たった2kmが車で70分 観光地苦悩
「道幅が狭く人通りも多いので、できれば運転したくない」。こう語るのは、岡山市の観光バス運転手、橋口雅彦さん(41)。ツアー客の送迎で周辺を時々訪れるというが、「この辺りの道幅は車1台通るのもやっと。バスと車が詰まって渋滞になることがよくある」と話す。渋滞が続けば、ツアーの行程や労働時間の規制にも影響が及ぶことがあるといい、「どうにかしてほしい」と頭を抱える。
京都有数の観光地として知られる貴船神社(京都市左京区)へと続く道路で渋滞が慢性的に発生し、関係者を悩ませている。もともと道幅が狭いことに加え、近年はインバウンド(訪日客)の増加も混雑に拍車をかけている。幸いにも深刻な事故は起きていないものの、渋滞の影響でドライバーの労働時間に影響が出たり、観光事業者の業務に支障が及んだりする恐れがある。間もなく秋の観光シーズン。京都府警は車両規制を実施するが、問題の抜本解決には時間がかかりそうだ。
行く先を告げられないまま愛媛第367救護班に配属され、「地獄」と言われたビルマで看護にあたった。帰還後はシベリア抑留を体験した男性と結婚して宇和島市の市立病院で働き、退職後は長男が住む横浜市に転居して余生を過ごした。
よく晴れた9月上旬の土曜日。この日も一帯は多くの観光客でにぎわっていた。その一方、貴船神社へと続く府道で目立ったのが、乗用車や送迎バス、歩いて移動する観光客らによる危険な光景だった。車が歩く人の集団のそばを通過したり、沿道の施設の敷地内に侵入して対向車を交わしたり。通行量の増える昼間や夕方には慢性的な渋滞も起きていた。
貴船神社近くで旅館を営む小原陽さん(69)も状況の変化に困惑している。行楽シーズンに観光客を約2キロ先の最寄駅まで車で迎えに行った際、平時であれば約5分で到着していたが、混雑時は70分近くを要することも珍しくない。「10~15分くらい前に着く予定で行ってもダメだった」と振り返る。
府道は両端には車道と歩道を区切る白線が敷かれているものの、歩道側のすぐそばには川や崖があり、人1人が歩けるくらいの幅しかない。友人2人と観光に訪れていたフランス国籍のジョナサン・モントーリーユさん(34)は「歩いているそばを車が通ると怖いと感じる」。親子3人で縦に1列になって歩いていた大阪市の会社員、井上彰彦さん(45)も「もう少し幅の広い歩道が整備されれば安心できる」と漏らす。
事態を重く見た府警は、昨年から人や車の通行が激しくなる盆などの繁忙期の日中に、一部区間での路線バスやタクシーなどを除く北行きの車両を通行止めに。秋の観光シーズンを迎える10月1日~11月24日の土日祝日には路線バスを除く大型車両などの通行規制を行い、交通安全に配慮する。
「経済の視点から見て、観光立国は成り立ちません」
「観光地での交通渋滞の対策には、利用の制限と選択肢の拡充が同時に行われるケースが多い」と話すのは、観光公害(オーバーツーリズム)問題に詳しい文教大国際学部の中井治郎専任講師(観光社会学)だ。中井氏によると、「小江戸」として人気がある埼玉県川越市などでは、地域内の交通量抑制のために郊外の駐車場に車を駐車し、公共交通機関で観光地に入ってもらう「パークアンドライド」を推進している。


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