
本日のロンドン為替市場では、ユーロドルは目先の仏政局不安が後退したほか、ドル売り要因も合わさり、上値を試しやすいか。14日に仏首相が年金改革の凍結を発表し、社会党の支持を取り付けたことで、昨日仏議会ではルコルニュ首相の不信任投票が否決された。市場予想通りの結果であったが、結果を好感してユーロはひとまず上昇している。もっとも、ルコルニュ内閣は今後2026年予算の可決に向けて動く必要がある。厳しい交渉が予想される点を踏まえると、ユーロ買いの賞味期限は短いかもしれない。
足もとでは、米地銀の融資を巡る懸念などからドルが売られていることも、ユーロの上昇を後押ししている。ユーロ買い・ドル売り材料が手元にある中、ユーロドルは上値を伸ばしやすいと見る。テクニカル面でも、日足一目均衡表の雲を上抜けており、既に三役逆転が消滅している。そうした中で基準線1.1731ドルを上抜けてくると、先月中旬からの下落トレンドが一服して上値を追いやすくなると見る。
なお、9月ユーロ圏消費者物価指数の発表が予定されているが、今回は改定値。速報値の前年比+2.2%/コア前年比+2.3%から大きく変化がなければ反応は限られそうだ。
他方、英国ではピル英中銀MPC委員兼チーフエコノミストの発言機会が設けられている。6-8月平均週間賃金(ボーナスを除く)は前年比4.7%と伸びが鈍化し、2022年5月以降でもっとも緩やかな伸びを記録したほか、6-8月失業率(ILO方式)は4.8%と予想通りとはいえ5-7月の4.7%から悪化するなど、雇用や賃金状況に陰りが見える。こうした中、今後の金融政策への言及があれば材料視されやすいと見る。
その他対円の視点からは、15時35分から予定されている内田日銀副総裁のあいさつも気になるところ。田村審議委員に続いてタカ派的内容となるか、植田総裁のように慎重姿勢を維持するのか確認しておきたい。
想定レンジ上限
・ユーロドル:1日高値1.1779ドル
・ポンドドル:1日高値1.3527ドル
想定レンジ下限
・ユーロドル:日足一目均衡表の転換線1.1629ドル
・ポンドドル:日足一目均衡表の転換線1.3368ドル
(川畑)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
見通し ロンドン為替見通しユーロドル 仏政局不安後退とドル売りが追い風か
ユーロ/米ドルは、2025年に入って間もなく1ユーロ=1米ドルの「パリティ(等価)」割れ寸前まで下落したが、その後反転すると一時は1.18米ドル以上に上昇した。このように大幅なユーロ高・米ドル安が展開する中で、ユーロは売り越しから買い越しに転換し、さらに「買われ過ぎ」気味になったということだろう。仏政局不安が、ユーロ「買われ過ぎ」修正のきっかけになる可能性はある。
本日のロンドン為替市場でもユーロ相場は、仏政局の不安定さを意識しながらの値動きか。円相場については、高市トレードの勢いが一服しつつあるなか、自公連立の行方が注目される。経済指標は9月ノルウェー消費者物価指数(CPI)とスイスSECO消費者信頼感指数が発表される程度であり、金融当局者の講演もスペイン中銀総裁のみが予定されている。
本日のロンドン為替市場では、主だった経済指標の発表がなく手掛かり材料が少ないうえ、コロンブスデーで米債市場が休場ということもあり、ユーロドルは参加者の減少が見込まれる中で仏新内閣の行方を気にしながらの展開か。
直近の世論調査では、マクロン氏の中道与党連合の支持率は14%程度と左派連合に10ポイントリードされ、支持率トップの極右「国民連合(RN)」には20ポイントも差をつけられた。解散・総選挙となれば、フランスで極右政権の誕生が現実味を帯びてくる。RNは以前ほど過激ではないものの、ユーロは買いづらいという印象は拭えないだろう。
欧州連合(EU)で経済規模が第2位のフランスは、政府債務残高が国内総生産(GDP)比で110%を超えている。この比率は、EU内でギリシャやイタリアに次いで大きい。仏政府は債務削減に向けて動き出そうとはしているものの、バイル前首相が提出した「約440億ユーロの歳出削減案が盛り込まれた予算案」は国民から強い反発を受けた。
前週末にフランス大統領府が発表したルコルニュ首相の新内閣について、要職は前回と同じメンバーが占めることもあり、新味に乏しい。そうした中、新内閣が野党を納得させられるかは依然不透明であり、急進左派「不服従のフランス(LFI)」は、極右の国民連合(RN)と同様に本日不信任案を提出すると伝えられている。事態の収束が見通せないこともあり、引き続きユーロドル相場の重しとなりうる。
バイル氏の後を継いだルコルニュ氏も予算・社会保障のパッケージ作りに取り組んだが、少数与党の弱さから左派・右派野党の合意を得られず、首相就任わずか1カ月弱で辞任した。窮地に陥っているマクロン仏大統領は本日にも、2024年1月以降では5人目となる首相を任命する見込み。しかしながら、新首相が議会をまとめ上げるのはかなり難しいとの見方が優勢だ。


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