病院苦境 全国で約7割赤字の理由
2024年度の病院建設費は、平米単価442,000円、1人当たり25,656,000円で過去最高。
病院危機の背景には、出費が人件費上昇や物価高騰などで急増しているのに対し、主な収入である診療報酬が追いついてないことがあります。診療報酬は国が決めるため、例えば物価高騰分を自分たちで価格転嫁などできません。結果、増収減益が加速する状況になっています。
千葉県病院局 2024年度は57億8,000万円の純損失を計上し、11年連続赤字。過去最大規模の赤字額で、経営改善の道筋を見出せない厳しい状況にあります。
2024年度の診療報酬改定は「本体+0.88%」と発表されました。診療報酬とは、病院や診療所が診療を行ったときに国から受け取れる「医療の値段」のことです。つまり、「病院が受け取れる収入が0.88%増える」という意味に見えます。
帝国データバンクが発表した今年上半期の「医療機関の倒産動向調査」によると、1~6月の医療機関の倒産は35件。過去最多となった昨年(1年で64件)の上半期分34件を上回りました。内訳は、病院9件、診療所12件、歯科医院14件で、病院と歯科医院が過去最多に並ぶ水準で推移しています。
全国の赤字病院を見ていくと、地域ごとに事情は異なるものの、共通して次の要因が浮かび上がります。
調査は全国81の大学病院本院を対象に実施し、9月30日に結果を発表した。
本日は1.医療機関の経営危機の現状について、2.なぜ経営危機が生じたのか、3.どうしたらいいのか、4.県民の皆様へのお願い、という4点で説明をさせていただく。1.医療機関の経営危機の現状今年の報道による病院経営危機の状況をお示しする。m3.comの報道によると、2024年度の医業収益の見込みは、日赤(全国で91病院)は457億円の赤字、済生会病院(同81病院)は216億円の赤字、JA厚生連(同100病院)は149億円の赤字である。NHKの報道によると、築40年以上の病院数は、調査した6,000余りの病院の27%で、そのうち半数以上の834病院は救急病院である。経営状態が悪くて建て替えられない。今年の医療機関の倒産件数も過去最多ペースと報道されている。さらに、国立大学病院も285億円の赤字、JCHOも赤字削減に取り組んだが59億円の赤字、国立病院機構(140病院)も375億円の赤字、労災病院(29病院)も114億円の赤字となっている。今の診療報酬体系では、普通に医療を提供していても医療が成り立たないことをよく示している。この状態が続けば、地域の病院がいつ閉鎖に追い込まれても不思議ではない。厚生労働省が出している、病院・診療所の経営利益率を示した表をみると、令和5年度は病院も無床診療所も有床診療所も最頻値はわずかにプラスで、0から1%となっている。令和6年度は推定値だが、病院も無床診療所も有床診療所も利益率の最頻値は全てマイナスになっている。したがって、設備投資ができない状態になっていることがご理解いただけると思う。ここまでは全国の状況だが、山口県内の状況はどうか。本年の6月27日から8月12日までのアンケート調査で得た、山口県内の医療機関の状況を説明する。令和5年から7年の4月から6月までの収支をみると、200床以上の病院では3年間で収入はわずかに増えているが、支出も増えており、6月はボーナス月のために1億円前後の赤字になっている。ボーナス月以外の月で黒字にしておかなければならないが、令和6年4月は単月でも赤字になっており、年間を通してみると大きな赤字となる。200床未満の病院でも、6月の収支差が年を追うごとに悪化しているのがわかった。無床診療所では、令和6年と7年の4月で赤字になっており、収入はどの月も減っている。こういう状況では、人を雇ったり、設備投資したりすることができない。経営の状況感(景況感)は、どの規模の施設でも悪いと感じており、200床以上では69%、200床未満では80%、無床診療所では76%が「悪い」又は「やや悪い」を選択した。3年前と比較し、経営が「悪化した」又は「やや悪くなった」と回答したのは、200床以上では82%、200床未満では76%、無床診療所では83%であった。高齢の開業医も増えてきているので、このような状況では事業を承継する医師も現れないのではないかと危惧される。2.なぜ経営危機が生じたのかなぜ、医療機関の経営危機が生じたのか。まず、診療報酬が十分でない点が挙げられる。善意で成り立っている部分が、十分に評価されていないと感じる。丁寧に時間をかけた説明は評価されない。診療材料で患者さんのために良いものを使っても評価されない。また、評価が低すぎることが多々ある。診療報酬は公定価格なので、物価賃金上昇に対応できていない。その結果、治療薬や材料費、委託費などが上がっても勝手に上げることができず、赤字になってしまう。医療本体は統制経済だが、周辺は資本主義の原理で動いているので、製薬メーカーや医療機器メーカーも赤字になってまでも薬剤や医療機器を納入するはずはなく、現場は患者さんのためになることを選択して赤字になる。令和5年5月まではコロナの補助金があり、医療本体の赤字は見えてこなかったが、補助金が無くなり、赤字が顕在化した。人口減少局面なので、患者数が減っても病床数や職員の削減はすぐにはできない。高額な医療を提供している急性期病院ほど消費税の負担は重くのしかかる。診療報酬に関しては、2014年に外保連(外科系学会社会保険委員会連合)が論文として出しており、実際に掛かった経費の係数が0.3784となっており、実際の診療報酬は4割程度しか認められていないことになる。実際に心臓マッサージを約30分行っても、診療報酬は2,500円である。また、胃腸炎を例にとると初診料は日本では2,910円だがイギリスでは12,200円、ドイツでは37,000円と、5倍から13倍の差がある。橈骨遠位端の骨折の治療でもバンコクよりも日本の方が安い状況である。それから、腹腔鏡下胆嚢摘出術の診療報酬の推移を見ると、2000年は224,000円、2008年は203,000円に落ちて、2024年に少し上がって215,000円となっている。古いデータでは、アメリカと比較した場合、日本だと治療費全体で63万円程度だが、アメリカだと150万円で2.5倍程度の差が生じていた。今では、恐らく5倍以上の差があるのではないかと思う。診療報酬が実際と乖離しており、ロボット手術はほとんど赤字である。前立腺癌の治療に関しては100例程度の手術数があれば黒字化は可能だが、他の手術は病院の持ち出しになっている。また、電子カルテの導入は医療機関の規模によって違うが、300床規模の病院でも10億近くかかる。縫合糸などは保険請求できないが、以前は皮下の縫合と皮膚縫合に絹糸を使っていたが、今はほとんどの施設で吸収糸を使っている。絹糸と吸収糸では4倍程度の価格差があるが、すべて病院の持ち出しである。医療者としては、患者さんに良いものを使おうとしているが、診療報酬上は全く評価されない。なお、これにより、縫合糸膿瘍という合併症がほとんどなくなった。また、超音波凝固切開装置という便利な機械があるが、診療報酬は3万円だが定価は8~10万円で、持ち出しになっている。保険請求で請求できないようなディスポ製品もたくさんある。それを再生利用しようという動きもあるが、調べてみると病院にとって持ち出しになることがあるので、再生利用できない状況である。また、医薬品もほとんど利益になっておらず、在庫管理も考えるとほとんど赤字になっている。それから、消費税の問題がある。古いデータでは、消費税が10%の時でみると、控除対象外消費税の負担は5%程度だったが、今は物価も上昇しているため、恐らく6%程度に上がっているのではないかと思っている。医療は非課税扱いなので軽減税率は全く適用されていないが、イギリスやスウェーデンでは、医薬品にかかる消費税は0になっており、軽減税率を導入している諸外国も多くある。日本でも軽減税率を医療に導入した方が良いのではないかと思っている。3.どうしたらいいかこれは私の考えであるが、医療の財源を確保することが必須である。医療を継続していくためには、冒頭に示したように財源を確保しないと経営が成り立たないので、経済成長を促して、保険収入を増やすのが一番の方法だと思うが、昔のように高成長率は望めないので、診療報酬を上げて、応能負担を徹底するのが現実的な話ではないかと思う。それから、高額な医薬品や機器には軽減税率を導入する。そして、必要な病院や診療所の建て替えには、公費を導入する。こういったことが考えられる。4.県民の皆様へお願い県民の皆様へのお願いである。医療費が高額にならないように、がん検診や特定健診を受けて、早期発見・早期治療につなげていただきたい。そのためには、かかりつけ医を持っていただきたい。また、時間外診療になるとその分高額になり、また、病院によっては専門外の患者さんを当直医が診なければならない場合もある。また、検査技師や放射線技師が必ずしも揃っているわけではないので、なるべく夜間の診療よりも日勤帯での診療をお願いいたしたい。わが国の医療を持続可能にするために、ぜひご協力をお願いしたい。
補助金依存からの転落 コロナ期に黒字化していた病院が、補助金終了で一気に赤字へ。
人材の維持・確保も深刻な問題です。国立大学病院は地域医療のほかに教育や地域への人材派遣、研究などの役割も大きいですが、もしつぶれれば地域医療の基盤が崩れます。また医師の待遇は大学付属ではない国立病院に比べても低く、例えば教授や准教授では年収で500万円ほどの差があります。普通の医師としてではなく大学教員の給与体系だからです。塩崎事務局長は「民間から戻ってくると収入が大幅に減ったりします。給料が安くても、次世代医療のための研究や最新医療を学ぶために頑張っていらっしゃいますが、ある程度の環境や待遇を維持しなければ、人材も離れていきます。さまざまな点で限界。一時的な形でも緊急に支援が必要です」と訴えています。
結果として、総務省統計が示す通り2024年度には自治体病院の86%が経常赤字、95%が医業赤字となり、全国的に「赤字常態化」が確認されました。
物価高が続く中、追い付いていない「賃上げ」。病院の苦境については、5日の国会でも…。
そこから医療機械の購入費用、光熱費、人件費などを引いた分が病院の利益ですが、いずれも増加し、物価高騰を賄えるものではないとしています。
本調査は、日本標準産業分類の「病院」「一般診療所」から、負債1000万円以上の倒産を集計・分析したもの(歯科医院を除く)。
北海道立病院群 長年赤字経営が続いており、2023年度も数十億円規模の赤字。広大な地域をカバーするために人件費や医療搬送費がかさみ、人口減少で患者数が減る一方でコストは下がらない構造に直面しています。


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