TDR離れ は本当か 運営の戦略
USJや今年7月に開業したジャングリア沖縄などのテーマパークも注目されていますが、これらの運営会社には到底まねできない、資金力とブランド力を背景にした大胆な戦略といえます。
TDLは混雑日でも多様な楽しみ方があるのに対し、USJは逃げ場がない。このため、USJは強気な価格帯のエクスプレス・パスを販売できる。年間パスポートで低下するチケット単価を、高額なエクスプレス・パスで補える価格構成になっている。
しかし、ディズニーを運営するオリエンタルランドの2025年3月期決算を見ると、消費額の向上やホテル事業が好調で、ゲスト1人当たりの売上高は過去最高を記録しています。つまり、数字上は「逆風どころか絶好調」ともいえる状況なのです。
平均客単価の低下を補っているのは、エクスプレス・パスやVIPツアーだけではない。例えば、飲食の単価もUSJは高い。屋内で椅子に座って飲食できる施設の価格を比較してみよう。TDLで屋内飲食できる施設の最低価格帯は、ホットドッグとポテトとドリンクのセットが1,040円、カレーが900円、ピザとドリンクのセットが1,020円程度だ。USJは、ピザとドリンクのセットが1,500円、ハンバーガーとポテトとドリンクのセットが1,450円と、やや高い設定になっている。お土産としても人気のポップコーンバケットも、TDLは2,100円~3,400円であるのに対して、USJは4,000円~5,500円だ。飲食にしてもポップコーンバケットにしても、内容に差があるため、USJが割高だと言っているわけではない。ここでは、客単価を高める要因になっていると指摘していることに注意して頂きたい。
ディズニーを運営するオリエンタルランドの2025年3月期決算説明資料にも「猛暑による入場者数減」との記載があり、2023~24年度の入場者数は、ほぼ横ばいで推移しています(2750万→2755万人)。
こうしてみると、全国・世界から滞在型で多くの集客ができ、直営ホテルの恩恵もあって、リゾートとしての総合力で稼ぐTDRは、満足度と売り上げをバランシングさせるフェーズに入っていると見ることができる。USJは、入園者数の面では関西圏のリピーターに頼り、客単価は遠方からの来園者に引き上げてもらうという、2面性が残っている。
USJとTDLの最大の違いは、年間パスポートの存在だ。USJは年間パスポートを販売しているのに対して、TDLは、現在は販売していない。年間パスポートを販売すれば、年間入園者数は増えるものの、当然ながら客単価は下がる。ある種、身を切る施策だ。なぜUSJは年間パスポートを販売し、TDLは販売しないのかを考えてみよう。
TDRの余裕ともとれる、このような戦略は、施設構成にも背景がある。TDRには、約3,500室の直営ホテルがある。各ホテルがテーマ性のある、テーマパークの延長のような施設であるのはもちろん、直営ホテルに宿泊すると、パークに開園15分前に入ることができるという特典もある。アトラクション1つの優先体験相当の価値だ。
例えば、2024年のゴールデンウィーク期間中、5月4日の待ち時間を、TDLと比較してみよう。USJは、「マリオカート 〜クッパの挑戦状〜」が最長140分、子供向けの「エルモのバブルバブル」も最長110分と、待ち時間が伸びやすい。「ジョーズ」も最長100分だ。最も待ち時間の短い「ハローキティのカップケーキ・ドリーム」で、日中は20分を要する[3]。
「夢の国」の異名を持つ人気テーマパーク、東京ディズニーリゾート(千葉県浦安市)。物価高で家計が厳しく、すっかり足が遠のいた人も多いのではないだろうか。運営会社のオリエンタルランドはチケット価格の見直...
年間パスポートは、かつては東京ディズニーリゾート(TDR)の各パークでも販売されていたが、2020年7月に、コロナ禍を理由に廃止されてから、販売は再開されていない。この背景には、TDLが入園者数上限を引き下げたことがある[5]。
TDRが滞在型リゾートの要素を強め、それに伴って支出額が増えるため、経済的に余裕のある40歳以上が増えたと考えられる。本来、年間パスポートの廃止と、滞在比率の上昇は同時に起きるものだが、2022年度はコロナ禍の影響が残っていた時期のため、一時的に首都圏からの来園者が多くなっていたと考えられる。
TDLでも待ち列をスキップするチケットは販売されているが、事前販売が無く、当日の入園後のみ、前のチケットを購入後60分経過しないと次のチケットを購入できないなど、平等性に配慮した仕様になっている。チケット単価も、アトラクションの場合1,500円~2,000円と、USJと比べれば安価だ。複数アトラクションを優先体験できる、高額なパッケージは、ディズニーホテル宿泊者に限定して販売されている。
その夢の国、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、2024年3月期決算で過去最高益を達成しました。背景には開業40周年記念イベントや円安による訪日外国人客(インバウンド)の増加、そしてチケット値上げの影響がありました。好業績をたたき出したことで、「夢の国の繁栄は未来永劫続いていく」と期待した人もいたかもしれません。
こうした魅力によって、ディズニーホテルの客室稼働率は、2023年度の1年間で、98.4%に達している。東京都内のホテルの客室稼働率が75%程度だから、驚異的な値であることがわかる。平均客室単価は約5万5千円、利益率約30%というドル箱事業だ。TDRを運営するオリエンタルランド(OLC)の、売上高、営業利益ともに約15%をホテル事業が占めている。


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