続く米の高関税 事業者支援課題に
両者による分析では、同盟国の日本もトランプ氏の関税政策の対象になり得ることが示されている。米国が日本から最も多く輸入している品目は自動車・同部品だ。自動車・同部品の2023年の輸入額は、関税分類番号(HTSコード)2桁ベースで、全輸入額の33.6%(495億ドル)を占める。これに一般機械23.8%(351億ドル)、電気機器12.9%(190億ドル)が続く(表1参照)。これまで自由貿易の牽引役だった米国の関税率は、全体的に低く抑えられており、WTOによると、輸送機器全体での最恵国(MFN)税率の平均は3.4%、機械は1.3%、電気機械・電子機器は1.2%となっている(注11)。仮に日本も対象とする追加関税が課されれば、これらMFN税率に追加関税率が上乗せされることになる。そうなれば、対米ビジネスを行っている企業の利益は圧迫されるおそれがある。特に輸入額が最大の自動車は、米国での現地生産よりも、日本からの輸出の方が利益率は高いともされ、影響が懸念される。
もちろん、今回提示された相互関税の25%というのは最終ゴールではない。両国が目指すのはあくまでも2国間貿易協定を締結することだ。すでに5回の交渉が行われていて、次は8月中にインドで交渉が行われる。インドにとって農産物の市場開放は政治的に困難だが、非関税障壁の一部撤廃や、対米輸出が輸入よりもはるかに大きい医薬品や自動車部品などで関税を引き下げて譲歩するという選択が視野に入っている。トランプ氏の本意はインドを苦境に立たせることではなく、「俺がアメリカに利益をもたらした」という成果をアピールすることだ。インドとしてはなんとか交渉を決着させて実利を取るべくギリギリの譲歩を模索することになる。まだまだ交渉は続く。
省人化投資による生産性向上、コスト削減、新製品販売への取り組みによる付加価値向上などがあげられます。トランプ関税による影響が危惧される自動車・自動車部品業界においては、経済産業省がおこなっている『ミカタプロジェクト』の活用を検討できます。本プロジェクトに参加する企業がトランプ関税による影響を受けた場合、ものづくり補助金(第20次公募)や新事業進出補助金(第1回公募)において優先採択(審査で考慮)される可能性があります。
次の焦点は、年内にインドで予定されるクアッド首脳会議だが、トランプ氏は会議欠席を検討中とも伝えられる。米外交が心もとないだけに、日本外交の踏ん張りどころが続く。
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