
◆豪ドル、リスク回避や日銀利上げ予想で上値は重い
◆豪ドル、4-6月期のGDPとRBA総裁講演に注目
◆ZAR、投資資金流入や実質金利高止まりで底堅い展開を予想
予想レンジ
豪ドル円 94.50-96.50円
南ア・ランド円 8.25-8.50円
9月1日週の展望
豪ドルは上値が重いと予想している。トランプ米大統領がクック米連邦準備理事会(FRB)の解任を発表したことで、米中銀の独立性が懸念されている。強引な政治的介入を続ける米大統領に対して、市場は一時米トリプル安で反応した。本来であれば米国の信頼が損なわれ、豪ドル買い・ドル売りが強まることになるが、リスク回避の動きに敏感な豪ドルは上値が限られそうだ。また、対円ではジャクソンホール会合での植田日銀総裁の講演がタカ派だったことや、ベッセント米財務長官が日銀に利上げを促す外圧をかけていることもあり、下値を探りやすいだろう。
来週の豪州からの経済指標は、9月1日に7月住宅建設許可件数、9月2日に4-6月期国際収支、9月3日に国内総生産(GDP)、9月4日に7月貿易収支が公表される。また、9月3日にはブロックRBA(豪準備銀行)総裁の講演が予定されている。この中で注目されるのは、9月3日に重なるGDPとブロック総裁の講演。1-3月期GDPは、前期比で市場予想や昨年の10-12月期よりも弱い0.2%増という結果になった。RBAが今週発表した理事会の議事要旨で、関税の引き上げと政策の不確実性が世界経済の重しとなるため、2025年後半から2026年にかけてはGDP成長率が鈍化すると予想している。4-6月期の成長率も予想よりも低調となれば、ブロック総裁の講演内容にもよるが、RBAの再利下げ時期や、利下げ幅にも影響を及ぼす可能性がありそうだ。
なお、隣国ニュージーランド(NZ)からは、9月1日に建設許可件数が発表予定。
南アフリカ・ランド(ZAR)は底堅さを維持しそうだ。先週末にZARは対ドルで年初来高値を更新した。今週は反動もありZARは対ドルで利食いが優勢となったが、ZAR買いトレンドは対ドル、対円ともに変わらないとみている。このところ、米政権への信頼性の低下も影響してか、南アへの投資資金流入がZARの支えになっている。
また、南ア準備銀行(SARB)が今年の利下げ路線が前回の利下げで一服となると予想していることもZARの支えになるだろう。南ア財務相は認めていないが、SARBがインフレ目標を実質3%に引き下げたことで実質金利が高止まりすると予想されているほか、水道料金が12.1%、電気料金が10.6%上昇しており、実際には利下げに動きにくく、ZARの支えになりそうだ。
なお、来週は9月3日に7-9月期南アフリカ経済研究所(BER)企業信頼感、9月4日に4-6月期経常収支が発表予定。
8月25日週の回顧
豪ドルは小高く推移。米政権に対する信頼性の低下や利下げ期待の高まりで、対ドルでは小幅に買いが優勢。対円では実需の円売りが支えた。もっとも、対ドルでは0.65ドルを挟んだ動き、対円では95円後半でレンジは限られた。また、7月のCPIが市場予想を上振れ、豪ドル買いを促す場面があった。
ZARは買いが一服。先週末にドルZARが年初来安値(ZARの高値)を更新したこともあり、対ドルを中心に利食いのZAR売りが散見された。ランド円も対ドルのZAR売りの影響で上値が抑えられた。(了)
(執筆:8月29日、9:00)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
見通し 週間為替展望 豪ドル
豪ドル/円の5年MAかい離率は、2024年7月に110円まで上昇した局面で25%程度まで拡大しました。これは、2007年に記録した過去最高にほぼ肩を並べるものでした(図表7参照)。その意味では、5年MAとの関係で見た場合、2024年の豪ドル/円はほとんど過去最高の「上がり過ぎ」という動きだったのでしょう。
一方、1週間の予想変動率が12%付近までじわりと上昇している。トランプ米大統領が相互関税を発表した時のような急変動は見られない。しかし自公大敗となれば、週明けから外為市場では急速に円安へ振れる可能性がある。予想変動率も急速に上昇する場合、ドル円は上下に大きく振れることが予想される。シナリオ②の突発的な円買いを警戒したい。
こうした中で豪ドル/円は52週MAを大きく割り込みました。その後の反発で一時52週MAを回復したものの、最近にかけて再び52週MAを大きく割れるところとなりました(図表6参照)。
このような値動きは、過去の経験を参考にすると、豪ドル/円がすでに7月109円で天井を打って、複数年続く下落トレンドに転換した可能性が高いことを示すものです。
週間の予想レンジの上限:151.60レベル 今週のドル円(USD/JPY)について筆者はシナリオ①および②の可能性を意識している。この点は通貨オプション市場も示唆している。リスクリバーサルの動向を見ると、1週間のそれがドルコールの状況にある。1ヶ月のドルコールを視野に上昇基調にある。シナリオ①を意識する動きと考えられる。
豪ドル/円は2024年7月にかけて110円寸前まで上昇し、2007年に記録したこの間の高値を更新しました。これは米ドル/円が161円まで展開する「歴史的円安」となるなど、円全面安が展開した影響が大きかったでしょう。このため、米ドル/円が8月にかけて一転して暴落すると、豪ドル/円も90円割れ寸前までやはり暴落となりました(図表5参照)。
その後の豪ドル/円の下落により、5年MAかい離率も縮小しましたが、なお「上がり過ぎ」圏にあることには変わりなさそうです。その意味では、このような「上がり過ぎ」が是正される中で、2025年は豪ドル/円の下落トレンドが展開する可能性が高いと考えています。
52週MAは11月末現在で100円弱ですが、過去の経験を参考にすると、下落トレンドに転換した豪ドル/円は、一時的な上昇局面でも52週MAを大きく上回ることなく一段安に向かう可能性が高いと考えられます。



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