新米の集荷競争が過熱 焦る担当者
コメ価格が一段と上昇した。12月上旬時点のコメ卸会社間での取引価格は、主要18銘柄で前週比7〜15%上昇した。秋から新米が出回っているが、コメの集荷競争が激しく、需給の引き締まりが続く。予定数量を確保しきれていない卸などが不足感から買い姿勢を強めている。
なぜ、新米の出荷が進む中、この高値なのでしょうか?JA愛知経済連米穀部の中村隆志課長: 昨年のコメ不足の教訓を踏まえて、各流通業者の皆さまが、お米の十分な原料確保に動いているということから、相場的にも上昇している。2024年夏の米の品薄で新米の集荷競争が起き、依然価格が跳ね上がったままです。JA愛知経済連米穀部の中村隆志課長: 令和5年産も不作ではなくてやや平年並み、ないしは良という結果だったと思うんですけども、やはり高温、こういう暑い気象下の状況で高温による影響を受けて、精米する際、歩留まりが低下。かなり最後精米にしたときに量が減った。令和6年産はまだその実態が見切れていない。2023年、夏の高温の影響で、玄米から精米する際の歩留まりが低下し、精米にしたあとの量が減ったといいます。2024年も猛暑の夏となり、また品質に影響がないか、不安だといいます。さらに、生産者の肥料や燃料代などの資材費の高騰が前年からおよそ6%増加していることなども、価格の上昇に繋がっているといいます。
コメの平均価格が再び4000円を超えるなか、今、新米を巡って業者とJAの間で熾烈(しれつ)な争奪戦が繰り広げられています。「コメの産地」で起きている異変を取材しました。■新米「盛り放題」大行列 ふっくらとして粘り気が強い炊き立ての新米。千葉県木更津産の「コシヒカリ」です。 地元の農家と契約して新米のご飯を提供する飲食店。コンセプトは“地産地消”です。 人気のメニューは海の幸が盛りだくさんの定食。ただ、これまでご飯の大盛りは無料だったのが、今月からは有料で110円に。新米の価格高騰が影響しています。舵輪 野口利一オーナー 「今季から値段の調整は入って2割から3割値上がりしている。地域のものを使う理由の一つとして、地域の再生産できる価格、農家と正しい適正価格で取引できれば問題はない」 訪れた人たちは取れたての新米の味をかみ締めます。埼玉県から来た50代夫婦 「すごくうれしい」 「新米が食べられるのはうれしい」 「偶然だったけど、すごくおいしい。今年、新米初めて。きょう新米買った」 「直売所で」 祝日の「道の駅」には新米を求めて朝から多くの観光客が。皆さんのお目当ては新米の「盛り放題」です。東京から来た夫婦 「コメ盛り放題を500円でできるので、普通よりも安いので来た」 1回500円で5合の升に新米が盛り放題。制限時間は1分です。 東京から来た夫婦が挑戦。50代の妻はパラパラと升の四隅にコメを乗せる作戦に。新米の重さを計ると1キロ以上を500円でゲット。東京から来た人(50代) 「いっぱい取れてうれしい」 「(Q.新米の値段は?)高い。500円で食べられるとうれしい。家に帰っておいしく食べる」 盛り放題イベントの新米は千葉県のオリジナル品種「粒すけ」です。道の駅では5キロ4860円で売られています。 1キロあたりは972円なので、500円で1キロを手に入れられれば、およそ半額。30代の人(横浜から) 「新米だと値段が高いと思う。これは安い」 全国のスーパーでのコメの平均価格は6月上旬以来、4000円台に上昇。5キロあたり税込み4155円です。■過熱する“新米争奪戦”コメ産地で異変? 青森県内では、銘柄米「はれわたり」の収穫が行われています。JAと契約する農家は、新米の価格高騰を手放しで喜んではいません。JAと契約 石澤光さん 「どこまで消費者がついて来てくれるのかが今後、心配。消費者あっての生産者だから食べてもらわないことには、コメが来年作れなくなるのが一番怖い」 JAなどの集荷団体が農家に一時的に支払う前払い金が今年は全国的に高騰しています。新潟県をはじめ、全国有数のコメどころでは3万円台が続出。去年に比べて約1.5倍から2倍に膨れ上がっています。 産地では民間業者を含めた新米の熾烈な争奪戦が繰り広げられていました。JAと契約 石澤光さん 「概算金だから(民間業者が)その上を出すのが当たり前。結局、業者間で(取引価格が)上がっていく。この米価が正しいと思っていないから、もちろん下がるべきだけど極端に下がりすぎるのが怖い。概算金2万5000円前後で収められる政策が欲しい」 概算金を決める集荷団体の一つ、「青森県米穀集荷協同組合」の齋藤専務はカメラ取材に応じ、苦しい胸の内を吐露します。青森県米穀集荷協同組合 齋藤猛専務 「集荷団体は全農(JA)やうちの組合だけではない。他にも色々コメを扱う人たちがいて、その人たちは2つの団体の価格が出た後、それに上乗せして農家を回る。『うちはこっちより高くする』と」 こちらの集荷団体では当初、青森県産の「はれわたり」と「まっしぐら」の概算金を去年より1万1000円高い2万6000円に設定していました。 ところがその後、4000円を上乗せし、3万円の大台に乗せます。その訳は…。青森県米穀集荷協同組合 齋藤猛専務 「2万6000円の概算金であれば、また去年の二の舞い。出荷契約している農家の76%しかコメが集まらなかった。後の24%は庭先で消えた。高い方に流れてしまった」 きっかけは“令和の米騒動”と呼ばれたコメ不足です。 記録的な猛暑の影響などを受け、去年の夏ごろには店頭に並ぶコメが消えました。その結果、新米の価格競争が起き、JAなどの集荷団体に平年よりもコメが集まらない事態となりました。青森県米穀集荷協同組合 齋藤猛専務 「(これまでの)概算金は安すぎたと思う。農家はコメを作るためには燃料も資材も高騰しているなか、我慢してコメを作ってきた。私たち集荷団体も安すぎたのは反省している。再生産できないという金額だったので。農家の人たちに保証ということでまず安心させて、その後、状況を見てまたプラスするなどの手段で今年は」
●品薄感から新米の買い付けが過熱今年は、昨年の米不足や価格高騰を背景に、全国各地で新米の買い付けが例年以上に活発化しています。JA(農協)や民間業者は、農家に対して高い金額を提示し、できるだけ早く新米を確保しようと懸命です。スーパーやコメ集荷業者からも「例年にない早さで新米の買い付け依頼が来ている」との声が上がっています。
「こめ由」では、10月半ば過ぎから新米が潤沢に入ってくるようになったといいます。地場の新米に加え、翌週には東北の新米の入荷も予定されていますが、価格は高騰しています。野田沙希社長: 原料米が1俵(60kg)当たりの価格が、今年は例えばこの1銘柄に対して1.66倍と出ていますよね。これぐらい高くなっているという現状です。価格がもう高い、本当に高いです。
●農家への高額提示と市場の動き農家に対しては、昨年の高値を上回る水準での買い付け提示が相次いでいます。JAや業者は、できるだけ多くの新米を確保しようと、例年以上に積極的な動きを見せており、各地で「新米争奪戦」とも言える状況が広がっています。
●25年産の高止まり見通し2025年産の新米価格は、昨年から続く品薄感や需要の高まりを受けて、高止まりが見込まれています。JAグループのコメ集荷担当者は「今年も価格が下がる要素は少ない」と話し、今後も高値傾向が続く可能性が高い状況です。


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