
9日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、高市自民党総裁の「行き過ぎた円安を誘発するつもりはない」などの発言を受けて152.14円まで下落。しかしながらその後、米長期金利の上昇を背景に153.23円まで上昇した。ユーロドルはフランス政治情勢への警戒感や米長期金利の上昇を受けて1.1542ドルまで下落した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、20日以降に先送りされた臨時国会までの政治空白の間隙を突いた「高市トレード」の射程を見極めつつ、昨日の高市自民党総裁の「行き過ぎた円安」への牽制発言の続報や連立政権を巡る自公党首会談の結果を待つ展開が予想される。
本田元内閣官房参与は、故安倍首相と高市氏の経済ブレーンであるが、先日150円台の円安を行き過ぎと述べ、日銀の利上げ時期に関しては、今月の金融政策決定会合は難しいものの、12月会合の可能性はあるとの見解を示しており、昨日の高市氏の発言と整合的である。
ドル円は、高市氏が標榜していた経済政策「サナエノミクス1.0」(積極的な財政政策と緩和的な金融政策)により、日銀の利上げ観測が後退し、債務状況の悪化懸念も加わって153円台まで上昇してきた。しかし昨日のテレビ番組での高市氏の発言「私の立場で利上げそのものについて発言すべきでない。行き過ぎた円安を誘発するつもりはない。財政健全化が必要ではないと言ったことは一度もない」は、「サナエノミクス2.0」と解釈できる内容だった。
高市氏は4日の会見で日銀法に言及したが、独立性をうたった第3条には触れず、政府との連携を記した第4条「政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」に言及していた。また、高市氏のインフレに対する見立ては、コストプッシュ型のインフレを放置し、デフレではなくなったと安心するのは早い、デマンドプル型のインフレがベストとのことであり、日銀の早期利上げには後ろ向きであると見られている。
本日は、昨日の高市発言を受けて行き過ぎた円安に歯止めがかかるのか、そして、連立政権を巡る自公党首会談の行方に注目したい。
ドル円の上値を抑える要因としては、現在の日本経済の喫緊の課題である物価高抑制のためには、日銀の利上げを容認し、輸入物価の上昇に繋がる円安を抑制しなければならないという見方がある。円安による輸入物価上昇でコストプッシュ型のインフレ圧力が強まった場合は、2024年にドル円が161円台に上昇した際に円安を阻止した本邦通貨当局がドル売り・円買い介入に踏み切る可能性には警戒しておきたい。
また、トランプ米政権は、米国の貿易赤字の削減のために、関税を引き上げ、ドル安を志向している。28日頃に予定されている日米首脳会談に向けて、日米政権からのドル高・円安に対する牽制には警戒しておきたい。
(山下)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
市場概況 東京為替見通しドル円 高市氏の円安に関する発言や自公党首会談を見極める展開か
会見内容からは、高市新総裁が日銀との協調路線を志向しているように見える。しかし、財政・金融政策に関する過去の発言や日本経済とインフレについての見解も考えるならば、金融政策の決定については慎重な判断を求める可能性があると筆者は考えている。
米政府機関閉鎖の長期化が意識される場合は米ドル安を警戒したい。「高市トレード」で急速に円安が進行する局面では、投機的な円の買い戻しも重なりドル円は急反落する可能性がある。現在、148.00レベルを挟んで200日線と50日線が展開している。高市トレードの円安が米ドル安を相殺することも想定し、148.00を今週の下限と想定したい。
週明けの外為市場は円安でスタートした。ドル円(USD/JPY)は、先週3日の終値147.50レベルから2円ほど米ドル高・円安水準の149.38-40レベルでスタートした(IG証券取引プラットフォーム)。
不安定な動きを続ける東京市場と日銀金融政策(主な意見):追加利上げは早すぎたのか?遅すぎたのか?
4日に自民党総裁選の投開票が行われ、積極財政・金融緩和を志向する高市早苗前経済安全保障相が決選投票で小泉進次郎農林水産相を下し、自民党初の女性総裁に就任した。
しかし、急速な円安の進行は、国内のインフレ圧力を高める要因である。日銀は為替を直接のターゲットとしておらず、経済と物価の見通しに及ぼす影響を注視する立場にある。しかし、急激な為替変動となれば、日銀は経済と物価への影響を考慮せざるを得ず、利上げ判断に影響を与えるだろう。米政府機関の閉鎖による米ドル安の懸念がくすぶっていることも考えるならば、「高市トレード」の円安を意識する一方、行き過ぎた円安局面では急反落を警戒したい。
週明けの市場から円相場のボラティリティが拡大している。円安の進行が続きドル円が151円台へ上昇する場合は、今年1月の高値と4月安値のフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準151.62をトライする可能性が浮上しよう(週足チャート)。すぐ下の水準151.60レベルを今週の上限と想定したい。
高市新総裁は「責任ある積極財政」が世界の潮流と位置づけ、「戦略的な財政出動」で雇用増、所得増、消費マインド改善を促し、税収が自然増に向かう「強い経済」を実現することを公約に掲げている。また、物価高対策としてガソリン税と軽油引取税の暫定税率廃止、給付付き税額控除の導入を目指している。
株式市場はスイートスポットに:消費低迷下で進む株高の持続性は。。。
予想レンジの下限:148.00 ドル円(USD/JPY)の下落局面では、149.00レベルがサポートラインへ転換するかが最初の焦点となろう。この状況が確認される場合は、地合いの強さを市場参加者に印象付けるだろう。
予想レンジの上限:151.60 今週、「高市トレード」の円安が続けば、ドル円(USD/JPY)は節目の水準150.00のトライを想定したい。9月25日~26日にかけてこの水準を試すも、149.95レベル(IGレート)で反落した経緯がある。
高市氏は4日、新総裁として会見に臨んだ。政策については、財政政策にしても金融政策にしても責任を持たなければならないのは政府にあると述べた。日銀については、金融政策についてベストな手段を考え、とってくれる場所だと認識しているとした。
トランプ再選は米国経済・金融市場が抱える問題を増幅:ドル高・円安が緩やかに修正されるのであれば日本経済にプラスだが。。。


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