【市場概況】東京為替見通し=ドル円、8月実質金利を見極めつつ「高市トレード」の射程を探る展開か

FXブログ
【市場概況】東京為替見通し=ドル円、8月実質金利を見極めつつ「高市トレード」の射程を探る展開か

7日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、財政拡張や金融緩和を志向する高市自民党新総裁誕生を受けた「高市トレード」が継続し、まとまった規模のオプションが観測されていた152.00円を突破して152.04円まで上昇した。ユーロドルはフランスの政治情勢を巡る不透明感から1.1648ドルまで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、8月実質金利を見極めながら、高市新自民党総裁の経済政策「サナエノミクス」への思惑による「高市トレード」(日本円売り・日本国債売り・日本株買い)の射程を探る展開となる。

 植田日銀総裁は、先日の講演で「どういう方が首相になっても、十分な意思疎通を図っていきたい」と述べていたことで、高市新首相誕生の可能性が高まっているため、本日パリ・ユーロプラスが主催するイベントでの講演が注目されていたが、イベント開催は中止となった。

 8時30分に発表される8月毎月勤労統計では、実質賃金の伸び率を確認することになる。7月の実質賃金は、前年同月比+0.5%で、7カ月ぶりにプラスに転じていた。要因としては、給与の伸びに加え、夏のボーナスの支給額が増えたことなどが影響した。8月もプラスが続いているのか、それとも夏のボーナスという一過性の要因なのかを見極めることになる。

 昨日のドル円は、月曜日に窓を開けて上放れた「高市トレード」の円売りの勢いが継続して、152.00円のバリアオプションをヒットして152.04円まで上値を伸ばした。

 窓開けによる上放れは、投機筋による円の買い持ちポジションの手仕舞いによるものと思われるが、市場筋によると、日銀の利上げ時期が先送りされるとの思惑から、2024年にドル円を160円台まで押し上げた「円・キャリートレード」が復活しつつあるとのことである。

 「円・キャリートレード」は、当時の神田財務官が主導した本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入により手仕舞いを余儀なくされたが、昨日は加藤財務相が過度な変動への警告を発する口先介入に留まっている。

 ドル円の上値を抑制する要因としては、日米貿易不均衡の是正を目論んでいるトランプ米政権による円安抑制が挙げられる。

 トランプ米大統領は今月27日に来日する予定となっており、15日に新首相に指名される予定の高市自民党総裁との日米首脳会談に28日頃に臨むことになる。

 ベッセント米財務長官は、日米関税合意に関して、「日本が合意内容を守っているか四半期ごとに精査する。日本の対応にトランプ大統領が不満であれば、自動車を含むすべての日本製品への関税は25%に戻る」と警告していた。

 高市政権が日銀の利上げに否定的な見解を示し、円安は企業収益に資するとして円安基調を放任した場合、トランプ大統領が不満に感じて、関税を25%へ引き上げる可能性が出てくる。

 ベッセント財務長官は今年2月と8月に植田日銀総裁と電話会談を行っており、円安は日銀の利上げが後手に回っているからだとして、円安抑制のための利上げを暗に要請していた。同財務長官が許容するドル円の上限を、かつての「ベンツェン・シーリング(113.60円)」に倣って、「ベッセント・シーリング」と推測した場合、2月の電話会談時は152円~154円、8月は147円~148円付近だと思われる。

 10時に発表されるニュージーランド準備銀行(RBNZ)の政策金利は、3.00%から2.75%への引き下げと2.50%に引き下げで拮抗しており、利下げ幅次第でNZドルが荒い値動きとなることが予想されるため警戒しておきたい。

(山下)

・提供 DZHフィナンシャルリサーチ

[紹介元] 外為どっとコム マネ育チャンネル 【市場概況】東京為替見通し=ドル円、8月実質金利を見極めつつ「高市トレード」の射程を探る展開か

市場概況 東京為替見通しドル円 8月実質金利を見極めつつ

次に、市場参加者の予想物価上昇率として、10年物の国債利回りと物価連動債利回りの差から計算されるブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)をみると(第1-2-26図(2))、2020年頃から上昇し、直近では1%台半ばとなっている。BEIについては、物価連動債の発行が少なく流動性が低いことから、流動性リスクプレミアムがあり、これらによりBEIが真の予想物価上昇率より低くなる傾向があるとされるが48、その点を除けば、推移としては、企業の予想物価上昇率と近しい動きとなっている。また、ESPフォーキャスト調査によるエコノミストの2~6年後の中期的な予想物価上昇率をみると、同様に2020年以降徐々に高まり、1%台半ばとなっている。総じて、市場参加者の予想物価上昇率も、2%程度に向けて安定化しつつあるとみることができる。

また、「生活意識に関するアンケート調査」から中期的な5年後の予想物価上昇率をみると、2010年代は、平均値4%程度、中央値2%程度で推移していたものが、今回物価上昇局面においては、平均値8~9%程度、中央値5%程度と水準がレベルシフトしていることが分かる。ここで、予想物価上昇率に関して米国の状況をみると、家計は、5~10年後の上昇率の予想が3%強(中央値)であるのに対し、BEIは2%強と51、家計の方が高く、過去期間におけるかい離の平均値は0.74%pt程度となっている。このように、家計の予想物価上昇率は、市場参加者等のそれに比べて高めとなる傾向があると考えられる。日本の場合、企業の予想物価上昇率をベンチマークとして考え、家計の予想物価上昇率のベンチマークに対する上振れが米国並みと仮定すると、2021年半ば頃までは2%台、2023年以降は3%程度となる(第1-2-26図(6))。2021年半ば頃までは、実際の家計の予想の中央値と整合的であるが、近年は、実際の予想の中央値が大きく上振れしていることが分かる。家計の予想物価上昇率は、食料品など身近な物価動向に反応する傾向があるという研究もあり52、現下においては、食料品価格の上昇・高止まりが続いていることが、家計の予想物価上昇率を大きく押し上げている可能性がある。その観点でも、コストプッシュによる食料品等を中心とした物価上昇から、賃金と物価の好循環の下、サービスを中心とした安定的な物価上昇が実現し、家計の予想物価上昇率が3%程度に安定化されていくことが重要と言える。

次に、フルタイム労働者の特別給与(ボーナス等)の動向についてみると、2024年の夏(6~8月平均)は前年比7.8%となった。1993年以前は就業形態計のみ把握可能であるが、前年比7.5%と同様の伸びとなり、33年ぶりの高い増加率となった(第1-2-15図(1))。特別給与の伸びを、事業所規模別に分解すると、所定内給与とは対照的に、5~29人の事業所の寄与が特に大きなものであったことが分かる。ここで、特別給与のうちボーナスのみを取り出した「毎月勤労統計」の賞与集計結果から、夏のボーナスを支給した事業所の労働者29についての一人当たり平均ボーナス支給額の伸びをみると、2024年は2.3%と2023年の2.0%より高いものの大きな変化はない。上述の特別給与の伸び(就業形態計7.5%)についてはボーナスが支給されていない事業所の労働者も含む全体の平均値であり、新たに特別給与が支給される労働者の増加分が押上げに寄与するのに対し、後者(2.3%)は、新たにボーナスが支給された労働者数の増加分の影響は受けないという違いがある。実際、ボーナスを支給した事業所の割合は2023年の65.9%から2024年は73.0%に高まっている。ボーナス支給事業所割合について、事業所規模別にみると、30人以上の事業所では支給事業所割合が横ばいだったのに対し、5~29人の事業所においては、2024年に支給割合が大きく上昇しており、このことが2024年夏のボーナスの伸びの押上げに大きく寄与したと推察される(第1-2-15図(2))。上述したとおり、比較的規模の小さい5~29人の事業所においては、所定内給与で見た賃金上昇率が遅れている一方で、こうした事業所においては、毎月の賃金よりも、ボーナスの支払によって、労働者の待遇改善を図り、人材の確保・維持に努めていると考えられる。

日本では、自民党総裁選が9月12日告示、9月27日が投開票に決まった。10月30-31日の日銀金融政策決定会合に向けた当局者からの追加利上げに関する発言には警戒しておきたい。また、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ指標の目安にしているPCEデフレーターの7月分は前年比2.6%と予想されており、6月の2.5%からの伸び率上昇が見込まれている。予想通りならば、9月17-18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ幅は0.25%となる可能性が高い。

ユーロドルは、8月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)を見極めつつ、9月12日の欧州中央銀行(ECB)理事会での利下げの可能性を探ることになる。7月分のHICPは、ヘッドラインが前年比2.6%、コアが2.9%だった。また、ウクライナ軍がロシアへの越境攻撃に踏み切り、新展開を迎えつつあるウクライナ戦争の行方も留意しておくべき。

ドル円は、7月30-31日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で「7月に利下げの論拠を複数の当局者が示した」ことや、「大多数の当局者が9月の利下げは適切とみている」ことが明らかになったことで144.46円まで下落した。米労働省が発表した雇用者数の年次改定が81.8万人の下方修正となり、2009年の82.4万人以来の大幅な修正となったことも、ドル売り要因となった。ただ、144円台では実需の円売り意欲が根強いほか、米10年債利回りの上昇につれて146円台半ばまで反発した。

以上の物価の基調に加えて、ここでは、物価の背景について、GDPギャップや単位労働費用といったマクロ的な物価変動要因のほか、2024年における賃金上昇の詳細、原材料や人件費の価格転嫁の動向、サービス分野を含む物価上昇の広がり、企業や家計、市場参加者の予想物価上昇率、といった経済主体の価格・賃金設定行動や物価に対する認識に係るミクロ的な観点を含む各種の指標やデータを総合的に確認し、デフレ脱却に向けた現在地を確認する。なお、賃金上昇の持続性に係る詳細な議論については、コロナ禍前に人手不足感が高かった時期との比較を含めた分析を含め、第2章第2節において行う。

ドル円は、中東の地政学リスクに警戒しながら、米7月のPCEデフレーターや8月東京都区部消費者物価指数(CPI)などから、日米の金融政策の方向性を見極めることになる。

最後に、各経済主体(企業、家計、市場参加者)の予想物価上昇率の動向について確認する。まず、企業の予想物価上昇率について、日銀短観の物価見通しをみると(第1-2-26(1))、企業による3年後、5年後という中期的な予想物価上昇率は、2022年半ばからレベルシフトし、物価安定目標と整合的な2%台で安定的に推移している。具体的に、企業がどの程度の水準の(5年後の)物価上昇率を予想しているのかについて、「イメージを持っていない」と回答した企業47を除いた回答毎の分布をみると、コロナ禍前の2018年は、+1%程度が最も多く、次いで0%程度だったのに対し、2024年時点では+2%程度が最も多くなり、+3%程度も2018年時点よりも増加している。このように企業の予想物価上昇率は2%前後が着実に定着しているとみられる。

2024年8月以降の生鮮食品を除く食料品の価格上昇幅の拡大については、POSデータをみると(第1-2-3図(2)、(3))、米類やチョコレート等の菓子類、10月以降は飲料や加工肉類等の価格上昇が影響している。このうち米類7については、上述のとおり、夏場における需給のひっ迫や令和6年産米における生産コスト増の反映等が影響し、2024年12月には前年比64.5%の記録的な水準まで上昇幅が拡大した。チョコレートについては、原料のカカオ豆の価格が、産地であるガーナ等の異常気象による生産減の影響を受けて世界的に高騰しており、円安も相まって、国内製品価格の上昇につながっている。このように品目ごとには、様々な要因が価格動向に影響している中、食品メーカーによる価格引上げの要因をみると(第1-2-3図(4))、2024年は、2023年に比べて、円安や人件費、包装・資材、物流費を挙げる企業が増加していたことが分かる。さらに、2025年(2024年12月時点の1-4月見通し)にかけては、物流費や人件費を価格引上げの要因として挙げる企業が更に増加している。このように、食料品については、一般的には、①円安進行が、包装・資材費の上昇も伴って、ラグをもって最終製品価格に波及していること、②生産コストに占めるシェアは高くないものの8、33年ぶりの高水準の賃上げの中で、人件費の転嫁が進んでいること、さらに、③物流費については、いわゆる「物流の2024年問題」もあって、2024年以降、道路運送料の上昇が顕著であり、これらコストの販売価格への転嫁が進んでいること等が価格上昇に影響しているとみられる9。

日銀の植田和男総裁が8日に5年の任期の折り返しを迎える。デフレ経済に逆戻りするリスクに目配りしつつ、マイナス金利解除や上場投資信託(ETF)の市場売却といった金融政策の正常化を慎重に進めてきた。政治とも良好な関係を築いてきた植田日銀の任期後半は、アベノミクス路線を継承する高市早苗自民党総裁との関係構築も課題となる。

デフレに後戻りしないかどうかという点について、物価の背景を詳細にみると、需給ギャップはマイナスが継続しているものの、景気の緩やかな回復の中でマイナス幅は縮小傾向にある。景気の下振れリスクに留意が必要であるが、現時点で、需給バランスの面から物価が下落する蓋然性は高くない。仕入価格の販売価格への転嫁の状況をみると、非製造業を含めて、おおむねデフレに陥る前の姿に回復している。人件費の割合が相対的に高いサービス分野において、賃金から販売価格への転嫁の流れが進みつつあり、物価上昇の広がりとしても、デフレ以前の状況に近づきつつある。その賃金については、パートタイム労働者の時給は、最低賃金の引上げの効果もあって前年比4~5%での増加が続き、フルタイム労働者についても、33年ぶりの高水準となった春季労使交渉の賃上げの効果が、所定内給与の2%台後半の伸びという形で着実に発現している。ただし、フルタイム労働者の所定内給与については、中小企業や公的セクター等で賃金上昇の遅れがみられる。また、実質ベースのフルタイム労働者の定期給与は、2024年10月には2年7か月ぶりに前年比で増加に転じたが、同年11・12月には消費者物価上昇率の高まりから再び前年比で減少するなど、安定的にゼロを上回る状況には至っていない点にも留意が必要である。経済主体の予想物価上昇率をみると、企業は2%程度にレベルシフトした状態が継続し、市場参加者についても2%程度に向けて安定化しつつある。一方、家計の予想物価上昇率は、食料品など身近な商品の価格上昇が影響して上振れした状態にあり、消費者マインドを下押しし、GDPの過半を占める個人消費の力強い回復に至らない一因にもなっている。

コメント

` this.fetchProxy(url, options, 0).then( res => res.json() ).then( data => { if (data.body) this.srcdoc = data.body.replace(/]*)>/i, `
タイトルとURLをコピーしました