万博海外館の工費未払い 解決遠く
今回の未払い問題は、万博という国家的イベントの裏側で突貫工程と契約管理の不備が交錯した結果として発生しました。現在は、個別訴訟による債権回収、行政による監督・是正、主催者への対応要求が並行して進んでおり、今後は最終的な支払いの確定とともに、再発防止に向けた契約スキームや監督体制の強化、人権・労働環境の配慮徹底が問われています。
パビリオン完成・引き渡し前のこの時点で大阪府なり万博協会が動き、「下請に支払いをしなければ開催させない」などの対応をすれば、未払いの長期化を防ぐことができた可能性もある。実際に2021年のロンドンオリンピックでは、オリンピック開発公社が中心になって、元請段階、一次、二次下請段階と、支払われたかどうかを監視する体制をとり、未払いリスクを最小限に抑えた。倒産リスクへの備えも万全だったといわれている。オリンピックでできることを万博でできないはずはない。
一方で、元請け企業を相手取った訴訟や抗議行動も広がっています。GLイベンツ・ジャパンに対しては、7月に大阪市内で被害業者らが抗議デモを実施。被害者の会は署名活動を展開し、8月下旬には約5万筆を集めて公的関与や早期支払いを求めました。こうした動きは、社会的関心の高まりとともに問題解決への圧力を強めています。
それでもなんとか、万博開幕日の2日前である2025年4月11日に竣工させ、パビリオンをGL Events Japanに引き渡した。つらい日々を乗り越えられたのも、最後には報われると信じていたからだ。しかし、万博が開幕した後も工事費は支払われなかった。
今回の大阪・関西万博では、こうしたリスク管理体制がとられていないことが未払い多発の一つの要因であることは明らかだが、通報後も大阪府はなんら対応せず、公になって以降も「民民の問題」「(救済策をとるのは)税金の使い方としておかしい」などと主張し、救済策を否定している。
10月13日の閉幕まで2カ月余りとなった大阪・関西万博。来場者数が順調に伸びているとして、万博協会が成功ムードを強調する一方、海外パビリオンの工事費未払い問題が下請け業者を直撃。「いのち輝く未来社会のデザイン」の万博テーマに逆行する深刻な事態が広がっています。
2025年大阪・関西万博では、海外パビリオンの建設工事において下請け業者への代金未払いが相次ぎ、大きな問題となっています。開幕直前から表面化したこの問題は、開催後も収束する事はありませんでした。万博協会が9月1日に公表したところによれば、未払い相談が寄せられたのは米国、アンゴラ、インド、ウズベキスタン、セルビア、タイ、中国、ドイツ、ポーランド、マルタ、ルーマニアの11か国・11館に及びます。未払いを訴える事業者数は、NHKの報道で少なくとも19社とされ、同一パビリオンで複数の下請けが重なって被害を受けている実態が浮かび上がりました。
対応を迫られた万博協会は「民間同士の契約問題」として立替払いを拒みつつ、相談窓口の設置や当局との連携を進めました。しかしこの姿勢は被害者から「他人事」と批判されています。経済産業省は再発防止策の検討を開始し、大阪府は建設業法違反を理由に関連企業へ営業停止処分を下すなど、監督権限を行使しました。
産経新聞は外資系イベント会社に取材を申し込んだが「遠慮している」と回答。約2億円の未払い金を請求している大阪の施工会社の男性社長は「場合によっては万博会期中に訴訟を起こす」と明かしている。
ただ、府は「業者間の未払い問題は、当事者同士で解決することが基本」とし、救済措置を実施しない方針を示している。万博協会も取材に対し、「関係者に事情を聞くほか、行政機関に情報提供を行うなど、できる限りの対応をしている」と述べるにとどめた。
開幕から1カ月となる大阪・関西万博。開幕前に浮き彫りとなった課題はいまだ積み残されたままだ。残り5カ月で克服できるかを検証する。
このように、日本の紛争解決制度は、国際的な人権保護の要請にも、国内で現実に生じている建設業界の未払い問題にも十分に対応できていないのが実情です。今後は、被害者が速やかに救済を得られる手続の整備や、建設業を含む取引関係における支払い確保の仕組みを強化することが急務であり、透明性と公正性を担保した制度インフラの構築が、日本社会における信頼回復のために不可欠となっています。
この下請け会社は、元請けから工事費未払いの被害を受けていると主張する。「一刻も早く、問題が解決してほしい」と訴える男性は、日経クロステックの取材に応じ、工事費の支払いを巡る元請けとの交渉の経緯や、極限状態で作業し続けた現場の実態を語った。
未払いを訴える別の下請け業者らは5月、「被害者の会」を結成。府や万博協会に対し、未払い金の立て替えなどの救済措置を求めている。
日本国際博覧会協会(万博協会)によると、ドイツやセルビアのほか、アンゴラやマルタなど計11カ国の海外パビリオンの建設工事に携わった業者から工事費の未払いに関する相談が寄せられたという(9月17日時点)。アンゴラ館など他のパビリオン工事でも、未払いの工事費を求める訴訟が起きている。


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