
執筆:外為どっとコム総合研究所 為替アナリスト 中村 勉
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今週の振り返り
今週の豪ドル/円は96.89円前後で、ニュージーランド(NZ)ドル/円は87.11円前後で週初を迎えました。今週は豪州、NZにて主要な経済指標の発表がなかったことから、両通貨ペア共に対外要因での値動きとなりました。9日には日銀の年内利上げを巡る観測報道を受けて円高に振れる場面も見られましたが、米国の追加利下げへの期待からNYダウ平均やナスダック総合指数などの米株価指数が史上最高値を更新する中で、資源国通貨である豪ドルやNZドルは下値を切り上げる動きとなりました。12日には豪ドル/円は98.28円前後と今年1月以来の高値まで上昇、NZドル/円は88.09円前後まで上昇しました(執筆時)。
豪雇用統計のRBA利下げへの影響は?
豪州の労働市場を見ると、5月、6月に雇用のペースが急減速し、失業率も2021年11月以来となる4.3%へ悪化していました。加えて、豪準備銀行(RBA)が重視する四半期ベースの4-6月期消費者物価指数(CPI)は前年比+2.1%まで低下していたため、RBAは前回(8月12日)の金融政策会合で2会合振りに25bp(0.25%ポイント)の利下げを実施しました。会合後の記者会見でブロックRBA総裁は「物価安定のためにさらに金利を引き下げる必要がある可能性がある」としましたが、「会合ごとに状況を判断する」と慎重な姿勢を示しています。その後発表された豪7月雇用統計では雇用者数が2万人台を回復し、内訳を見ても正規雇用者数が大幅に増加するという良い内容で、失業率は再び4.2%まで低下していました。そして7月月次CPIは市場予想(前年比+2.3%)を大幅に上回る+2.8%まで急反発しています。そのため、金利先物に基づくRBAの利下げ織り込み状況を見ると、今月29日の理事会での利下げ確率は約12%にとどまっています。一方で、次々回となる11月4日の理事会については、約91%の確率で利下げが見込まれています。来週は18日に豪8月雇用統計が発表されますが、労働市場が急速に悪化を示したとしても、インフレの状況や、労働市場の減速が一時的なものなのか、これらを見極めたいとの思惑から、29日のRBA理事会での追加利下げ観測はさほど高まらないでしょう。
来週は17日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、19日には日銀金融政策決定会合が控えていることから、豪ドル/円は米ドルや円、そして米国をはじめとした株価指数動向に主導されることが多くなりそうです。
【豪雇用者数変化の推移】

豪ドル/円のテクニカル分析
豪ドル/円は終値ベースでは日足一目均衡表の転換線がサポートして機能しています。来週も同線が目先の下値目途となりそうです。その下の水準では同基準線や雲上限が意識されそうです。一方上値は、年初来高値(1/7、99.16円前後)が視野に入ってきました。同水準のほかには心理的節目となる100.00円が意識されそうです。
【豪ドル/円 日足・一目均衡表】

予想レンジ:AUD/JPY:96.00-100.00、NZD/JPY:86.50-89.50
9/1週のイベント:
09/15 (月) 11:00 中国 8月小売売上高
09/15 (月) 11:00 中国 8月鉱工業生産
09/17 (水) 07:45 NZ 4-6月期四半期経常収支
09/18 (木) 07:45 NZ 4-6月期四半期国内総生産(GDP)
09/18 (木) 10:30 豪 8月新規雇用者数
09/18 (木) 10:30 豪 8月失業率
09/19 (金) 07:45 NZ 8月貿易収支
一言コメント:
先週は夏休みをいただきました。車で東海、関西地方に行ったのですが、帰りは台風15号が直撃。視界が悪く、水たまりも所々に出来ている中で、スピードを出しすぎてスリップしたのか、横転している車を見かけました。我が家は妻と私とで30分を目途に交代して、何とか無事に帰宅しました。
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外為どっとコム総合研究所 情報企画部 為替アナリスト
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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来週の為替予想 豪ドル 円
こうした中で、豪ドルは10月下旬以降すでに1ヶ月以上52週MA(移動平均線、11月末現在0.66米ドル)を下回ってきました。さらに52週MAを下回る動きが続くようなら、豪ドル/米ドルは小動きが続く中でも、基本的には下落トレンドが展開している可能性が高いとの見方になります(図表4参照)。
こうした中で豪ドル/円は52週MAを大きく割り込みました。その後の反発で一時52週MAを回復したものの、最近にかけて再び52週MAを大きく割れるところとなりました(図表6参照)。
このような値動きは、過去の経験を参考にすると、豪ドル/円がすでに7月109円で天井を打って、複数年続く下落トレンドに転換した可能性が高いことを示すものです。
南アフリカ・ランド(ZAR)も上値の重い展開が予想される。中国人民元が1年超ぶりの安値を更新するなど、来年から始まる第2次トランプ政権に対する懸念がぬぐえず、この影響が南アにも波及する可能性が高い。米国からの経済制裁だけではなく、米中の関係悪化による中国経済の停滞は、通商パートナーでもある南アにとっては不安要素。ZARの上値を抑えそうだ。また、市場の反応は限られているが、今週発表された7-9月期GDPが非常に弱い結果だったこともZAR売り要因。来週は10日に11月卸売物価指数(PPI)、11日にCPI、12日に南ア経済研究所(BER)の10-12月期インフレ見通しなど、インフレ関連の指標が多く発表される。
IMM通貨先物9月9日資源国通貨 豪ドルの売り越し減少カナダ 108917枚の売り越し59枚の売り越し減豪ドル 79231枚の売り越し3452枚の売り越し減NZドル 8743枚の売り越し2269枚の売り越し増レバレッジド・ファンズ9月9日資源国通貨 豪ドルの売り越し減少カナダ 47670枚の売り越し1371枚の売り越し増豪ドル 5081枚の売り越し6779枚の売り越し減NZドル...
今週発表された7-9月期の国内総生産(GDP)は前期比、前年比ともに予想を下回る伸びに留まったことで、豪州の中長期金利が低下。豪ドルも対ドルで約4カ月ぶりの安値を更新した。この結果を受け、市場では9-10日に予定されている豪準備銀行(RBA)理事会で、どのような見解が示されるのか注目している。RBAは物価上昇が緩和していることが確認されるまで政策金利を据え置くとの予想が大半で、11月の理事会でも「政策がより長期間制限的である必要、またはさらに引き締める必要があるシナリオを議論」と、利上げについても議論していた。また、ブロックRBA総裁は「コアインフレが目標を上回っており当面利下げしない」と11月末に述べている。ただ、GDPだけでなく10月の月次消費者物価指数(CPI)や今週発表されたメルボルンインスティテュートの11月インフレ指数が予想から下振れているように、インフレは抑制されつつある。タカ派だった声明文に変化が生じるかを確認することになりそうだ。なお、理事会後の11日にはハウザーRBA副総裁、12日にはジョーンズRBA総裁補佐、13日にはハンターRBA総裁補佐などの講演も予定されている。
豪ドル/円は2024年7月にかけて110円寸前まで上昇し、2007年に記録したこの間の高値を更新しました。これは米ドル/円が161円まで展開する「歴史的円安」となるなど、円全面安が展開した影響が大きかったでしょう。このため、米ドル/円が8月にかけて一転して暴落すると、豪ドル/円も90円割れ寸前までやはり暴落となりました(図表5参照)。
52週MAは11月末現在で100円弱ですが、過去の経験を参考にすると、下落トレンドに転換した豪ドル/円は、一時的な上昇局面でも52週MAを大きく上回ることなく一段安に向かう可能性が高いと考えられます。
以上を踏まえると、2025年の豪ドル/米ドルは、2024年のレンジを下方修正し、0.6~0.7米ドル中心での展開と予想したいと思います。
豪ドルは上値の重い動きとなりそうだ。ただ、12月に入り流動性が悪化していることや、RBAの声明文次第でボラタイルに動く可能性があることには注意したい。



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