
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年9月26日 12時51分
ユーロ円レンジブレイクなるか、ポンド円は194円へ目線が下がる危険も
ユーロ/円・ポンド/円、じり高
ユーロ/円とポンド/円はじり高。円安の流れを受けて、ユーロ/円は174.941円、ポンド/円は200.347円まで上昇しました。
本邦の次期政権の経済政策や財政運営への思惑が円の上値を重くしたとみられ、対米ドルでのユーロ安やポンド安の影響はそれほど感じられませんでした。ただし、ポンド/円については、国債入札の不調による英国財政への懸念から、上昇は限定的でした。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研TEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
ポンド、ユーロは上値限定か
EUからアメリカへのすべての輸出品に対し、アメリカが15%の関税を課すことで合意し、通商政策への不安が和らいだ後も、先行きへの不安からドイツの企業景況感や消費者心理は低迷しています。トランプ米大統領がロシアへの制裁強化の可能性を示唆しており、EUも追加の制裁措置を求められるのではないかとの思惑も、見通しへの不透明感を高めているようです。
また、フランスの政治的な不安定さもあり、ECBの利下げ期待が後退する中にあっても、不透明感は払拭されていません。ユーロは一本調子で買い進みにくい状況が続いていると考えられます。ユーロ/円は円安の流れから下値は限定されるとみられますが、上値も抑えられ、結果的に直近の高値圏で振幅する展開となる可能性があります。
英中銀総裁のベイリー氏は、英国の消費者が外食や買い物を控える傾向が強まっていると警告し、中央銀行として利下げをさらに進める必要があるとの認識を改めて示しました。もっとも、追加利下げはインフレ抑制の度合いによるとの見解は変わっておらず、利下げが差し迫っている様子は見られません。市場では、追加利下げは年明け以降になるとの見方が優勢です。
こうした見方はポンドを支える材料となり得ますが、目先のポンド相場を見通すうえでは英国予算案の方が重視されそうで、利下げの話題は後回しにされる可能性があります。先週の英国債入札では需要が低迷し、財政不安からポンド安が進行しました。引き続き、英国予算案やそれに伴う英国債市場の動向には注意が必要で、ポンドの上値も抑えられやすいと考えられます。
ユーロ/円は上下両にらみ、ポンド/円は下値警戒(テクニカル分析)
ユーロ/円は、5月23日の安値161.083円と7月28日の高値173.893円を結ぶフィボナッチファンの25.0%ラインと38.2%ラインの間で振幅が続いています。
当面はこの領域を中心価格帯として推移し、どちらにレンジブレイクするかを見極める展開となりそうです。
176.50円を超えれば178.00円付近まで上昇する可能性がある一方、173.50円を割り込めば172.00円付近まで下落する展開が想定されます。
レンジの上下限では逆張り、レンジブレイク後は順張りが基本的なスタイルになると考えられます。
また、ポンド/円は、21日ボリンジャーバンドが縮小期にあり、上下どちらにも動きにくい状況で、次の展開を見極める時間帯が続きそうです。
201.00円を超えれば、アセンディングトライアングルの形から203.00円付近までの上昇が期待されます。
一方、ローソク足は4月9日の安値184.381円からのサポートライン上にあり、現状水準を維持するだけでは、支持線を割り込む可能性もあります。
そうならないためには、早急に支持線から離れる動きが欲しいところですが、上値が抑えられているため、支持線を割り込む展開となれば、200日線が推移する194.75円付近まで調整する可能性もあります。
目先は支持線を信じて買い目線を維持したいですが、199.00円を割り込んだ場合は、速やかに売りに転じたいと考えます。
【ユーロ/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:EUR/JPY:172.500-177.500
【ポンド/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:GBP/JPY:196.00-203.000
9/29 週のイベント:

一言コメント
米国や日本の話題が相場を動かす主なドライバーとなっている一方で、ユーロ圏や英国の話題が相場に影響しづらい展開が続いており、少し寂しさを感じます。
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来週の為替予想 ユーロ 円
2009年に発生したギリシャ危機(ギリシャショック)をきっかけに、スペインやポルトガルなどでも債務危機が発生。 ソブリン危機・ユーロ危機とも呼ばれ、欧州の財政問題が露呈しました。 欧州債務危機により、ユーロは通貨価値がさらに下落し、ユーロ円は円高がさらに進行しました。
2025年のユーロ/円の見通しを考えるにあたって、引き続き政策金利と消費者物価指数(CPI)の推移の把握が重要です。 その他にも為替変動要因は複数考えられ、それらにも注意を払うことが必要です。
2029年5月のユーロ円見通し。当月始値 224.08、最低 220.29、当月最高 226.99。平均 223.75。月末 223.64。変更 -0.2%。
OANDA証券では、初心者の方でも取引を始めやすいよう1通貨から取引を行えます。 1ドル100円とした場合、約4円から取引を始めることが可能です。
上のチャートは、ユーロインデックス(上側)とドイツ10年債利回り(下側)です。
ユーロ(EUR)は1999年1月に導入され、ドイツやフランスなど11か国が参加しました。
9/11のECB理事会で利下げ局面終了が意識され、9/15の1.1716ドルを安値に、年内3回の追加利下げが有力視されるFRBとの違いに支えられ堅調を持続。また、9/15発表の米9月NY連銀製造業景気紙数の下振れや9/17のFOMCで0.25%の利下げを決定。さらに、政策金利見通しでは年内2回、26年に1回の利下げが示され、21年6/29以来の1.1918ドルへ上伸。一方、一旦の材料出尽くしから伸び悩み、9/18発表の米新規失業保険申請件数の大幅な改善を受け1.1750ドルへ急落したほか、9/19の英財政悪化に伴うポンドの下落に伴い1.1729ドルへ下落し1.1747ドルで取引を終了。ユーロ円は9/19の日銀の金融政策発表で現状維持が見込まれるとの観測や、対ドルでの上昇を背景に、9/15の172円90銭を安値に堅調な動きを継続。また、9/18にはNY株式市場の主要3指数が揃って史上最高値を更新した流れを受け、9/19の日銀政策発表前には昨年7月以来の174円50銭へ上伸。ただ、日銀政策会合後のドル円の下落や対ドルでの下落を足かせに、173円48銭へ下落し173円80銭で取引を終えました。
両者の値動きはある程度似ており、ドイツの動向がユーロの値動きに影響している可能性があります。
アベノミクスにより、96円台前半(2012年7月末)だったユーロ/円は、144円台後半(2013年12月末)までの上昇を見せました。
ポンドドルは、9/15の1.3546ドルを安値に、利下げが確実視される9/17のFOMCと、据え置きが見込まれる9/18の英中銀政策委員会を控え、堅調地合いを持続。9/16発表の英7月週間平均賃金上昇率が6月から鈍化したものの、物価目標達成に整合的とされる3%付近を大きく上回る状況が確認されたことや、9/17のFOMCを受けて1.3726ドルへ上伸。しかし、パウエル議長が「リスク管理のための利下げ」との認識を示したほか、9/18の英中銀政策委員会では現状維持と量的引き締め規模縮小を決定。ただ、一旦の材料出尽くしとされたほか、米新規失業保険申請件数の改善とともに1.3534ドルへ下落。その後、9/19には8月公共部門純借入額が予想を大きく上回り、財政赤字拡大懸念から1.3463ドルへ下落し、1.3472ドルで取引を終了。一方、ポンド円は9/15の199円93銭を安値に、対ドルでの上昇や、9/18発表の米経済指標の上振れを受けたドル円の148円台への上昇とともに昨年7/23以来の201円27銭へ上伸。もっとも、9/19の日銀政策会合を受けて199円37銭へ下落し、さらに英財政悪化懸念を背景に199円22銭へ下落し199円32銭で取引を終えました。
当記事では、2025年のユーロ/円の見通しや予想について解説します。
政策金利差が縮小しており、これがユーロ/円にどの程度の影響を与えるか、注目が集まっています。
2028年11月のユーロ円見通し。当月始値 209.48、最低 209.48、当月最高 218.28。平均 213.07。月末 215.05。変更 2.7%。
フランスでは9月8日に国民議会で信任投票が行われます。一方、日本では同日、自民党党員を対象に臨時総裁選実施の是非を問う意思確認日となります。フランスも日本も首相の信認が低下しています。フランスでは政権崩壊時にマクロン大統領が新たな首相を指名するか解散総選挙に踏み切る可能性がありますし、日本でも石破首相が解散総選挙を打って出る可能性があります。両国の政局不透明感からユーロも円も取り扱いづらい状況です。円については日米関税合意で見通しの不確実性が緩和され、日銀が利上げに前向きになるのではとの観測も浮上しており、円の方向性をさらに見極めにくくしています。こうした状況が落ち着くまでは、ユーロ/円は方向性を定めにくく、不安定な推移が続くと考えています。
日本とユーロ圏の政策金利も低下に転じ、政策金利差は縮小しています。


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