米雇用統計後の為替市場:方向性を欠く展開【明快!テクニカルレビュー】
動画配信期間:公開日から3カ月間
収録日:2025年9月7日
動画解説
市場全体の膠着状況
動いているのか動いていないのかというと、おそらく動いていない相場だ。金曜日の米雇用統計発表があったが、ドル円チャートを見ても木曜日に終値ベースで直近高値を更新した後、陰線となり、円高なのか円安なのか判断がつきにくい。
4月以降は関税の話題でもちきりだったが、ここにきて決着し、マーケットが飽きている状況だ。関税でインフレにつながるという想定は妄想だったということが参加者全体に知れ渡ってきている。米雇用統計後もドル金利低下でドルが売られるかと思ったが、そうでもなく、ドル高に向かうわけでもない。身動きがとりにくく、もう少し明確なトレンドを確認してからリスクを取るのが良さそうだ。
ドル円の微妙な位置
ドル円は陰線で引けたが、円高というよりはドル安のイメージだ。147円台の居心地の良さが染みついているようなチャートで、148円台でなかなか安定しない。買いでも売りでもないという状況だ。
ユーロ円の相対的優位性
ユーロ円のチャートでは、実体線の位置が高いことに気づく。ドル円よりも買いやすい状況だ。短期中期移動平均線がゴールデンクロスし、3本の移動平均線が右上がりで、金曜日の陰線とはいえ実体線は高い位置をキープしている。MACDも0ライン上側でゴールデンクロスを形成している。
ドル円が売られたことでユーロ円も連れ安となったが、買うならドル円ではなくユーロ円だろう。
その他円クロスの状況
ポンド円はドル円よりはユーロ円に近いチャート形状だが、上髭が目立ちMACDも若干垂れる形となっている。買うならユーロ円の方が良い。
豪ドル円は高い水準をキープしており売りではないが、金曜日の値動きを見ると買いにくい。96.30円前後まで深いところまで見に行っており、週をまたいで大きなポジションを持つほどではない。ただし実体線が高い位置をキープしているだけでも売りではない。
ドルストレートの動向
ユーロドルは雇用統計後に高いところを何度かつけたが、結局1.1721-1.1725で引けており微妙な位置だ。ただし8月22日の終値をわずかながら終値ベースで更新している。ファンダメンタルズ的にドル金利低下でドル売りなら、陽線で引けたことを評価してとりあえず買いかもしれない。
ポンドドルは陽線で引けたが、この足形で買いかと言われると、3本の移動平均線に収束して戻ってきた程度で、9月2日の陰線を4分の3程度戻しただけだ。売りも買いもない状況だ。
豪ドル米ドルは陽線が出て高く引けたが長いヒゲを残した。上値の重さを重視するか、高く引けた事実を重視するかの判断だが、ドル安のファンダメンタルズを考慮すると買いの可能性もある。ただし陽線1本では判断が困難。
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井上義教 氏
株式会社チャートリーディング 代表取締役 昭和39年東京都生まれ。 昭和63年大阪大学経済学部卒業、同年大和銀行入行、平成3年よりロンドンの証券現法にてディーリング業務に従事。 平成15年に退社するまで為替・債券・スワップ市場を歴任、チーフディーラーとしてチームを統括。 平成28年 株式会社チャートリーディング設立とともに代表取締役に就任。
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ドル円膠着為替相場の次の一手はユーロ円に注目 2025 9
歴史的な高値1.6040からの調整を、1.0341の安値で一旦支えるも、反転が2018年2月の1.2555や1.2349の戻り高値でダブル・トップを形成。その後0.8225からのサポートを割れて、0.9536まで下値を拡大しました。ただ、この位置はユーロドルの歴史的な安値からの反発時のネック・ラインとなる0.9596-0.9601を若干割れた位置で、一定の反発が実現しましたが、これも1.1276と1.1214で小さなダブル・トップをつけて再度調整気味の展開です。ただ、下段のスロー・ストキャスティクスが上昇を終了、反転下落となっており、今後は軟調な展開が想定されそうです。
一方日本では、7月に参議院選挙と東京都議会選挙が行われます。都議会選挙の影響は直接的にはありませんが、昨年の解散衆議院選挙では、裏金問題などから自民・公明両党が過半数を割れたことで、日本の政局も混乱しています。一部では衆参同時選挙の可能性も指摘されていて状況次第では、再び自公連立が過半数を維持できない可能性もありそうです。その場合石破総理の総理存続も難しくなりそうです。金融面では政局不安が、株価に悪影響を与えるでしょう。為替に対する影響は不透明としても、通常なら株価の下落がリスク・オフの円買いにつながる可能性を考慮しなければなりません。ただ、もしこれが株安、債券安、円安と「トリプル安の日本売り」に繋がるなら大惨事となりそうです。2025年は日本の政局にも注意を払っておきたいと思います。
その他では、1月から再び米国の債務上限の期限を迎えます。この問題は、12月13日現在あまり話題となっていませんが、恐らく年内に延長され直ぐには問題にならないでしょう。ただ、2025年初頭には再び大きくクローズ・アップされる可能性があり、問題が長引けば米国債の格下げのリスクとなります。毎年のことで若干食傷気味の話題ですが、特に2025年はイーロン・マスク氏が率いる「政府効率化省(DOGE)」がスタートします。「小さい政府」を目指す共和党が、本当に米国の財政問題を解決できるのか、それとも混乱につながるのか注視しておきましょう。
【3】政治圧力 米国政府筋から、円安を非難する発言が増えると、円高(ドル安)が進みやすくなります。 米国政府が、円安を容認している間は、円安(ドル高)が進みやすくなります。
一方で日本では、再生エネルギーへの転換が遅れていて、電気自動車の普及も拡大せず、2025年以降も高水準の原油・天然ガスなど石化エネルギーの輸入が続きそうです。まだ全貌は明らかになってはいませんが、2022年12月に決定した43兆円規模の防衛費の拡大政策によって、今後毎年5兆円弱の海外調達が実施されるようです。その場合当然ドルで決済されるはずですが、これが決定した当時は、1ドルが135円程度であったものの、もし現在の150円台の為替レートで支払われるなら、毎年円ベースで約1兆円程度の支払い増となるようです。2025年から国民の税負担がスタートしますが、こういった面からのドル需要が、2025年以降の円の上値を押さえそうです。
2020年のコロナショック、2022年のロシアウクライナ問題等の影響により、世界のサプライチェーンに大きな混乱が生じました。
2024年の相場展開を踏まえて、2025年のユーロ円相場の注目点をまとめてみました。
ユーロドルの想定レンジを1.0000~1.1000、ドル円を140.00~160.00としましたので、これから算出されるユーロ円の最大想定レンジは133.00~184.00となります。ただ、ここまで大きなレンジは想定できないので、157.50を中心として、144.00から171.60がレンジとして想定されそうです。
世界的な株安が起こると、まだ金利は低下していなくても、「先行きドル金利は低下するだろう」という思惑を生じて、円高が起こると考えられます。
近年では、エストニア(2011年)、ラトビア(2014年)、リトアニア(2015年)、クロアチア(2023年)の導入時に、国の規模により影響度は限られますが、このような傾向がユーロ相場の動きに見えています。まだ2026年からの導入となる可能性がありますが、どちらにしても、もし決定された場合のユーロの動きにも注目しておきましょう。
上値は、1.0602-1.0763-1.0937の戻り高値圏が押さえると弱い状況で、あくまで1.1276と1.1214のダブル・トップを超えて、上昇期待となりますが、それでも1.1603-1.1704ゾーンは、マイナー・レジスタンスとして上値を抑える位置となりそうです。
ユーロ(EUR)は1999年1月に導入され、ドイツやフランスなど11か国が参加しました。
2009年に発生したギリシャ危機(ギリシャショック)をきっかけに、スペインやポルトガルなどでも債務危機が発生。 ソブリン危機・ユーロ危機とも呼ばれ、欧州の財政問題が露呈しました。 欧州債務危機により、ユーロは通貨価値がさらに下落し、ユーロ円は円高がさらに進行しました。
強いて上げ止まりの可能性を言えば、日柄からの判断となりますが、「C」の高値から「E」安値の期間が、13年2ヵ月ですので、次の「E」からの次の同期間が、2024年12月となりますので、もし、この12-1月にこのトップが維持され続け、更に140円前後のネックラインを割れるなら相場の天井を示唆する可能性が残っていることは、留意しておいてください。
以上簡単にまとめてみましたが、現状市場で考えらえている「トランプ政権→景気の過熱→インフレ→ドル高・株高」という「トランプ・トレード」シナリオもあまり期待を強めない方が良いかもしれません。その面では、関税強化策や政府効率化省の問題は、先行きの長い話として、直ぐに影響は見えないでしょうが、就任時に本当にトランプ次期大統領が、ウクライナ戦争を終わらせることが出来るかは大きな注目です。



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