相変わらず金利水準が極めて低い日本の円には重荷だ。
先週末22日のドル/円は、パウエル議長の講演が始まった後に同日の日中高値から一時的にも2円以上下落する場面があった。結果、ドル/円の週足ロウソクはまたしても終値で31週移動平均線(31週線、現在は147.30円処に位置)を超えられなかった。週の終値ベースでは、2月下旬以来長らく同線を超えられていない状況が続いており、今後も同線は一つの上値抵抗として意識されやすいと見ておくことが必要となろう。もちろん、日々の動きのなかで短期的に上値を試す動きが見られることもあろうが、その場合は21日移動平均線(21日線、現在は147.85円に位置)に上値を押さえられやすいということも念頭に置いておきたい。
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は22日の講演で現在の状況は「引き締め的な政策スタンスの調整を正当化する可能性がある」との認識を示した。投資家は9月にFRBが利下げを再開するとの確信を強めている。講演前に株式相場が調整していただけに、安堵感から株高に弾みが付いた。
一旦後退した米利下げ期待が再度“復活”したことで、先週22日の米株市場は大いに活気づいた。S&P500種の日足ロウソクは5月以来の大きな陽線を描き、その終値は8月14日に付けた過去最高値に顔合わせしている。ただ、言い方を変えると同日のS&P500種の上昇は15日以降の価格調整を埋め戻したに過ぎない。つまり、14日の高値は9月米利下げ(0.25%ポイント)をほぼ織り込んだ値であり、一段の上値を追う展開となるためには、さらに追加の材料が必要になると考えることもできそうである。今回のパウエル議長講演の内容は、緊急対応レベルとなる0.50%ポイントの利下げを正当化するほどのものではなかった。もちろん、9月5日に発表される8月の米雇用統計の結果が厳しいものとなれば、あらためて大幅利下げの思惑が市場に広がる可能性もあるが、それはそれで米国経済の先行きが一層危ぶまれて米株安につながりかねない。
なお、パウエル議長は「関税は長期的なインフレを誘発する可能性がある」と述べることも忘れなかった。7月のCPIが発表された際、市場関係者の多くが「どうやら関税の影響が本格的に出るのは8月以降になりそう」と解釈したことも忘れてはなるまい。むろん、今しばらくS&P500種がリリーフ・ラリー(安堵の相場上昇)を続ける可能性もあると思われるが、遅くとも9月~10月あたりには一定の調整を交える局面が訪れるものと個人的には考える。価格調整時の下値サポートとしては、一つに25日移動平均線の信頼感が強いわけであるが、それだけに同線をひとたびクリアに下抜けると、ひとまずは6200ポイントあたりまで下落する可能性もあるものと見ておきたい。
22日のドル/円の下げが146.57円処に留まり、8月14日の安値=146.21円処を試すまでには至らなかったということも見逃せない。振り返ると、14日の下げを演出したのは「FRBは0.5%ポイントの大幅利下げを実施すべき」、「日銀は利上げするだろう」と述べた前日のベッセント財務長官の発言である。つまり、ドル/円が一段の下値を試す展開になるためには、やはり何らかの材料が追加で必要になるということであり、その一つの候補が今週29日に発表される7月の米個人消費支出(PCE)価格指数の結果であることはあらためて押さえておきたい。





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