
先週末の海外市場でドル円は、積極財政や金融緩和を志向するとされる高市早苗氏が新首相に就任したことを手掛かりに、海外勢が円売りを進めると一時152.17円まで強含んだ。ユーロドルはロンドン・フィキシングに絡んだユーロ売り・ドル買いのフローが観測されると一時1.1598ドルまで弱含んだ。
本日の東京時間でのドル円は、「高市トレード」の再開で底堅い展開になるだろうが、今後明らかになる経済対策とその財源確保などの内容次第も見極めていく必要がありそうだ。また、円安傾向となるなか輸入物価の上昇に対して、これまで円安の負の部分を指摘していた新財務相の動向も注目となる。
高市新政権は組閣初日から経済対策に着手しはじめているとされている。すでに先週15日には自民・公明・立憲の3党税制調査会長が協議を行い、ガソリン減税の原案作成で合意している。市場はこれ以外に、どの程度インパクトのある物価高対策を発表できるかを注目している。
一部では食品の消費税を2年間ゼロにするとの報道もある。また、連立を組む維新の会が主張する社会保険料の負担減についても、長期の議論が必要になるが、これらを経済対策に入れることができるかも注目だ。ただ、いずれの政策も社会保障などの財源への影響は必至なことで、問題は財源をどこから確保するかになる。高市氏は「必要とあれば赤字国債の発行もやむを得ない」と言及しているが、高市氏の後ろ盾となり財政規律派とされる麻生自民党副総裁や鈴木自民党幹事長がどの程度まで積極財政を容認するかが注目される。公明党の連立離脱により自民党内での風当たりが強くなり、党内融和を図るためには麻生派を中心とした意向を組みこまざるをえないと見込まれている。財政出動に積極となり期待通りの結果となった場合には円売りが進むだろうが、市場予想を裏切るような動きとなった場合は大きく巻き戻しが入る動きになるだろう。
円安が進んでいるなかで、高市首相や財務相になった片山氏の金融政策や為替についての発言も要警戒。高市首相は政策金利の引き上げが景気に悪影響を与えるとの考えを持ち、これまでも利上げに対しては厳しい発言を繰り返してきた。首相という立場に就いたことで、やや和らいだ発言をしているが、高市氏が師事した安倍元首相が日銀への圧力を高めたように、金融引き締めを行わないように圧力をかけた場合は更にドル買い・円売りを促すだろう。一方で、「高市トレード」の再開で円安に拍車がかかれば、輸入物価の上昇の悪影響という負の側面がある。高市首相が財務省に任命した片山さつき氏は積極財政論者だけではなく、円安による物価への影響を兼ねてから苦言を呈してきた。今年の3月のインタビューでは物価高の沈静化に向け円高進行が望ましい見解を表明し「120円台が適正水準」と述べている。昨日の時点では「為替はファンダメンタルズを反映して安定的に推移するのが望ましい」とありきたりの発言にとどめたが、今後の円安進行の物価高の影響について、より詳らかにする必要も出てくるだろう。
また、今回連立を組む維新の会は大阪以外では支持率が高くはなく、高市政権に維新の意向が組み込まれなかった場合はすぐに連立離脱の可能性が高い。昨年6月に当時の岸田首相と維新の馬場党首が「旧文通費」の改革に関して、次の国会で合意内容を確実に実現すると確認したが、維新はその約束を反故にされた経緯がある。当時維新は「党首会談での合意が国民に対する裏切りだ」と強く抗議したが、今回の高市政権でも維新の要求する政策が軽んじられた場合は、維新が連立を離脱するリスクもありそうだ。
なお、今後の本邦の重要日程は下記のようになる。
24日・所信表明演説(外交日程が入るため各党の代表質問は11月の予定)
26日・東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議
27-29日・トランプ米大統領来日予定(28日に日米首脳会談の可能性)
29-30日・日銀金融政策決定会合
31日・アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議
国内情勢以外では、引き続き米国の政府機関閉鎖や中国との貿易摩擦についても要警戒。昨日はハセット米国家経済会議(NEC)委員長が今週の政府閉鎖委解除の可能性を示唆したが、スーン共和党上院院内総務は昨日、政府閉鎖を終わらせるための「プランB」はないと述べ、交渉が袋小路に陥っていることを示している。21日目を迎えた政府閉鎖は経済への影響は拡大し米連邦準備理事会(FRB)の大規模利下げの可能性も高まり、ドルの重しとなる。米中貿易摩擦はトランプ大統領が「習近平国家主席との会談は実現しないかもしれない」と発言したと同時に、「習近平国家主席と良い取引ができると期待」と発言。二重人格のように二転三転する発言内容で市場は疲弊することになりそうだ。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
市場概況 東京為替見通し 高市トレード
トランプ米大統領は今月27日に来日する予定となっており、15日に新首相に指名される予定の高市自民党総裁との日米首脳会談に臨むことになる。トランプ米大統領は「アメリカ第一主義」、高市自民党総裁は「日本第一主義」を標榜していることで、親和性は高いと思われる。しかしながら、トランプ米政権の対日政策の重要課題は、日米貿易不均衡の是正であるため、円安抑制が喫緊の課題となるのではないだろうか。
コムジェスト・アセットマネジメントのポートフォリオマネジャー、リチャード・ケイ氏は、日銀の利上げ観測の恩恵を受けてきた銀行株について「再び軟調となる可能性がある」と指摘しつつ、「内需株や小型株は短期的に大きな追い風を受けるだろう」と予測。アベノミクスへの回帰を示す兆しがあれば、市場参加者や海外投資家はそれを歓迎するとみている。
今週(10月13日週)は、モメンタムの低下が続くかどうかが注目ポイントになるでしょう。仮にモメンタムが0ラインを割り込むとともにトレンドラインも下回って戻せなくなるようだと、トレンドの転換が視野に入るでしょう。その反面、モメンタムが0ラインを上回ったままで推移したり、トレンドライン上を維持したりするようであれば、高市トレードの継続と高値更新への期待が継続するのではないかと考えられます。
高市早苗氏の首相選出を受け、金融市場は経済政策の実行を見極める段階に入る。株式相場は2025年度内になお上値余地があるとの声が聞かれる半面、急ピッチの上昇は落ち着くとの指摘もある。債券市場では一方的な金利の上昇を見込む声は少なくなっている。
野村証券の岩下真理エグゼクティブ金利ストラテジストは、市場参加者の多くが小泉氏の勝利を前提にしていたため、「金融市場は波瀾(はらん)万丈の世界に放り込まれてしまった」と話す。円安と株高に加え、国債利回り曲線が傾斜(スティープ)化する「高市トレード」が復活すると予想し、「10月の利上げ観測が後退すれば、日銀があえて利上げに踏み切ることはないだろう」とも述べた。
株式にとってはポジティブなサプライズになるとみるバンエック・オーストラリアのクロスアセット・インベストメント・ストラテジスト、アンナ・ウー氏は、高市氏の財政政策を踏まえると、償還期間が長い国債の利回りが「やや上昇しても驚かない」としつつ、過度な景気刺激策に踏み込む可能性は低く、市場の変動は限定的になるとの見方を示した。
日経平均は「高市トレード」の影響で4万9000円を突破し史上最高値を再び更新しました。今晩の米国市場の企業決算の結果が明日の東京市場に影響を及ぼす可能性はありますが、首相指名選挙当日となる明日21日、事前報道のとおりに高市新政権が誕生すれば、積極財政への期待を背景に株高がさらに進展する展開が見込まれます。
総裁選前の市場では、報道各社や海外予測市場の情報を材料に小泉進次郎農林水産相の勝利が有力視され、財政規律を重視し、日銀の政策正常化を後押しするとみられていた。
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21日の東京株式市場で日経平均株価は最高値を更新した。終値は前日比130円(0.3%)高の4万9316円。一時は前日比で700円を超えて上昇し初の5万円に迫...
顕著なのが「高市銘柄」とされる企業の株価だ。高市氏は防衛力や経済安全保障の強化を掲げており、総裁就任直後は大きく上昇した。しかし、14日は防衛関連で、IHIと川崎重工業が2・6%、サイバーセキュリティー関連のNECは3・6%下落。高市氏が意欲を見せる核融合発電の関連部品を製造するフジクラは4・9%も値を下げた。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、高市氏は日銀利上げにそれほど理解を示さないとの認識で「10月利上げの織り込みが多少後退するだろう」と話す。6日の債券市場では2年、5年金利を中心に低下し、超長期金利は上昇するとみている。
円相場もドルに対して円高が進んだ。日本銀行の利上げが遅れるとの見方から、円相場は高市総裁の選出前より一時6円程度も円安が進んでいたが、この日は1ドル=151円台まで上昇。高市氏の積極財政による財政悪化懸念で上昇していた新発10年物国債の流通利回りは約2週間ぶりの低さ(価格は上昇)となり、先週までの相場は一転した。
また、前述の公明党の連立離脱や米中の貿易摩擦の再燃に対する警戒が高まっても、このトレンドライン上を10月14日時点で維持していることから、今のところ高市トレードは継続中と思われます。
21日に就任した高市早苗新首相は「責任ある積極財政」を掲げ、経済・物価高対策に真っ先に取り組む方針だ...


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