
先週末の海外市場でドル円は、NY時間に限れば154.00円を挟んだ狭いレンジ取引に終始した。米国と日本の金融イベントを通過し、新規材料に乏しく様子見ムードが広がった。ユーロドルはユーロクロスの下落をきっかけにユーロ売り・ドル買いが先行すると、前日の安値1.1547ドルを下抜けて一時1.1522ドルと約3カ月ぶりの安値を更新した。
本日のアジア時間でのドル円も、「高市トレード」の影響が引き続き下値の支えとなるだろう。一方、円安による輸入インフレ高進を懸念した本邦当局の口先介入や、米経済の先行き不安などが上値の重しとなりそうだ。
一部の調査では8割を超える高支持率を確保している高市政権だが、今週は明日から始まる国会での各党の代表質問等が市場を左右しそうだ。中でも市場が注目しているのが、高市首相が掲げる「責任ある積極財政」の「責任」部分。与野党間で合意に向けて進んでいるガソリン減税以外は、期待感は高いものの財源獲得にはハードルが高く、どのような手を打ってくるのかが注目される。
先週31日には城内成長戦略相が、「高市首相は債務残高のGDP比引き下げを検討している」ことを明らかにし、国債の増発も排除しないことが伝わった。「GDP比引き下げ」「国債の増発」が「責任ある」財政となるかの不安要素があるが、これらが進む場合は純債務増加を懸念し、更に円安が進む可能性がある。
しかしながら先週末には、片山財務相が円安けん制と受けとめられる発言をしたことで、これ以上の円安進行は本邦通貨当局から懸念を呈する声が増えてくるだろう。今年の3月のインタビューで同財務相は、円安による輸入インフレを懸念し、ドル円の適正水準は120円程度が望ましいと発言していた。しかし、いざ財務相に就任すると、円安が与える物価上昇の悪影響を失念したようだ。
日米財務相会談後には、米国側から「為替レートの過度な変動を防ぐ上で、健全な金融政策の策定とコミュニケーションが果たす重要な役割を強調した」と、円安の流れを止める絶好のチャンスボールが渡された。それにもかかわらず、片山氏は米国側を気にしすぎたのか、会議の内容を失念したのか定かではないが、為替については議論をしなかったと記者に答えてしまった。
ただ、昨日黒田前日銀総裁がドル円は120円に向かう可能性を示唆したように、識者の中では「米国もドル高による貿易不均衡拡大を懸念」が指摘されている。しかし、円安けん制が先週末程度で終わる場合は、今月には年初来高値の158円後半まで円安が進む可能性もありそうだ。
一方で米国サイドからは、米経済への不安と不満を表す声が徐々に増えてきた。10月下旬の直近のNBCニュースの調査では、トランプ政権によるインフレと生活費に関して、回答者の66%が「裏切られた」とし、また63%が「政権の経済対策が期待外れ」と答えている。経済的にも大きな影響を与える「米国の一部政府機関の閉鎖」が継続されていることもあり、ドルを積極的に買い上げる材料は薄いままだ。
さらに、明日4日にはカリフォルニア州、ニューヨーク州、バージニア州、ニュージャージー州などでは知事選や市長選などが行われる。来年の中間選挙を前に、選挙結果次第ではトランプ政権の経済政策への影響を与えることもありそうだ。
なお、本日の経済指標は豪州から住宅建設許可件数、中国からCaixin製造業購買担当者景気指数(PMI)が発表される。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
市場概況 東京為替見通し国債増発の可能性あり円安継続か 明日からの国会に要注目
続きまして、足もとの課題。これはやや財政総論につながる話でございます。16ページ。一つ目、金利ということで、足もと、御案内のとおり、10年債、40年債の国債利回りは、過去のいわゆるゼロ金利のところから比べますと非常に大きくぶれております。トランプ大統領の関税によりまして株式市場が下がったことによりまして、一時的に国債市場にお金が流れ込みましたので、アービトラージ、少し下がりましたが、本日も1.35%まで来ております。それから、30年債、出ておりませんが、これも過去最高の金利になっているということで、足もと、いろいろな要素がございますが、金利がどんどん上がっていく状況になっております。
14ページ、今度は経済を見てみます。都道府県別の言わばGDPを見てみますと、左側のスタティックなものでは、当然東京、それから、大阪、愛知、三大都市圏が多くなっておりますが、右側、2011年から2019年の増加率を見てみますと、必ずしも三大都市圏が多いというわけではありません。実は右下に増減のランキングがございます。かつ、その伸びの貢献度を御覧いただきますと、製造業が多い県も結構ございます。したがいまして、東京は情報通信が多いのですが、都道府県別に、何が経済活性化の鍵になるかをしっかり分析することも必要ということで、本日は総論でございますが、今後、各論をやる際にはそうした前提も考えながら、政策提案、提言していければと思っております。
36ページ。左側、ドイツが債務ブレーキというのを改正いたしました。これは安全保障上の懸念等で、自国の国防費をしっかり担保するということなのですが、発表した翌日に金利は上がりました。もちろん政策のプライオリティーはありますが、それと市場の見方というのはまた別であるということでございます。
続きまして、26ページ。イギリスでございます。トラスショックが約2年前に起きました。財源の裏打ちのない経済政策を出したところで市場が混乱いたしまして、3日間で金利が1%上がるという状況になりました。そうした混乱の結果を受けて、トラス首相は45日で退陣ということでございますが、実は足もとの金利もトラスショックを超える水準まで上がっております。これは昨年の秋に新しい労働党政権が、同じように借金に依存するような経済政策を打ち出したことによるものでございます。ここまでが、金利関係でございます。


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