若者の車離れ 都市部と地方二極化
都市部の若者を中心に「クルマが生活に欠かせない」という状況が薄れたことで、若者がクルマを購入することに関心を持たなくなったといえるのではないでしょうか。
若者が「それでも乗りたい」と願うとき、最大の壁は購入コストである。新車価格は近年上昇を続け、軽自動車でも200万円を超える時代となった。スポーツカーや輸入車など憧れの一台は、若者の収入水準では新車購入は現実的でない。しかし彼らは諦めず、中古市場に活路を見いだしている。 中古市場は新車市場の縮図であると同時に、需要や時間の経過で価格が大きく変動する。例えば2010年代の国産スポーツカーは一時期値下がりし、若者でも比較的安価に入手できた。輸入車もモデルチェンジや人気の移り変わりで価格が下落し、憧れのブランドカーが現実的な選択肢になる。こうした相場の波を捉え、情報収集と判断力で夢を叶える若者も少なくない。 さらに、ローンや残価設定クレジットなどの金融商品が選択肢を広げている。残価設定は総額で割高になる場合もあるが、月々の負担を軽くし、若者にとって「手が届く現実」となる。こうした仕組みを理解し、計画的に活用することが、実際の購入行動に直結している。また、家族や友人からのアドバイス、SNSでの経験談の参照も、金融商品を活用する際の判断を後押ししている。 維持費についても工夫は欠かせない。任意保険は年齢や使用状況に応じて見直す。車検や整備の一部をDIYで行い、仲間とパーツや知識を共有する。こうした取り組みは、コストを抑えるだけでなく、所有する楽しみやコミュニティーとのつながりを強める役割も果たしている。若者たちは、限られた予算のなかで最大の満足を得るために、工夫と情報収集を日常的に行っているのである。
このことは、「カーシェアリングサービスを利用して良かった点」を尋ねた質問(複数回答)の結果でも示唆されています。1位は「予約・返却が手軽」(45.9%)とカーシェアリングそのものの利便性への評価になりましたが、1位に匹敵する支持を得た2位には「行動範囲が広がった」(45.1%)とクルマの有用性そのものを評価する声が。また別の質問でも、カーシェアリングを利用している人の約75%が「以前より行動範囲が(大きく/やや)広がった」と回答しているほか、約65%は「生活の質(QOL)が(大きく/やや)向上した」とも回答しており、カーシェアリングを利用した若者層がクルマの利便性やクルマのある生活の豊かさを体験していることが示唆されています。
若者のクルマ離れには様々な要因が挙げられますが、ひとつは経済面での課題です。給与所得の中央値はここ10年ほどでほとんど変わりませんが、一方でクルマの価格やガソリンなどの維持費は上昇を続け、若者の所得ではクルマを購入し、維持するのが困難になってきたという要因が考えられます。そしてもうひとつは都市部への人口集中とライフスタイルの多様化です。都市部は公共交通や生活インフラが充実しているためクルマを所有しなくても移動や生活には困らず、また余暇の楽しみ方の選択肢も多いためクルマでレジャーを楽しむということへの興味関心が希薄になってきたとも言われています。
近年、「若者のクルマ離れ」という言葉が繰り返し使われてきた。しかし、この表現が実態を正確に捉えているかには疑問が残る。ソニー損保の「2025年 20歳のカーライフ意識調査」によれば、20歳の免許保有率は53.5%と2年連続で低下している。 【画像】「えぇぇぇぇ!」 これがアルファードの「買取り相場」です!(6枚) かつてのように「社会人になったらクルマを持つのが当たり前」という時代ではなくなったことは確かだ。しかし、それをもって若者がクルマに興味を失ったと結論づけるのは短絡的である。現在の状況は「クルマ離れ」ではなく「クルマへの二極化」 が進んでいると解釈する方が妥当である。 都市部を中心に、公共交通の利便性から自動車の必要性を感じない層や、金銭的負担から所有を回避する層は確かに存在する。こうした層の多くは、通学や通勤の利便性、駐車スペースの制約、維持費の負担などを理由にクルマを持たない選択をしている。一方で地方や郊外に住む若者のなかには、生活環境上クルマが不可欠である場合もあり、所有意欲が高くなる傾向もある。 しかし、その反対側には、厳しい経済環境のなかでも「どうしてもクルマを持ちたい」と願い、工夫と情熱で実現している若者も少なくない。中古車市場を巧みに活用し、ローンや残価設定クレジットを駆使する。SNSやコミュニティーで所有の楽しさを広げる姿は、逆境の中で文化を育む力ともいえる。こうした層は、地域や世代を超えた仲間とつながりながら、自らのカーライフを主体的に作り上げている。 また、クルマを持つか持たないかの判断には・家族や友人の影響 ・幼少期の体験 ・周囲の価値観 も深く関わっている。親や兄弟のクルマとの関わり方、学生時代の友人関係や遊び方によって、所有意欲や興味の度合いが形成されることも少なくない。このように「興味の有無」 といった単純な基準ではなく、多面的な背景が若者の二極化を生んでいるのである。
この結果は、「都市部での生活にクルマは不要だが、レジャーを楽しむためにはクルマを活用したい」という若者たちの意向を示唆しており、クルマの有用性やその楽しさを体験している若者層が一定数存在していることを意味しているのではないでしょうか。
諸説ありますが、若者のクルマ離れが顕在化したのは2000年代に入ってからと言われています。警察庁がまとめた「運転免許統計」と総務省がまとめた「人口統計」をもとに算出すると、2000年には約91%あった20代の運転免許保有率は、2023年には約79%まで低下。かつては運転免許を身分証明書として活用するいわゆる「ペーパードライバー」もいましたが、最近ではマイナンバーカードの普及もあり運転免許保有率は下がり続けています。
これまで、自動車業界は「どうすれば若者が再びクルマに関心を持ってくれるか」を大きな課題としてきました。こうしたなか下北沢自動車学校が行ったアンケート調査は、この課題解決に新しい示唆を示しています。
調査結果からも、カーシェアリングサービスが「日常生活の中で手軽にクルマを活用できる」という利点を活かして、若年層に「クルマのある生活」「カーライフの楽しさ」に対する関心を喚起することに大きく貢献していることが見えてきました。ここからさらに若者のクルマ離れという課題を解決していくためには「クルマのある生活って楽しい」という体験をする人たちをさらに拡大させていくこと、そしてその中から「いつかは自分の好きなクルマに乗りたい」というマイカーへの憧れを生み出していくことが大切なのではないでしょうか。現在は若年層である10代〜20代の人たちが、歳を重ねて家庭を持ち家族が増えてクルマの必要性や感じたときに、カーシェアリングで感じたクルマ移動の利便性や楽しさからクルマの購入に興味を持ってくれるか。今後の動向に注目したいところです。


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