みずほリサーチ&テクノロジーズ エグゼクティブエコノミストで元日銀理事の門間一夫氏に、日本経済の注目テーマを聞きました。前編では新政権下のインフレと利上げの行方について解説します。
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新政権は高市氏が本命だと予測
公明党の連立離脱により次期首相の行方が注目されていますが、門間氏は高市氏の可能性が高いと予測。いずれも少数与党となるため、財政は拡張バイアスがかかるものの、極端な財政拡張にはならないとの見方です。
インフレ2%は定着する見込み
現在のインフレ率3%のうち、約1%は食料品などの一時的要因。残りの2%が岩盤的に定着しており、日銀の物価目標はほぼ達成されています。一時的要因が剥落後は1.5〜2%で落ち着く見込みです。
実質賃金は来年プラス転換
8ヶ月連続マイナスの実質賃金ですが、名目賃金は2%台後半と30年ぶりの伸び。物価が急上昇したため追いつかなかっただけで、来年年明けにはプラス転換する見込みです。
第3のインフレ「ノルムの変化」
門間氏は、コストプッシュでもディマンドプルでもない第3のインフレ「ノルムの変化」を指摘。この2〜3年で「2%インフレが普通」という常識に変わったことが、岩盤的な2%インフレの正体だといいます。
アベノミクス2.0は起きないと予想
高市氏は金融緩和と財政拡大を主張していますが、今回は状況が異なります。インフレと円安が問題になっているため金融緩和は使えず、むしろ日銀の利上げを止めることもないでしょう。
12月利上げの可能性が高い
日銀がなかなか利上げできない理由は2つ。①基調的インフレ率がまだ2%未満、②アメリカ経済の先行き懸念です。特にアメリカ要因が大きく、世界経済への波及や来年の春闘への影響を懸念しています。
門間氏は当初、来年1月を予想していましたが、最近の円安を考慮すると12月が本命と予測。10月は政治状況や米中対立の再燃もあり難しいとのことです。
円安が利上げの最大トリガー
日銀の利上げタイミングを決める1つの要素は為替です。過去の利上げは2024年1月(150円台後半)、2023年7月(160円到達)といずれも円安局面でした。円安こそが植田総裁が利上げを決断する最も分かりやすい理由になります。
新政権の影響は限定的
高市氏でも玉木氏でも、日銀の利上げ判断への影響は限定的だと予測。どちらも円安進行は避けたいため、日銀の利上げを妨げることはありません。総理が誰かよりも、アメリカや為替といった客観情勢の方がはるかに重要だと主張されてます。
まとめ
- ・インフレ2%は岩盤的に定着
- ・12月利上げが本命、円安が最大トリガー
- ・新政権の影響は限定的
- ・アメリカ経済の動向が最重要
みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社 エグゼクティブエコノミスト
門間 一夫 氏(もんま かずお)
1957年生まれ。1981年東京大学経済学部を卒業し日本銀行に入行。1988年米国ウォートンスクール経営学修士。2007年6月から調査統計局長、2011年4月から企画局長を歴任。2012年5月から金融政策担当理事として、2%物価安定目標の導入に至る局面を担当。2013年3月から国際担当理事として、G7やG20などの国際会議に出席。2016年5月末に日本銀行を退職し同6月から現職。専門はマクロ経済、金融政策。著書『日本経済の見えない真実』(日経BP、2022年9月)
株式会社外為どっとコム総合研究所 シニア為替アナリスト
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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