
総括
FX「米中通商協議に進展の兆し、レアアースでは激しく対立」人民元見通し
(通貨10位、株価12位=上海、香港ハンセンは3位)
予想レンジ 人民元/円 20.3-20.8
(ポイント)
*人民元は弱く、株価は強い
*株価はAIとレアアースが強い
*米国とはレアアース貿易で激しく対立
*7月工業部門利益減少
*米中通商協議に進展の兆し
*長期金利回りは下げ渋り
*中国の景気減速は他国へ及ぶ
*中国は対アフリカ関税ゼロとして関係強化
*米国との関税期限を90日延長
*若者の失業率が高い
*LPR据え置き
*トランプ大統領、関税免除措置「デミニミス」廃止
*2Q・GDPは5.2%増
*物価の伸び悩みは続く
(人民元は年初来10位、株価はAIとレアアースが強い)
人民元は年間では10位、対円で3.92%安、対ドルでは2.49%高。11位のドルとピッタリ寄り添って下位で推移している。中国株はレアアース、AI関連が強い。上海総合指数は年初来13.38%高で10年ぶりの高値圏、香港ハンセン指数は25.63%高と強い。10年国債利回りは1.77%。
(工業部門利益、7月は前年比1.5%減)
7月の工業部門企業利益は前年比1.5%減と、3カ月連続でマイナスとなった。政府の景気支援策にもかかわらず、需要低迷や生産者物価の下落が続く中、企業は苦戦を強いられている。
国家統計局は、外部の不確実性、不十分な内需、一部セクターにおける需給の不均衡に言及し、「政策の柔軟性と予測可能性を高める必要がある」と述べた。
(レアアース株強い)
中国・香港株式市場は、レアアース関連と不動産株セクターが主導して強い。 レアアース株は、中国政府が8月22日に供給規制を強化する新たな措置を発表したことを受け上昇した。
(一方、米国もレアアースで対抗)
強力な磁力を持つネオジム磁石の製造に必要なレアアース(希土類)材料、ネオジム・プラセオジム(Ndpr)の価格が、2年超ぶりの高水準を付けた。需要が増える中で、米国内唯一のレアアース採掘企業MPマテリアルズが中国の主要磁石メーカーへの原料輸出を停止したことが要因だ。
中国はレアアースで世界の精製能力の約9割、採掘量の約7割をそれぞれ占め、レアアース市場のサプライチェーン(供給網)を支配している。今年4月、輸入品への関税を強化したトランプ政権に対抗するため、中国はレアアースの輸出規制を強化。調達難から一部の自動車工場が操業停止に追い込まれた。
(中国は200%の関税に直面、磁石供給しなければ)
トランプ米大統領は8月25日、中国が米国にレアアース磁石を供給しなければ「200%の関税」に直面するだろうと警告した。また、中国の習近平主席が自身の中国訪問を望んでいるとし、「いつか中国に行くだろう」と述べた。
テクニカル分析(人民元/円)
続、ボリバン中位で小動き
日足、ボリバン中位。8月25日-27日の上昇ラインがサポート。8月22日-26日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線下向き。
週足、雲の下で膠着。8月11日週-18日週の上昇ラインがサポート。7月28日週-8月18日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、3か月連続陽線も今月はここまで陰線。4-7月の上昇ラインがサポート。1月-7月の下降ラインが上値抵抗。5か月線下向く、20か月線上向く。
年足、2024年までは5年連続陽線。2025年は陰線スタート。23年-24年の上昇ラインを下抜く。

チーファンラマ
米中通商協議に進展の兆し
中国商務省の李成鋼次官が今週、米国を訪問する。李氏は通商交渉のカギを握る人物で、両国の協議が進展しつつあることが示唆された。
李氏は米通商代表部(USTR)のグリア代表のほか、米財務省当局者と会談する。トランプ米大統領が今月、中国製品に対する関税引き上げの停止措置を90日間延長したことを受けて、両国の対立はひとまず落ち着きを見せている。
本レポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたしま す。また、本レポートに記載された意見や予測等は、今後予告なしに変更されることがございます。 なお、本レポートにより利用者の皆様に生じたいかなる損害についても、FX湘南投資グループグならびに株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承願います。
FX 米中通商協議に進展の兆し レアアースでは激しく対立
こうした圧力と過度な関税合戦の後、米中両国は先月、ジュネーブで一時的な貿易休戦に合意した。関税率は引き下げられ、米国側はレアアース磁石の供給再開に期待を寄せた。しかし、中国政府は依然として重要資源の輸出には企業の許可取得を義務づけており、手続きの遅れが両国間の緊張を再び高める要因となった。
リチウム、コバルト、ニッケルの主要レアメタルに加え、インジウム、タングステン、ガリウムの生産国をみると、リチウムを除きいずれも生産量が最も多い国の占率が50%を大きく上回っており(リチウムでも45%)、パワー半導体となる窒化ガリウムや、次世代のパワー半導体として期待される酸化ガリウムの材料となるガリウムに至っては世界生産の98%を中国が占める独占状態となっている(図表17)。中国は、液晶ディスプレイやタッチパネルの透明導電膜の材料として使われるインジウム、高い耐熱性と耐摩耗性、硬度から、様々な用途があるタングステンにおいても、世界の生産量の中で圧倒的なシェアを占めている。こうしたレアメタルの“偏り”は、埋蔵量や生産能力においても、生産量とほぼ同等の結果となっている。
ロンドンでの協議終了後、ラトニック商務長官は、中国によるレアアース輸出に関する問題が、「この枠組みの実施によって確実に解決されると全面的に期待している」と発言。同氏によれば、中国側は米国の自動車メーカーや防衛関連企業にとって重要なレアアースの出荷を加速させることを約束した。米国側も一部の輸出規制を緩和するという。
一方、トランプ氏は会談後、記者団に「複雑な点が解決した。主にレアアースなどいくつかの点が解決した」と強調。「引き下げられた関税は引き続き有効だ」とも語った。中国人留学生のビザの扱いについては「中国の学生が来るのは問題ない。受け入れは名誉なことだが、確認は必要だ」と述べた。
温室効果ガス削減という観点では、リチウムやコバルト、ニッケルなどのレアメタルはクリティカルミネラル(重要鉱物)として、需要が急激に高まる一方で、その確保が重要な課題となっている。IEAの試算によれば、温室効果ガス排出量のネットゼロを達成するシナリオにおいては、2040年のリチウムの需要は2023年対比+1200%、コバルトは+333%となる(図表15・16)。これらはレアアースと遜色ないほど埋蔵量は少ないと考えられており、安定的な供給網の確立は各国にとって重要課題だ。
中国外務省が発表した会談概要によれば、5月にスイス・ジュネーブでまとまった貿易合意を中国は順守したと習主席は主張。米政府当局者らはこれまで、レアアースの輸出規制解除が遅いとして苦情を申し立てている。
そもそも、重希土類を多く含む鉱床は現在のところイオン吸着型鉱床に限られている(その他のタイプの鉱床でも重希土類は含まれるが、その割合はごくわずかである)。イオン吸着型鉱床は、花崗岩の風化によって生成された粘土層にレアアースイオンが吸着して形成されたもので、高温多雨という気象条件が形成には不可欠とされている。そのため地域限定性が強く、現在は中国南部の他に、ミャンマー北部(中国国境付近)、ベトナム、マラウイ、マダガスカル、ブラジル、チリに確認されているが、中国以外では規模が非常に小さい。
もっとも、元素毎の存在量や需要量には大きな差がある。天然には存在しないプロメチウムを除けば、金や白金などの貴金属に比べれば埋蔵量は多いものの、多くのレアアースは主要なレアメタルよりも埋蔵量は少ない(図表12)。
一方、レアアース(rare-earth elements)はレアメタルの中の1鉱種(図表10の希土類)で、15元素のランタノイドとスカンジウム、イットリウムの2元素を合わせた17元素を指す(図表11)。レアアースは単体の鉱石として産出されることはないとされており、一つの鉱石の中に混在している。単体の元素として抽出する際にはトリウムなどの放射性元素の処理が必要になるなど、分離精製するには相応の技術とコストがかかる。世界の生産量は40万トン弱(2024年:39万トン)であるのに対し、埋蔵量は9000万~1億トン程度と、レアアース全体としての資源の枯渇は危惧されていない。
IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)の試算によれば、2040年までのレアアース需要は、クリーンエネルギー以外の用途は+36.0%(2023年比)となる一方で、クリーンエネルギー用途分は+340.5%(同)と4.4倍に達するとされている(温室効果ガス排出量ネットゼロを達成する場合)(図表14)。
このようにレアアースは軽希土類と重希土類とで生産・採掘量は異なるが、需要が大きいネオジム磁石には軽希土元素も重希土元素も必要になるなど、双方とも需要は大きい3。しかし、前述したように軽希土類と重希土類とでは産出量に大きな差がある。すなわち、重希土類が多く産出される鉱床は限られており、現在のところ世界中の多くの鉱床では重希土類の産出はごくわずかにとどまっている。
相互関税の導入は、(理論的な問題は別として)米国の復活を目指すトランプ大統領の肝いりの政策で、特に巨額の貿易赤字を抱える中国はそのターゲットの中心であるため、中国への対応を緩和することは難しいと考えられる。したがって、その代償として中国からの精製品を含めたレアアース輸入は事実上断ち切られるリスクは高い。
米中関係は過去数週間で一段と悪化。関税を巡る貿易休戦の合意を違反したと双方が非難している。市場では今回の電話会談が事態打開の糸口になるとの期待が広がり、株式相場は上昇。S&P500種株価指数は4日続伸の勢い。
ロシアとの戦争が終結した後、米国と共同でまとまった資本と高い技術で開発を進めた場合、商業的にも価値の高いレアアースが採掘される可能性は否定できないものの、それは未知数としか言えない。公表されているデータを見る限りにおいては、米国もウクライナに“価値の高い”レアアースが豊富にあるとの分析はしていない。トランプ大統領がウクライナのレアアースに言及したのは、ウクライナ支援に消極的な人が多いとされる自身の支持層向けの“ポーズ”であった可能性もある。
貿易問題をめぐるアメリカと中国の閣僚級協議の2日目が、イギリスのロンドンで始まりました。中国のレアアースやアメリカの半導体の輸出規制について打開策を見いだせるかが焦点となります。アメリカ代表団によりますと、中国との閣僚級の協議が日本時間の午後6時45分すぎに始まりました。協議はきのうからイギリスのロンドンで行われていて、きょうが2日目となります。アメリカ側からはベッセント財務長官、ラトニック商務長官、グリア通商代表が、中国側からは経済分野を担当する何立峰副首相や王文濤商務相らが出席しています。トランプ大統領と習近平国家主席が先週、電話会談を行ったことを受けて開かれているもので、中国共産党の機関紙「人民日報」はきょう、論評で「対等な立場での協議を通じ、意見の違いを解決する機会だ」と事態打開への期待感を示しました。一方で、アメリカの半導体輸出規制について「差別的な措置だ」と批判しており、協議では半導体についても議論の俎上に上る可能性があります。


コメント