ドル円155円台 円安進行の背景は
米国と日本の国債の利回り差と、米ドル円相場には密接な関係があり、その差の拡大が米ドル高圧力となっています。このような、米ドル高が進みやすいファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の下で、米ドル売り・円買い介入を行ったとしても、為替の趨勢を反転させることは難しいとみられているのかもしれません。
前回、2022年の日本政府当局による米ドル売り・円買いの為替介入は、9月22日に1米ドル=145円台後半で介入が実施され、同140円台まで円高が進みました。その後、円安が再び進む中で、10月21日に同152円近くへと円安が進む中で、米ドル売り・円買いの為替介入が行われました。
2024年4月16日現在の米ドル円相場は、2022年の為替介入時点よりも円安が進んでいますが、未だに為替介入は実施されていません。米国では堅調な経済を背景に、利下げ時期の先送り観測から金利が上昇しています。
ドル円の予想ボラティリティを確認してみると、2022年の秋に為替介入が実施された際、期間1週間で17%~19%台、1カ月で14%~15%でしたが(図表2)、直近では1週間で12%台、1カ月で9%台となっています。期間1週間のボラティリティが上昇しており、やや注意が必要ですが、政府・日銀が為替介入の判断をするにあたっては、まだいくらか余裕を持って相場を注視できると推測されます。
円安が続いている。
円安に大きく振れれば、政府が為替介入を実施する可能性が高まる。他方、円高に振れても、政府が為替介入に踏み切る可能性があるだろう。市場で円安の流れが強い際に、為替介入でそれに立ち向かうよりも、円高に一時的に振れる局面を捉えて「円の押し上げ介入」に踏み切る方が、円高方向に市場を大きく動かすことができるケースも少なくない。
足元の主要企業の決算を見る限り、円安は日立製作所や村田製作所、JTなど日本を代表するグローバル企業の収益にプラスの影響を与えていることは確かだ。しかし、BofA証券の圷正嗣日本株チーフ・ストラテジストはこれ以上円安が進むと、日銀の利上げが前倒しになる可能性も意識され始めると指摘。株式市場にとって円安が与えるポジティブな度合いは薄れていくだろうと予測している。
13日午前の東京市場でドル・円は一時155円台に浮上したが、その後は154円後半に失速した。心理的節目付近に値を切り上げ、日本政府の円安牽制を意識した円買いが重石となった。また、日経平均株価はプラスに転換も上げ幅を縮小し、円売りは後退。
為替市場では円安ドル高が進行しています。
また、日銀の政策決定の前に伝わった、FRBの金融政策をめぐる動向も円安材料となっていた。FRBは29日までの連邦公開市場委員会(FOMC)で2会合連続となる利下げを決め、政策金利を3.75-4.00%に設定。しかしパウエル氏は29日の記者会見で、12月の利下げについては「既定路線とは程遠い」と述べ、12月利下げを確実視していた金融市場の期待に冷や水をかけた。ブルームバーグによると、30日の金融市場では12月FOMC後の政策金利の水準は3.701%と見込まれ、利下げ確率は71%まで下がっている。
先週の米ドル/円は、153円台を中心とした一進一退の展開に。とはいえ10月以降の「ドル高・円安」という流れそのものは継続しています。マネックス証券チーフFXコンサルタント・吉田恒氏は、こうした一連の流れについて、金融政策発表によって拡大した日米の金利差だけでは説明がつかない水準にあるといいます。そこで本記事では、円安・株高である“高市相場”の今後を予想するために役立つ判断材料と今週の予想レンジについてみていきましょう。
円安はグローバル企業の海外収益を押し上げるほか、外国人旅行客が日本を訪れやすくなり、インバウンド消費の増加を通じて国内景気や株価にプラスの影響を及ぼす傾向がある。一方、原材料や燃料など輸入コストの上昇を招き、消費や内需企業の収益にはマイナス要因となりがちだ。
TOPIXの相対的なパフォーマンス悪化の理由として市場で挙げられているのが政府・日本銀行による為替介入のリスクだ。日本の通貨当局は昨年4月末から7月中旬にかけ、4回にわたり円買い・ドル売り介入を実施。7月上旬に円は1986年以来の安値となる161円95銭を付けた後、9月には139円台まで急反発した経緯がある。
ピクテ・ジャパンの糸島孝俊ストラテジストは「円安が進み過ぎると、政府・日銀が対応を迫られる局面になってくる」と指摘。155円を超す円安は株式市場にとっても重しとなりかねず、「副作用が大きいことは積極財政派の高市早苗首相も認識しているのではないか」と述べた。
円相場は10月30日に対ドルで約9カ月ぶりの安値となる154円台を付けた。今後155円を超えさらに円安が進む場合、為替が似た値動きを見せた昨年4月の経験則に照らし、日本株の上値抑制要因になると警戒されている。昨年のケースでは、155円を抜ける前の東証株価指数(TOPIX、円建て)は米S&P500種株価指数の成績を上回っていたものの、突破以降は下回るようになった。


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