
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年9月12日 12時40分
日銀会合後は焦らず円売りポイントを模索、ユーロ/円・ポンド/円は底堅いか
ユーロ/円、ポンド/円、石破ショック通過後はもみ合い
ユーロ/円とポンド/円は、方向性の見定めが難しい展開。フランスのバイル内閣の総辞職、ロシアのドローンによるポーランド領空への侵犯などの話題はありましたが、そちらにはあまり目が向かず、米ドル/円と同様に本邦政局を巡る円安や、米国の金融政策を巡る円買いの動きに挟まれて、後半は勢いを失いました。ユーロ/円は173.913円まで上昇後に172.134円まで下落し、その後は172円台を中心にもみ合いました。ポンド/円も200.338円を高値に198.796円まで下落した後は、199.00円を挟んだ振幅にとどまりました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研TEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
仏混乱拡大には警戒も円売り期待が勝るか
フランスでは、9月8日に国民議会でバイル内閣への信任案が否決され、バイル内閣は総辞職しました。マクロン大統領は新たにルコルニュ氏を首相に指名しました。しかし、公共サービスなどのコスト削減を目指したバイル氏と、方針が同じことから政府やマクロン大統領に対するデモがフランス各地で起きています。フランス国債が一時期の不安定な動きから持ち直しつつあるため、直ちに懸念される状況ではありませんが、今後の展開次第ではフランス発のユーロ売りもあり得ます。
ただし、ECBの利下げサイクル終了観測や本邦の「ポスト石破」を巡り、円にも拡張的な財政政策を背景にした売り圧力がかかりやすく、ユーロ/円の下値は限られ、全体的には底堅い展開が続くと考えています。
また、英国では来週に金融政策委員会が開催されます。金利は据え置きが優勢で、注目は量的引き締めペースの議論の行方となります。英中銀は毎年9月、量的引き締め(QT)の年間ペースを決めています。市場では、英中銀が今後12カ月の削減ペースを720億ポンドへ減速させる方針が出るのではとの予測はありますが、中銀の方針はまだ固まっていないようです。QTの圧縮ペースが緩やかになれば、金利上昇への圧力が和らぎ、安堵感からポンドが買われる展開はありそうです。一般的には、金利上昇はポンド買い材料とみられますが、財政問題がくすぶる英国にとっては、金利上昇は政府の借入コスト増と受け止められ、ポンド売りになりやすい環境です。
個人的には、経済成長を支援するほか、金利上昇を抑制する点でQT圧縮ペースは減速するとみており、ポンドは短期的には底堅く推移すると考えています。ただし、昨年と同様に1000億ポンドの資産圧縮となれば、英国の金利上昇が”悪い金利上昇”へつながり、ポンド売りを促す材料になる恐れもあります。
ユーロ/円、ポンド/円は押し目買いか(テクニカル分析)
ユーロ/円は、日足一目均衡表の雲の上側で底堅い展開が続いています。上値を伸ばしきれない点は警戒されますが、地合いは好調と判断されます。期間21日のボリンジャーバンドの-2σライン(171.270円、執筆時点)や7月31日安値169.724円付近では下げ渋るとみており、-2σライン付近まで下げてきた局面では、押し目買いを検討したいと考えています。
また、ポンド/円も底堅い展開が続いています。9月8日高値の200.338円の直近高値を超えてからの一段高が期待される局面です。ただし、200.338円付近を素早く突破できないようなら、ここを頂点としたダブルトップが形成される可能性があります。その場合、ネックラインとなる197.861円(8月20日安値)割れを目指す流れも想定されます。ネックライン付近で下げ渋れるかどうかも着目されそうです。
【ユーロ/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:EUR/JPY:170.500-175.500
【ポンド/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:GBP/JPY:197.00-203.000
9/15 週のイベント:

一言コメント
ストレス発散とリサイクル意識を高める目的にフィンランドで始まった携帯電話投げ大会。主催者が用意した携帯電話をどこまで遠くに投げられるかを競う大会ですが、現在は公式ページが見当たらず、開催していないようです。携帯電話が高価なスマートフォンに代わったら、投げるのに勇気がいりますよね。
本サイトに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。また本サービスは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであって、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたします。なお、本サービスの閲覧によって生じたいかなる損害につきましても、株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承ください。
来週の為替予想 ユーロ 円
2029年5月のユーロ円見通し。当月始値 224.08、最低 220.29、当月最高 226.99。平均 223.75。月末 223.64。変更 -0.2%。
第一週 9月12日(金曜日)のユーロ円見通し: 為替レート 173.61、 最高 176.21、最低 171.01。 9月15日(月曜日)のユーロ円予想: 為替レート 173.80、 最高 176.41、最低 171.19。 9月16日(火曜日)のユーロ円見通し: 為替レート 173.90、 最高 176.51、最低 171.29。 9月17日(水曜日)のユーロ円予想: 為替レート 173.83、 最高 176.44、最低 171.22。 9月18日(木曜日)のユーロ円見通し: 為替レート 173.74、 最高 176.35、最低 171.13。
日本とユーロ圏の政策金利も低下に転じ、政策金利差は縮小しています。
2027年2月のユーロ円予想。当月始値 178.54、最低 178.34、当月最高 183.78。平均 180.43。月末 181.06。変更 1.4%。
カナダドル 円 予想 2025、2026、2027-2029。
2029年2月のユーロ円予想。当月始値 214.86、最低 210.90、当月最高 217.32。平均 214.30。月末 214.11。変更 -0.3%。
一方、英国ではリーブス財務相が秋季予算案を11月26日に公表すると発表しました。従来は10月に予定されていましたが、約1か月遅延した格好です。同氏は「インフレと借入コストを引き下げる必要がある」「日常的な支出を厳しく管理し、財政ルールを徹底し実現する」と述べ、借入コスト上昇を抑え、市場を落ち着かせました。10月の提出前にこうした展開を予想していましたが、このタイミングは想定より早く、投資機会を逃したように感じています。ただ、予算案を巡る議論の中で11月に向け同様の事態が再度起こる可能性もあり、英国の動向を注視したいと考えています。来週は目立った独自材料が少ない中、米ドルと円の綱引きが続き、明確な方向性は見えにくいだろうと予想しています。
ユーロ/円とポンド/円は方向性が揃いませんでした。フランスのバイル首相が9月8日に国民議会で内閣に対する信任投票を実施すると発表したことを受け、フランスでの政治的混乱が嫌気され、ユーロ/円は172.664円から171.119円まで下落しました。一方、ポンド/円はユーロ/円や米ドル/円の動向に挟まれて方向感が定まらず、198.264円から199.294円と極端に狭いレンジでの推移となりました。
2028年9月のユーロ円見通し。当月始値 200.49、最低 200.49、当月最高 209.60。平均 204.27。月末 206.50。変更 3.0%。
2026年10月のユーロ円予想。当月始値 184.82、最低 180.25、当月最高 185.73。平均 183.45。月末 182.99。変更 -1.0%。
2027年7月のユーロ円見通し。当月始値 195.62、最低 186.90、当月最高 195.62。平均 191.97。月末 189.75。変更 -3.0%。
ユーロ/円とポンド/円は方向性がつかみづらい展開となりました。氷見野日銀副総裁の利上げに対する慎重発言や、自民党内での「石破おろし」再燃に伴う円売りを受け、ユーロ/円は173.410円、ポンド/円は200.275円まで上昇しました。しかし、世界的な金利上昇を背景に英国の政府借入コスト上昇が懸念されるとポンド売りが強まり、ユーロ/円は172.620円付近、ポンド/円は198.320円付近まで押し戻されました。その後、本邦超長期ゾーンを中心とした金利上昇が意識され、ユーロ/円は173.215円、ポンド/円は199.817円まで値を戻す局面もありましたが、米国が日本への相互関税および自動車関税をともに15%へ見直す大統領令に署名し、関税不透明感が和らいだことで上値は抑制されました。
9/9発表の4-6月期GDPは、1-3月期(前期比+0.1%)から改善が見込まれるものの、昨年10-12月期(+0.4%)を下回る可能性があるほか、9/11発表の4-6月期経常収支は、1-3月期から赤字拡大が予想されます。一方、同日発表の7月鉱工業生産は6月から改善すると予想されるなど、強弱材料が交錯する中でランドの対ドル、対円の反応が注目されます。また、9/11発表の米8月CPIを受けて、来週FOMCに続き年内複数回の利下げ観測が強まれば、対ドルでの上昇がランド円の上昇を支援する可能性があります。加えて、9/7に石破首相が正式に辞任を表明したことを受けた政局不透明感が円売りにつながるか焦点の一つになります。ただし、財政懸念や米政権の関税政策の影響に加え、南ア最大の貿易相手国である中国の景気回復の遅れもあり、8/25の8円44銭や9/3の8円43銭を上抜けても、今年1月以来の8円50銭の回復を支える強いランド買い材料は乏しいと見込まれ、8円50銭手前から戻り売り優勢の展開が予想されます。
上のチャートは、ユーロ/円(上側)とドイツ10年債利回り(下側)を示しています。
ユーロは、ECB(欧州中央銀行)によって管理されています。



コメント