図表でわかる財務分析 Microsoft2025年4Q決算・2026年1Q予想 2025年10月28日

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図表でわかる財務分析 Microsoft2025年4Q決算・2026年1Q予想 2025年10月28日

(写真=iStock photo)

 

「ウインドウズ(Windows)」や「オフィス(Office)」といった”従来のソフトウェア”の「巨人」として知られてきたマイクロソフト(Microsoft)は、クラウドサービス「アジュール(Azure)」とAI技術を核とする、現代のテクノロジー業界を牽引する存在へと見事な変貌を遂げました。特に、生成AI「コパイロット(Copilot)」をあらゆる製品に組み込む戦略は同社の成長をさらに加速させています。マイクロソフト(Microsoft)の最新決算書から、これからのAI時代における同社の圧倒的な強さを分析し、直前に控えた第1四半期(FY26 1Q)の業績を予想してみます。

(1)マイクロソフト(Microsoft)の最新業績と2026年1Qの業績予想

 まずは損益計算書です。下表は、2024年(FY24)2Qから2025年(FY25)4Qまでの四半期ごとの結果と2026年(FY26)第1四半期(1Q)の業績予想です。

単位:百万ドル

 マイクロソフト(Microsoft)の2025年(FY25)4Q決算は、同社のAI戦略が完全に軌道に乗ったことを証明する非常に力強い内容となりました。売上高は前年同期(FY24 4Q)と比較して、18.1%増の76,441百万ドル、本業の儲けを示す営業利益は22.9%増の34,323百万ドルと2桁成長を達成しました。

 特に生成AIの需要拡大を背景としたクラウド事業「アジュール(Azure)」の成長が、マイクロソフト(Microsoft)全体の業績を力強く牽引しました。こうした状況を踏まえて、マイクロソフト(Microsoft)の会計年度の始まりでもある、次の第1四半期(FY26 1Q)について業績予想をしてみましょう。市場アナリストの多くはこの好調が今後も続くと見ています。私の分析結果も方向性は同じです。その成長がどのようなものになりそうか、もう少し踏み込んでみます。

・生成AIの需要拡大がもたらす高成長への大きな期待感

 マイクロソフト(Microsoft)の2026年(FY26)1Qの業績ですが、私は売上高が78,000百万ドルと、引き続き力強く成長すると予想しています。市場は生成AIアシスト機能「コパイロット(Copilot)」の有料版が、企業に浸透し、新たな収益源として本格的に貢献することを期待しています。そして、企業のAI活用が本格化する中で、その基盤となるクラウドサービス「アジュール(Azure」が高成長を遂げて、今後AIを活用するすべての企業が、マイクロソフト(Microsoft)の顧客になるかもしれないという期待感であふれることを望んでいます。

・莫大な投資と事業リスクに備えながら高成長が維持できるのか

 最大の課題は、到来したAIブームをビジネスに結びつけるために必要な莫大なコストです。生成AIのためのデータセンター建設や高性能半導体への投資は巨額です。これがマイクロソフト(Microsoft)の営業利益率を圧迫する可能性があります。また、AI技術の安全性や独占禁止法など、世界的な規制強化も事業リスクとして常に存在します。こうした投資と事業リスクなどから発生するコストをこなしながら、高い利益成長を維持できるかが問われます。

(2)売上高

 通期ベースの損益計算書からさらにマイクロソフト(Microsoft)の分析を深めてみましょう。まずは売上高です。マイクロソフト(Microsoft)の売上高は2021年(FY21)の168,088百万ドルから2025年(FY25)の281,724百万ドルへと右肩上がりで成長しています。

 これをさらに売上高成長率だけのグラフにしてみます。2023年(FY23)は営業利益成長率が、一時的に6.9%に鈍化しましたが、これは世界的な景気減速の影響です。その後、AI戦略が本格化した2024年(FY24)以降は、再び15%前後の高い成長率を取り戻しており、同社のビジネスがいかに強固であるかを示しています。

 さらに四半期ベースのデータでみてみると、この力強い成長がさらに加速していることがわかります。2025年(FY25)4Qの売上高成長率は18.1%に達しています。そして、2026年(FY26)1Qは、売上高が78,000百万ドル、成長率18.9%になると私は予測しています。これは生成AIとクラウド事業が同社の売上をさらに牽引し、この成長モメンタムが新しい年度に入っても継続すると見込んでいるからです。

(3)営業利益の動向

 営業利益は、売上高からコストを差し引いた本業での儲けのことです。下表は通期ベースのグラフですが、最も注目すべき点は、その驚異的な営業利益率です。2021年(FY21)の41.6%が2025年(FY25)は45.6%。売上拡大とともに利益率も上昇しています。これはAIインフラへの巨額投資を行いながらも、AI関連のソフトウェア販売などで、それを上回る利益を上げて、会社の「儲ける力」が強くなっていることを意味しています。

 四半期ベースのデータでみても、営業利益率は43%から46%という極めて高い水準を維持しています。そのため、私は2026年(FY26)1Qの営業利益を35,100百万ドル、営業利益率45.0%という予測を立てました。AI事業への巨額な投資コストを抱えながらも、引き続き、高収益性は維持できると見込んでいます。

(4)当期純利益の動向

 当期純利益は税金などを支払った後に最終的に会社に残る利益のことです。下表は通期のグラフです。当期純利益も着実に増加しています。2023年(FY23)に一時的に成長率がマイナス0.5%に落ちて、足踏みをしましたが、これは特殊な要因によるもので、2024年(FY24)にはプラス成長に戻りました。2025年(FY25)の当期純利益はついに年間101,832百万ドルになり、1,000億ドルの大台を突破しました。

 四半期ベースのデータで見ても、当期純利益は安定して成長しています。2025年(FY25)4Qは前年同期比23.6%増という高い伸びを記録しています。そうしたこともあり、私は2026年(FY26)1Qの当期純利益を28,100百万ドルと予想しました。本業の好調さを反映し、最終利益も十分な株主還元ができる結果になるでしょう。

(5)株主価値指標の動き

 続いて、株価が会社の価値に対して割安か割高かを判断するための指標を見てみましょう。投資家にとっては一番気になる指標です。

1)EPS (1株当たり利益) の動向

 EPSは、「株主が持つ1株に対して、会社がいくら利益を生み出したか」を示す指標で、これが伸びるほど株主の価値は高まります。 下表は通期ベースのグラフです。EPSは2021年(FY21)の8.05ドルから2025年(FY25)の13.64ドルへと、当期純利益の成長に伴い、一貫して上昇しています。

 四半期ベースのデータでみると、この力強い成長を継続していることがよく分かります。そのため、新年度となる2026年(FY26)1QのEPSも3.77ドルも、前年同期比で着実な成長を示すと私は予想しました。これは会社の「稼ぐ力」が直接的に、株主の価値向上に貢献していることを示しています。

2)PER (株価収益率) の動向

 PERは「株価がEPS(1株当たり利益)の何倍か」を示し、「投資家がその会社の将来の成長にどれだけ期待しているか」を測る指標です。下に掲載した通期ベースのグラフをみると、マイクロソフト(Microsoft)のPERは、2022年(FY22)に一時低下したものの、基本的には30倍超という、非常に高い水準で推移しています。2025年(FY25)は36.46倍でした。

 さらに、2024年(FY24)2Qからの四半期ベースのデータでも、同様の傾向が見られます。これについては、「現在の利益水準に対して株価が割高」と受け止められるかもしれません。ただ、それ以上に市場(投資家)が「AI戦略によって、将来さらに大きな利益成長を遂げるだろう」という強い期待を寄せていることの表れと判断できます。

3)PBR (株価純資産倍率) の動向

  PBRは、「会社の純粋な資産価値(純資産)に対して、市場が株価を何倍と評価しているか」を示します。1倍なら資産価値と株価が同じ。1倍よりも高くなればなるほど、ブランド力や技術力など「目に見えない価値」が高く評価されていることになります。

 上記の通期データのグラフを見ると、PBRは毎年10倍以上という、極めて高い水準で推移してきたことが分かります。最も高かった2021年(FY24)は14.35倍。一番低い2025年(FY25)でも10.77倍でした。これは市場がマイクロソフト(Microsoft)という会社が、帳簿上の資産価値(データセンターや現金など)をはるかに超える「目に見えない価値」を持っていると評価しているからです。それは同社が保有する「強力なソフトウェア資産」「クラウドの顧客基盤」「AI技術の先進性」などが、今後生み出すだろう「将来の価値」を織り込んでいるのです。

(6)貸借対照表から見る「財務の安定性」

 貸借対照表は「会社の財産(資産)」「借金(負債)」「返済不要の自分のお金(純資産)」のバランスを示した会社の「健康診断書」です。

単位:百万ドル

1)資産の動向

 マイクロソフト(Microsoft)が保有する現金、建物、データセンターなど、財産の総額である総資産(流動資産+固定資産)は、2021年(FY21)の333,779百万ドルから2025年(FY25)には619,003百万ドルへと凄まじい勢いで増加しています。特にデータセンターやサーバーといった固定資産が急増しています。これは、急拡大する生成AIとクラウドの需要に応えるため、その基盤となるインフラへ巨額投資を続けていることを物語っています。

2)負債の動向

 負債とは銀行からの借入金など、将来、返済しなければならない会社の「借金」のことです。マイクロソフト(Microsoft)の負債合計(流動負債+固定負債)は、増加傾向にありますが、資産の伸びに比べると緩やかです。つまり、借金に大きく頼ることなく、自ら稼いだ利益で会社の成長をまかなっていることを示しています。

3)純資産の動向

 純資産は会社の総資産から負債を差し引いたものです。返済する必要が一切ない”真”の「自己資本」と言えます。マイクロソフト(Microsoft)の純資産は、2021年(FY21)の141,988百万ドルから、2025年(FY25)の343,479百万ドルへと、4年間で2.4倍以上になりました。これは稼いだ利益が会社の内部留保となり、財務基盤が強固になっている証拠です。

4)流動比率の動向

 流動比率とは会社の短期的な支払い能力を示す指標です。マイクロソフト(Microsoft)の流動比率(流動資産 ÷ 流動負債)は、2021年(FY21)の208%から、2024年(FY25)の135.34%へと低下傾向にあります。これは現金などの流動資産をデータセンターなどの固定資産へと、積極的に投資をしているからです。それでも一般的に安全とされる100%を、大きく上回る水準を維持しています。つまり、低下傾向にあったとしても、短期的な支払いには、全く懸念のない状態であることに、変わりはないということです。

5)自己資本比率の動向

 自己資本比率は、「長期的な安定性」を判断する指標です。総資産のうち返済不要なお金がどれくらいあるかを示しています。マイクロソフト(Microsoft)の自己資本比率(純資産 ÷ 総資産)は、2021年(FY21)の42.54%から、2025年(FY25)の55.49%へと、一貫して上昇しています。つまり、借金に頼らない経営が可能なレベルで、同社が世界有数の財務安定性を誇る会社であることを証明しています。

(7)キャッシュフロー計算書から見る「事業の健全性」

 最後に会社の「お金の流れ」を示しているキャッシュフローを確認しましょう。

単位:百万ドル

1)営業キャッシュフロー(営業CF)の動向

 2025年(FY25)のマイクロソフト(Microsoft)の営業CFは、年間136,162百万ドルでした。まさに「桁違い」の現金をソフトウェアやクラウド事業などの「本業」で稼ぎ出しています。金額が大きくなればなるほど優秀ということなので、安定的に生み出される営業CFが、同社のあらゆる活動の源泉となっています。

2)投資キャッシュフロー(投資CF)の動向

 マイクロソフト(Microsoft)の投資CFは一貫して大きなマイナスです。その金額は年々拡大しています。特に2024年(FY24)以降、投資額が急増しています。これは生成AIとクラウド事業の拡大を目的に、データセンターへの大規模な投資を急ピッチで行っているからです。将来の成長のために戦略的な支出を実行しています。

3)財務キャッシュフロー(財務CF)の動向

 財務CFも一貫して大きなマイナスです。2025年(FY25)は51,699百万ドルのマイナスでした。これは営業CFの潤沢な現金を使って、大規模な「自己株式の購入」や「株主配当」を行っているからです。これらは株主への利益還元のための代表的な手法です。財務CFの大幅なマイナスは、財務的に非常に優良な会社である証拠です。

 これまでの分析を総合すると、マイクロソフトは単に巨大なだけでなく、極めて高い収益性と盤石の財務基盤を両立させている、世界最高峰の優良企業であることがわかります。

(8)AI時代も「巨人」としての存在感を放つマイクロソフト(Microsoft)

 私はマイクロソフト(Microsoft)の2026年(FY26)1Qの売上高が78,000百万ドルに到達すると予想しました。この成長の牽引役は、疑いようもなく、生成AIとクラウド事業です。市場が急成長しているAI事業への巨額投資は、コスト増という財務的な負担を伴います。しかし、マイクロソフト(Microsoft)は、そうした課題をものともしない圧倒的な収益力(営業利益率45%超)と財務安定性(自己資本比率55%超)を誇っています。「収益性」「成長性」そして「財務の安定性」といった観点から立体的に分析しても、マイクロソフト(Microsoft)は非常に優れた結果となっています。私は本格的に到来するAI時代においても、長期成長が期待できる「巨人」として、マイクロソフト(Microsoft)は存在し続けるだろうと考えています。

 

(本文ここまで)

 
岩田仙吉(いわたせんきち)氏
株式会社タートルズ代表/テクニカルアナリスト
2004年、東京工業大学から一橋大学へ編入学。専門は数理経済学。卒業後、FX会社のシステムトレードプロジェクトのリーダーになり、プラットフォーム開発および自動売買プログラムの開発に従事。その後、金融系ベンチャーの立ち上げに参画。より多くの人に金融のことを知ってほしいと思い金融教育コンテンツの制作に集中するために会社を創業。現在は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法ではなく、初心者でも長く続けられるリスクを抑えた投資手法を研究中。
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