
先週末の海外市場ででドル円は、米長期金利の上昇を手掛かりに一時147.41円まで値を上げた。もっとも、その後はさえない米経済指標を受けて上値を切り下げ、147.00円を挟み神経質に上下した。ユーロドルは1.1709ドルまで8月25日以来の高値を更新したが、引けにかけては1.1680ドル台まで伸び悩んだ。
本日の東京時間でのドル円は、147円を挟んで方向感のない取引になりそうだが、リスク要因としてはやや上値が重くなるか。
先週は8月末特有の値動きで、本邦の実需勢を中心にリバランスを含めたドル買い意欲が強かった。昨年も同様の動きだったが、9月に入るとドル買い意欲が減少しており、今年も下押しへの警戒感がある。ただ、本日は米国がレーバーデーで休場ということもあり、大きな値動きを期待するのは難しいかもしれない。
ドル売り・円買いの要因は先週同様に、日本と米国の金融政策の方向性の違いが明確に分かれていること。先週発表された7月の米個人消費支出(PCE)デフレーターや食品エネルギーを除いたコア指数は、前年比で2%後半だった。インフレの低下傾向が目立った結果ではないが、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウォッチ」によると、9月FOMCで0.25%の利下げ織り込み度は、前日とほぼ変わらず80%後半を維持したままだ。
米連邦準備理事会(FRB)が2大責務の中で「物価の安定」から「雇用の最大化」へと軸足を移していることで、市場の利下げ期待は変わらない。一方で、日銀の利上げ期待が高まっていることもあり、9月の両中銀での金融政策の方向性の違いがドル円の重しになるだろう。明日2日は、氷見野日銀副総裁が道東地域金融経済懇談会で挨拶を行う。植田日銀総裁に続いて副総裁からタカ派寄りの発言が出た場合は、更に円金利の上昇が予想される。
さらに、トランプ政権による独裁政治の動きが加速していることで、米国に対する信頼性が損なわれていることもドル売り要因。先月はマッケンターファー米労働省労働統計局(BLS)局長、クックFRB理事、そしてモナレス疾病対策センター(CDC)所長など、正当化される理由が乏しいのにもかかわらず、多くの政府要人がトランプ政権から解任を言い渡された。特に、クックFRB理事の解任問題でFRBの独立性危機への懸念が高まり、2年債などの中期ゾーンの利回りが低下し、インフレ制御が困難になるとの見方で30年債利回りが上昇するなど、多くの弊害が出始めている。
本日は、アジア時間では本邦から4-6月期の法人企業統計調査が発表され、豪・NZからは住宅建設許可件数、中国から8月Caixin中国製造業購買担当者景気指数(PMI)などの経済指標が発表される。しかし、どの指標に対しても市場が動意づくのは難しいだろう。
本邦の報道の扱いは限られているが、先週後半から海外で多く報じられているのは、昨日から本日まで中国・天津で行われている2025年上海協力機構(SCO)首脳会議。すでに昨日インドのモディ首相が7年ぶりに訪中し、習近平国家主席と両国関係の改善加速で一致した。また、同様に昨日訪中したプーチン露大統領は、SCO首脳会談後3日に行われる抗日戦争勝利80周年の軍事パレードにも参加予定だ。米国から50%の高関税を賦課されるインドが、中露に接近していることに米国も警戒感を強めている。トランプ大統領がSNSで新たな制裁などを企てようとした場合、市場が急変するリスクもありそうだ。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
市場概況 東京為替見通しドル売り要因豊富も米休場でレンジ取引か SCO首脳会談には要注目
◆尾崎行雄: 衆議院議員(1890-'53)。「憲政の神様」。現・相模原市出身だが、衆議院議員としての選挙区は、生涯を通して父の縁故地である三重県伊勢市を拠点とした。初期の慶應義塾に学び、聖公会信徒・ジャーナリストとなった。1890.第1回衆議院議員総選挙で当選。1898.第1次大隈内閣(隈板内閣)で文部相として初入閣。1900.立憲政友会の創立に参加。1903-12.東京市長を兼任。ワシントンに桜を送り、返礼として日本にハナミズキをもたらした。1913.犬養毅らと第一次護憲運動を起こし桂内閣を総辞職に追い込む。後継の山本内閣には参加せず政友会を離党。以来、野党所属又は無所属となる。大正デモクラシー時代は普通選挙・婦人参政権・軍縮の推進、治安維持法の反対運動に関わる。1938年の西尾末広除名、1940年の斎藤隆夫除名にいずれも反対し、政界で孤立。議院構内に尾崎の銅像を建設する計画が中止された。'48.賀川豊彦や東久邇稔彦と共に、日本の世界連邦推進運動を始める。'53.衆院選で初の落選。94歳で引退となった。当選25回・勤続63年・引退時94歳は、戦前・戦後を通じ衆議院史上最多・最長・最高齢記録。
◆デットマール・クラマー: 西ドイツのサッカー選手・指導者。「日本サッカーの父」。'64.東京五輪でサッカー日本代表を率い、ベスト8に。
◆新宿区: 東京都庁所在地。東京都心の西側にある特別区。人口約35万人。アジア系を中心に、外国人人口が4万人を超え東京23区で最も多い。'47.四谷区・牛込区・淀橋区が合併し誕生。
◆財政力指数: 地方公共団体の財務指標で、地方交付税の交付額の基準となるもの。1を超えると地方交付税は交付されない。近年、都道府県では東京都が唯一の不交付団体。市町村の不交付団体数は10s以降、40~90で推移している。中でも愛知県飛島村(とびしまむら)が財政力指数1位になることが多い。
◆和久井健: 漫画家。元スカウトマンという経歴をもつ。'05-.『新宿スワン』。'17-.『東京卍リベンジャーズ』。
◆秋瑾(しゅうきん): 清朝末期の女性革命家。刀剣愛好家で、日本刀を愛したという。1904-.東京に留学して孫文らと出会い、中国の近代化革命を志す。当時、清朝政府は革命派が日本で力を増すことを警戒し、日本政府と留学生を受け入れていた各校も清朝の要請を受け取り締まりに動いていたため、怒った秋瑾は中国留学生会館で留学生の一斉退学を主張。演台に短刀を突き刺し、退学反対派(魯迅もその中にいた)らに「死刑」を宣告したという。1907.清で革命派の訓練拠点を設立。女性解放運動を進めるための女子新聞も創刊した。しかし武装蜂起計画を清朝政府に察知され、逮捕・処刑された。若くして処刑された秋瑾の存在は、その後の革命派にとっても精神的支柱の一つとなった。
◆矢内原忠雄: 日本の植民政策学者、東大総長('51-57)。内村鑑三や新渡戸稲造の影響を受け、リベラルな思想を形成した学者の1人。無教会主義クリスチャン。戦前・戦中のファシズムの中で東京帝大の教授となりながら、日本の中国侵略や南京大虐殺を厳しく批判し、帝大を追われた(矢内原事件)。戦後、東大に復帰して総長となり、東大ポポロ事件では大学の自治を守るため毅然とした態度をとった。一方、学生のストライキに対しては厳しく、ストライキを指揮した江田五月らを一時、退学処分としている。
◆上野駅: JR(山手線・京浜東北線・上野東京ライン、東北・上越・北陸新幹線等)、東京メトロ(銀座線・日比谷線)の駅。乗換駅として京成上野駅もある。明治以来、東京における北へ向かう列車の玄関口であり、東京駅開業(1914)以降も、東京-上野間の列車線が「上野東京ライン」として整備される2015年まで、常磐線・宇都宮線・高崎線等の事実上の起点として、多くの急行列車や寝台特急の発着地であり続けた。そのため新幹線停車駅でもあるが、上野東京ライン開通で重要性が下がった最近では通過する新幹線も出てきている。駅前に井沢八郎「あゝ上野駅」の歌碑、ホームに石川啄木〈ふるさとの訛なつかし停車場の 人ごみの中にそを聴きにゆく〉の歌碑がある。
◆青山一丁目駅: 港区にある東京メトロ(銀座線、半蔵門線)・都営地下鉄(大江戸線)の駅。町名は元赤坂・南青山1丁目・北青山1丁目に跨る(開業以来「青山1丁目」という地名は無い)。駅前にホンダ本社がある。
◆そごう: 百貨店の屋号。江戸時代後期に大坂で創業。創業者の苗字は十合(そごう)。'57.東京(有楽町)進出。キャンペーンソング「有楽町で逢いましょう」が大ヒット。70s-80sには地方都市、80sにはアジア各地にも積極的に出店した。'92.売上高で業界首位に。'00.経営破綻。その後、西武百貨店と合併し、'06年に西武・そごうとしてセブン&アイHDの傘下に入った。'23.米国の投資会社に売却された。'25現在、国内は大宮・千葉・横浜・広島の4店舗(いずれも大型店)体制。台湾・香港・マレーシア・インドネシアでは今もSOGOが大手百貨店だが、いずれも日本との資本関係は切れ、単なるフランチャイジーとなっている。
◆小池百合子: 東京都知事('16-)、都民ファーストの会特別顧問。兵庫県芦屋市出身、カイロ大学文学部卒。アラビア語通訳者、ニュースキャスターを経て、'92年に日本新党から立候補し参議院議員となる。'93.衆議院議員に転身。新進党、自由党、保守党を経て自民党入り。'03-06.小泉内閣で環境大臣。「クール・ビズ」の旗振り役となった。'08.女性として初めて自民党総裁選に出馬も、麻生太郎に敗れる。'16.「待機児童ゼロ」「満員電車ゼロ」等「7つのゼロ」を掲げて都知事選に立候補し、自民党推薦候補らを下し圧勝。自民党を離れ、地域政党「都民ファーストの会」を立ち上げる。'17.国政政党「希望の党」を立ち上げ、民進党の多くの議員を合流させる。この際、旧民主党・民進党の左派を「排除する」と発言。同年の総選挙では自民党に大敗、野党第一党も立憲民主党に奪われ、代表を辞任。国政からは距離を置くようになる。築地市場の豊洲移転問題では態度を二転三転させるも、'18年に移転を実施。'21.東京五輪をコロナ禍により1年遅れ・原則無観客で開催。
◆BSC: Best Supportive Care。終末期医療における、QOL向上を主眼とした治療方針。
◆江東区: 東京都心の東側にある特別区。人口約55万人。'47.深川区と城東区が合併し誕生。南半分は、豊洲、有明、青海、新木場等、関東大震災後に東京湾を埋め立てたエリアである。出身者に田河水泡、宮部みゆき、持田香織、松坂大輔、堀米雄斗ら。
◆柳田國男(やなぎた-): 民俗学者。日本の「民俗学の父」。現・兵庫県福崎町出身。東京帝大政治科出身の官僚でもあり、国際連盟では新渡戸稲造と同僚となり、共にエスペランティストとなった。1910.説話集『遠野物語』で東北地方の伝承を記録。1930.語学書『蝸牛考』で方言周圏論を提唱。
◆神楽坂: 飯田橋駅西口から、西側の神楽坂駅(東京メトロ東西線)方面に上る坂。早稲田通りの一部。新宿区の東端近くに位置する。江戸の風情が残る散策スポット。東京理科大の神楽坂キャンパスがある。全国的にも稀な逆転式一方通行が採用され、午前中は東へ下り、午後は西へ上ることしか出来ない。日曜の午後は歩行者天国となる。逆転式一方通行が採用されたのは、田中角栄の通勤に便宜を図ったためという都市伝説がある。


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