
昨日の海外市場でドル円は、米長期金利の上昇を手掛かりに全般ドル買いが先行。8月米新築住宅販売件数が予想を上回ったことも相場の支援材料となった。米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を有するグールズビー米シカゴ連銀総裁が「過度に前倒しされた利下げは不安材料」との発言もドル買いを促し、取引終了間際に一時148.92円と3日以来の高値を更新した。ユーロドルは欧州時間発表の9月独Ifo企業景況感指数が予想を下回ったことを受け一時1.1728ドルまで弱含んだ。
本日の東京時間でのドル円は、底堅さを維持すると予想するものの、さらに買い上げるためには米国の経済指標・要人(FRB関係者やトランプ米大統領)などの発言が、ドル買いを促すようなものにならない限りは難しそうだ。
昨日は3日以来のドル高・円安水準を更新したため、東京時間ではドルを買い遅れている市場参加者は下落局面で輸入予約を手堅く抑えてくると見込まれる。昨日は、通常では市場の反応が限られる米新築住宅販売件数でドルが買われた。本日も自民党総裁選に立候補している要人の発言や、日本時間午前中に更新されることが多いトランプ米大統領のSNSなど、些細な発言などで市場が急変するリスクもある。
昨日行われた自民党総裁選の公開討論会では、候補者はこれまで以上に慎重な発言となった。過去は日銀の利上げ批判を繰り返した高市候補も日銀批判を封印、小泉候補も財政拡大について玉虫色の発言にとどめるなど、無難に乗り切ることに終始し、市場への影響は限定された。もっとも、今後の発言次第では市場が動意づく可能性があり、警戒は必要。
米国からは23日の講演でパウエルFRB議長が明確な利下げ方針を示さなかったことで、トランプ政権の圧力が増す可能性がある。また、アリゾナ州の下院特別選挙は、予想通り民主党候補が勝利を収めた。この結果で、下院における共和党と民主党の僅かな差がさらに縮小し、エプスタインのファイル公開に関して票決が行われる可能性が高いと報じられている。同ファイルの公開は本邦では関心が低いが、トランプ政権の命運を握る可能性もあり注目される。
日本時間で相場が無風に終わった場合でも、本日は米連邦公開市場委員会(FOMC)の投票権を有するグールズビー米シカゴ連銀総裁、ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁、シュミッド米カンザスシティー連銀総裁、ボウマン米連邦準備理事会FRB副議長、バーFRB理事の講演などが予定されている。昨日はグールズビー氏がタカ派と捉えられる発言をしたが、他のメンバーの見解次第では神経質な動きになると予想する。
また、NY入り直後には前週分の米新規失業保険申請件数と失業保険継続受給者数が発表され、雇用指標には市場が敏感に反応すると見込まれる。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
市場概況 東京為替見通しドル円はレンジブレーク 注目はNY時間の要人講演やEファイル公開に
9月1日のレイバーデイ(Labor Day)が明けた後、重要な経済指標が順次発表される。筆者が注目しているのが、8月のISM製造業・非製造業景気指数と雇用統計である。パウエルFRB議長が雇用リスクに言及してきた以上、ISM指数では総合だけでなく雇用にも注目したい。製造業の雇用は今年2月以降、景気判断の分かれ目である「50」を下回る状況が続いている。非製造業(サービス業)は2か月連続で「50」を下回る状況にある。
5日の8月米雇用統計が市場予想を大きく上振れる場合は、瞬間的に148.00レベルを突破する可能性がある。このケースでは、8月下旬にレジスタンスラインとして意識された一目基準線までの反発と、このラインでの反落を意識したい。
現状、OIS市場では9月FOMCでの0.25%利下げを織り込む状況にある。したがって9月FOMCの焦点は、10月と12月の利下げの可能性を探ることにあろう。OIS市場での10月利下げ確率は50%前後で推移しており、連続利下げに確信が持てない状況にある。一方、12月の利下げ確率は80%台にある。しかし3か月以上も先のことであり、今後も市場の思惑は揺れ動くだろう。 米FRBの継続的な利下げ姿勢に影響を与えるのが経済指標となろう。ジャクソンホール講演でパウエルFRB議長は雇用の下振れリスクに言及した。ゆえに、市場参加者は雇用指標を注視するだろう。
ISM指数や雇用統計の他、3日には7月JOLTS求人件数、4日には8月ADP雇用統計も発表される。今週の雇用指標が労働市場の軟化を示唆する内容となれば、米FRBの継続的な利下げ期待を高める要因となろう。特に雇用統計が労働市場の軟化を示す場合はこの期待を高め、米金利の低下と米ドル安を促す要因になり得る。
国内の債券市場では、各年限の利回りがじわりと上昇している。特に8月以降、金融政策の方向性に敏感な2年債利回りの上昇が拡大し0.9%が視野に入る(8月29日:0.87%)。年内利上げの可能性を意識している動きと捉えることができる。
9月16~17日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれる。8月22日のジャクソンホール講演でパウエルFRB議長は、「リスクバランスの変化が政策スタンスの調整を正当化する可能性がある」と述べ、9月利下げの道筋をつけた。
OIS市場では、10月金融政策会合での利上げを意識し始めている。現状、その確率は40%台にあり確実とは言えないものの、7月の下旬以降、徐々に利上げ確率が高まっている。
週間の予想レンジの下限は、心理的ラインの145.00レベルを想定。ドル円がこのラインを目指すサインとして、7月安値と8月高値の半値戻しの水準146.80レベル、およびフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準145.83レベルの攻防に注目したい。
5日に8月の米雇用統計が発表される。ブルームバーグがまとめた非農業部門雇用者数変化の市場予想は7.5万人と、7月の7.3万人からほぼ横ばいの見通しにある。失業率は4.3%へ上昇することが予想されている。
8月以降、上値抵抗線として意識されている148.00レベルを今週の予想レンジの上限と想定したい。ドル円(USD/JPY)が148.00のラインをトライするサインとして、147.40レベルと147.70レベルの攻防に注目したい(いずれも1時間足チャートを参照)。前者のラインは半値戻しの水準にあたり、現在は21日線も推移する。後者の147.70レベルはレジスタンスラインへ転換する可能性がある。


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