
先週末の海外市場でドル円は、取引終了間際にトランプ米大統領が「米国は11月1日から中国に100%の追加関税を課す」との考えを示したと伝わると、一時151.17円まで弱含んだ。連日続いた「高市トレード」を意識した円売り・ドル買いを巻き戻す動きも見られた。ユーロドルは1.1631ドルまで上昇した。
本日の東京時間でのドル円は、ドル売り材料が豊富なことで上値が限られることになりそうだ。ただ、政治相場となっていることで、政局が急変した場合には相場が大きく反応するリスクにも警戒したい。なお、本日は本邦市場がスポーツの日で祝日休場なだけでなく、米国もコロンブスデーで債券市場が休場となっている。
先週末10日は日米からサプライズとなる、政治的な動きがみられた。日本からは公明党が連立政権から離脱、米国からはトランプ米大統領が中国への追加関税を課すことを示したことで米中両大国の貿易摩擦が再燃した。
先週、10日の午後に公明党が26年にわたって続いた自民党との連立政権から離脱したことが、政局の混迷を深めている。日本時間10日夕刻に会見で応えた斎藤公明党は「首相指名では高市早苗と書くことはできない」と明確に高市氏への投票を否定した。臨時国会は20日以後になることは決定的だが、高市氏が首相に指名されない可能性すら出てきている。
衆議院定数465議席の中で自民党議席は196議席、公明党が24議席、この220議席に維新35議席か国民民主27議席が加われば過半数(233議席)を獲得できたが、公明党が離脱したことで連立の見通しが立たなくなった。一方で野党も立憲148議席、維新35議席、国民民主27議席でも過半数には届かないなど、どのような連立が実現するかが全く読めない状況だ。
現時点で首相選挙が行われた場合は1回目で過半数を獲るものがいないと思われ、上位2名の決選投票が行われるだろう。その場合は公明党が与野党のどちらにも投票しない可能性や、れいわ新選組9議席、共産党8議席、などがキャスティングボードを握る可能性も出てくるかもしれない。このような複雑化した政局は、日本人ですら今後の展開が読めない状況なので、海外勢には更に理解ができず、これまでのような「高市トレード」で一方的に円売りのポジションを傾けにくいだろう。高市氏が首相になれないリスク(高市トレードの終了)による株売り・円買い戻しに市場は動くのか、野党が勝利した場合でも財政積極路線が濃厚なことや、日本の政治的混迷を嫌気して円売りが続くかの判断が非常に難しい状況だ。
米中の貿易摩擦再燃により、先週末はNY引け値にかけて急速にドル売り・円買いが進んだことで、早朝はドルが買い戻されてから市場は始まっている。ただ、昨日中国政府はトランプ大統領の10日の発表について「典型的なダブルスタンダード」と非難し、米国との貿易戦争を「恐れてはいない」と述べるなど、徹底抗戦を行うとの姿勢を改めて示していることでドルの上値は重いだろう。10日の米株式市場は大幅安で引け、1日で2兆ドル株価が消失したとされている。また、10日のCME225先物は46000円を割り込んで引けるなど、明日の日経平均も日米の政治的な混迷のダブルパンチで大幅続落になることになるだろう。
米国の政府機関の一部閉鎖は、米上院が14日までは休会となっていることで、引き続き解除されることはない。2018年の米政府機関の一部閉鎖では、1週間でGDP成長率を0.1%低下させるとの試算だったが、すでに3週目に突入することになる。なお、トランプ大統領は先ほどテルアビブに向かい、本日(現地時間13日)イスラエルの国会で演説を行う予定。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ


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