金価格が急騰 背景と保有の注意点
豊島氏:金は金利などのインカムを生まないので、実質金利が上がることが最大のリスクだと思います。1980年、当時の金価格の最高値が約875ドル。FF金利(米国の短期金利の代表的指標)がおよそ20%。この金利の高さが重石となって、その後10年間、金価格は低迷することになりました。ですので、金投資にあたっては、FF金利とインフレ指標であるCPI(消費者物価指数)はウォッチしていく必要があると思います。銀行に預金しておくと、物価上昇により実質金利がマイナスになる時、金は買われるのです。
国際金価格はドル建てなので、ドル高になると現地通貨建ての国内金価格は上昇します。特に日本では急激な円安進行によって、国内金価格の上昇スピードが一時期、世界最速を記録しました。このように円の価値がドルに対し低下する一方で、金の価値が上がることを多くの個人が実感し、金地金・コインをこぞって購入したわけです。
3つ目は、株式投資よりずっと簡単だということ。金価格には底値目途と上値目途があると考えられます。下値目途は1200ドル。高コストの金鉱山会社の生産コストはこのあたり。1200ドルを割ると世界の2割の金鉱山が閉山すると言われており、供給量が減る。またこの価格になってくると、金の2大需要国である中国、インドが買ってくる傾向があり、これ以上は下がりにくい。そして上値目途である1500ドル。この価格を超えると、リサイクルの金が増え始めるので、それ以上は価格が上がりにくくなる。昨今は金はこの価格帯の中での値動きになる傾向があり、株式投資よりはずっと簡単だと思います。
吉田:そういえば、先だっての北朝鮮のミサイル問題でも、金価格は大きな上昇にはなりませんでした。最近このような心理的不安がマーケットに影響しにくくなったように思うのですが、この点はいかがですか?
森田 前述したように、ここ数年は金地金・コインの購入量も増えています。FRBが22年~23年に積極的な利上げを行い、米国以外では通貨価値がドルに対して大幅に低下しましたが、実はその際に、現地通貨建ての金価格は逆に上昇しました。
足元で金価格が高値圏にあるのは、過去数年間の要因が作用しているためです。
――底堅い需要に支えられて、金価格は今後も上昇が続くと考えてよいでしょうか。
吉田:さまざまな投資対象に投資をする機関投資家の資産運用状況が、金価格に影響するようになってきているということですね。
吉田:金価格は株やドルの値動きと逆相関するというのが、これまでのマーケットの常識でした。しかし、近年は株やドルの上昇と同時に金価格も上昇する場面が増えており、これまでの定説が通用しなくなっていると思います。この点についてはどのようにお考えですか?
2021年から2022年にかけては、インフレの進行を受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに踏み切りました。通常、金利上昇は金価格にとってマイナス要因とされます。しかし、ウクライナ戦争の勃発で安全資産への需要が再び高まり、金価格は高値を維持しています。
チャン 過去50年にわたり、米国の政府債務残高と通貨供給量は増加しています。多少ペースは異なるものの、それらと並行して金価格も上昇してきました。これは「価値を保存すること」こそが金の価値であることを示しています。
林氏:そうですね。世界的な金融緩和により、世の中にマネーがあふれていることも大きな背景のひとつだと思います。
もちろん短期の投資対象として金を購入する場合もありますが、こうした多様な需要特性が金価格を下支えしています。
中央銀行の買い増しが続く限り、たとえ金価格がこの先調整するとしても、それほど大きな下落には至らないのではないでしょうか。
森田 金の国際価格は過去2年間で約70%上昇し、新型コロナウイルス禍前の19年に比べると約115%上昇しています。円ベースの国内金価格は同期間で約95%上昇し、19年からは約180%上昇しました。こうした金価格の上昇をけん引しているのは投資需要です。


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