米FRB 年内05追加利下げ見込む
他方で、石破新政権が日本銀行に追加利上げに慎重な姿勢を期待する発言を繰り返したことで、追加利上げのハードルは一定程度上がったとみられる。雇用統計を受けても、こうした政治的な要因によって追加利上げは当面制約を受けるとの観測は大きくは変わらず、日本銀行が年内に追加利上げを行う可能性は引き続き低いと考えられる。
前述した1月のFOMC議事録に加え、その後のFRB当局者の発言も、総じて足元の景気の堅調さと、物価が下げ止まっていることや物価を取り巻く環境の好調さなどから、こうした環境に変化がない限り、現行の金融政策の維持が妥当との判断が固まりつつあることを示唆している。次回の予測値公表は3月18~19日に実施されるFOMC終了後となる(日本時間3/20)。経済、金融市場に大きな環境の変化がなければ、3月開催のFOMCではFF金利水準は据え置かれ、2025年末時点でのFF金利水準の予想値は足元の水準である4.375%と、1回の利下げに相当する4.125%に集中する可能性が高い。予想中央値が年内据え置きを示唆する4.375%になった場合は、足元は1回の利下げを予想している各種マーケットにも金利上昇、株安、ドル高圧力の増大といった相応の影響が出る可能性がある。
トランプ政権が送り込んだミラン氏が積極的な利下げ姿勢を示したのは、やはり予想通りといえるでしたね。政権の意向がFRBの金融政策判断に色濃く影響している印象を受けます。一方で、年内の利下げ幅については25ベーシスポイント程度にとどまるとの見方が一般的でしたが、実際には50ベーシスポイントの追加利下げが示された点にはやや驚かされました。背景には、直近の雇用統計をはじめ主要な経済指標が軒並み弱含んでいることが大きく影響していると考えられます。ただ、関税の影響による価格転嫁が進みつつある点は気になります。景気下支えを目的とした利下げが、反面ではインフレ再燃リスクを高める可能性もあり、FRBにとって金融政策の舵取りは一段と難しい局面に入っていると感じます。
今回のメッセージは、物価一本足から雇用リスクも意識へ。とはいえ委員間の見方は割れ、ドットの散らばりは金融条件の緩み過ぎを牽制。市場は年内の複数回を織り込みたがるが、経済データ次第で歩幅は揺れる。一方で欧州は据え置き、英は様子見色、日銀は慎重姿勢。主要中銀の足並みは揃わず、為替と外需セクターのボラは残る。ドルの方向感は相対成長と利回り格差で決まる。投資家は「緩和=一律リスクオン」に飛びつくより、長期金利の底固さとクレジットの再プライシングに注意。デュレーションは段階的に、金利敏感グロースは前提金利の見直しを織り込む。住宅や地域金融は与信姿勢を見ながら選別、資本財はドルと受注のラグで判断が無難。
FRB=連邦準備制度理事会は、今回の会合で政策金利の見通しをあわせて発表しました。この見通しは、参加者がそれぞれ適切だと考える金利を点=ドットで示していることから「ドット・チャート」と呼ばれ、市場では、その中央値がFRBが目指す金利水準だと受け止められています。今回の見通しでは、ことしの年末時点の中央値は3.6%で、前回・ことし6月の時点から0.3ポイント引き下げられました。年内には10月と12月に会合が予定されていますが、1回の利下げ幅を通常の0.25%とした場合、年内の利下げをあと2回、見込んでいることになります。19人の参加者がそれぞれ示した見通しをみると、9人が年内にあと2回の利下げを見込む一方、7人はさらなる利下げは必要ないとしています。また、1人はあと5回の利下げを見込んでいて、大幅な利下げを求めるトランプ大統領に近いスティーブン・ミラン氏とみられます。FRBは政策金利とともに、経済成長率などの見通しも示しました。このうち、来月から12月のアメリカのGDP=国内総生産については、去年の同じ時期と比べた実質の伸び率で1.6%と、前回の想定から0.2ポイント引き上げられています。失業率については同じ時期の平均で4.5%と、前回から変わりませんでした。インフレの状況を見極めるための指標としてFRBが重視する、PCE=個人消費支出の物価指数については、来月から12月にかけての上昇率の見通しは3.0%と前回から変わっていませんが、来年の同じ時期については2.6%と、前回から0.2ポイント引き上げられています。トランプ政権の関税措置が物価を上昇させるという見方が、参加者の間に根強く残っていることを示しているものとみられます。


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