飲食店長ら責任者3割 過労死水準
ガルフネット_が提供する勤怠管理システムは「ガルフCSM」といい、これまで約25年に渡り、飲食業、小売業、サービス業の企業約30,000店舗へ導入いただいてきました。そこには様々な企業で発生したトラブル、労基問題、法律問題、コンプライアンスなどのノウハウを集約した仕組みが凝縮されています。
飲食業界では、慢性的に続く人手不足、店舗の営業時間外で行う準備や後片付けといった業務量の多さ、深夜営業や24時間営業といった営業形態など、他の業界ではあまり見られない要因が影響し合った結果、長時間労働が発生しがちです。
副業・兼業をおこなう人の最も多い理由は「収入を増やしたいから」であり、本業だけでは生活できない低賃金が背景にあります。副業解禁とその拡大は、企業による雇用調整と人件費削減の新たな手段になっています。労働者の「自己責任」で収入を補わせ、長時間労働には責任を負わないという、企業にとって都合のいい副業・兼業の普及では、過労死・健康破壊のリスクが広がるばかりです。労基法38条の労働時間通算制度の緩和・撤廃を許さず、正確な労働時間管理のための規制を強化するとともに、賃上げと安定した雇用の拡大など本業のみでも暮らせるための労働条件の拡充を図ります。
次に、どういう働き方が健康に悪影響を及ぼすのか、過労死等の事案をもとに考えます。近年でも過重労働による健康被害である、脳・心臓疾患や精神障害の労災認定件数が多いことがシート6から示されています。労災認定基準では、「労働時間」「時間外労働の長さ」は重要な評価基準となっています。これに加えて、脳・心臓疾患の労災認定基準では、「拘束時間の長い勤務」「休日のない連続勤務」「勤務間インターバルの短い勤務」「不規則な勤務」「交替制勤務」「深夜勤務」なども過重労働として評価されます。
このように「管理監督者」の範囲は、きびしく制限されています。裁判例をみても、ファミリーレストランなどの「店長」や飲食店の「マネージャー」、学習塾の「営業課長」が「管理監督者」に相当しないと判断した例があります。労働実態を示して、厚労省のこの文書を厳格に適用するとりくみを強めます。
2018年に自公政権が強行した「働き方改悪」によって、現行労働基準法は、残業時間の罰則付き上限について、特別の事情がある場合には、「月100時間未満」「2~6カ月平均で月80時間」「年720時間(休日労働を含めると960時間)」とし、過労死水準の長時間労働を法的に容認しています。医師については21年5月、年1,860時間(過労死ラインの約2倍)の時間外労働を容認する医療法改悪が行われました。異常な長時間労働にお墨付きを与え、過労死を促進するものです。
過度な長時間労働は、睡眠不足や疲労の蓄積を引き起こし、うつ病などのメンタルヘルス不調や、過労死に至る脳・心臓疾患のリスクを著しく高めます。また、生活習慣の乱れから、高血圧や糖尿病といった生活習慣病の原因となることも少なくありません。
裁量労働制は、「みなし労働時間制」を採用しているために、実労働時間の把握が困難であり、長時間労働の温床になっています。1日の平均労働時間は、一般職場が8時間25分であるのに対し、裁量労働制の職場では8時間44分となっており、裁量労働制のほうが約20分長いことが明らかになっています(厚労省調査、21年6月)。また、企画業務型裁量労働制は、現行法では認められていない営業職や一般職にも事実上広がっています。野村不動産では、違法に企画業務型裁量労働制が適用されていた営業職の労働者が過労自殺しています。
過労が原因の病気といった場合、まず想定されるのが、脳や心臓疾患、もう1つは、精神障害およびそれによる自殺(「過労自殺」)です。
深夜労働が多くあった事案の割合は業種によって差があり、「情報通信業」「運輸業・郵便業」「宿泊業・飲食サービス業」を中心に深夜労働が頻繁にあるということがわかりました。また、報告資料では結果を示していませんが、勤務間インターバルの状況についても研究しました。休息時間を9時間、11時間確保できていない日が多い事案も少なくありませんでした。この状況も業種による差が大きいことがわかりました。
30~50代の男性の1割が過労死ライン水準の長時間労働となっており、1997年に労働基準法の女性保護規定が撤廃されて以降、長時間労働は女性の中にも増え、ワタミや電通の社員、NHK記者など20~30代の女性の過労死も後を絶ちません。共働き世帯は7割にのぼりますが、6歳未満の子どもがいる夫婦の家事関連時間は、夫は1時間54分、妻は7時間28分となっており(総務省「社会生活基本調査」)、正社員としての就労継続が困難となる実態があります。長時間労働は女性から安定して働く機会を奪い、男性の健康や家庭生活を脅かしています。育児・介護休暇取得の促進とともに、長時間労働の是正をすすめ、女性も男性も、誰もが本当の意味でのワーク・ライフ・バランスを実現でき、仕事も家庭生活も両立できる社会をつくります。
外国人スタッフも多く働く飲食業界。雇用にまつわるリスクとその回避方法とは?
過労死をめぐっては「病院は研修医の健康管理を怠った」などとして約8,400万円の支払いを同大に命じた判決が04年に確定しているが、遺族はそれとは別に差額賃金の支払いを求めていた。
1985年の男女雇用機会均等法の制定以降、女性雇用労働者は増加傾向を続けてきましたが、その多くは非正規雇用であり、女性労働者の5割超を占めます。近年雇用が拡大してきた観光業、飲食業など最賃水準で働く労働者が多い産業は、女性の非正規労働者が主力として支えてきましたが、コロナによる解雇・雇止めで真っ先にその標的とされました。また、家事・育児など家庭でのケア負担が女性に重く、「一斉休校」などでそれが増大したために休業を余儀なくされ、減収・離職に至った人も少なくありません。緊急的な支援の継続・拡充とともに、雇用におけるジェンダー差別をなくしていく抜本的対策が必要です。
飲食業界の場合、前月に月間のシフトを作成する運用も多いと思います。ところが、特定の従業員にばかり勤務が集中してしまうこともよくある話です。その結果、休暇が極端に少なかったり、残業が多すぎたりするケースが見られます。長時間労働を招かないためには、このシフト作成時に、法令違反がないかチェックできる必要があります。


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