
AI関連ハイテク株にインフレ懸念…翻弄されるS&P500
ここまで米国株の上昇を牽引してきた大手ハイテク株には、利益確定とみられる売りが集中し、11月13日にS&P 500は約1.7%急落しました。また、米連邦準備理事会(FRB)による利下げ期待が後退したこともあり、高金利の長期化が企業収益を圧迫するとの見方から、株価は上値の重い展開となっています。先行き不透明な現状について、テクニカル分析の視点から読み解きます。
米国SP500 日足チャート

外為どっとコムの「CFDネクスト」米国SP500 日足チャート
現在の状況
米国SP500は10月29日に史上最高値の6,910付近を記録後、利益確定売りを背景に調整入りしています。11月14日時点では6,690前後で推移し、10日移動平均線(SMA10)を下回る展開が続いています。RSI(9日)は35前後で、50を回復できておらず上昇のちからは限定的です。短期的には「戻り売りが入りやすい」局面と判断されます。
テクニカル分析で米国SP500を評価
価格はSMA10を下回り、SMA10も下向き気味で短期トレンドは弱含みです。今後はRSIが50を回復できるかが強弱の分岐点となります。ローソク足では上ヒゲがあることから、戻り局面での売り圧力が確認できる一方、下ヒゲも散見されるため押し目では一定の買い意欲が残る上値重いレンジ基調の印象です。
来週の想定レンジと重要水準
基本想定レンジ:6,650~6,810
上値抵抗ゾーン
- 6,770~6,820:SMA10近辺。終値で明確に上抜けるまでは戻り売り優勢。
- 6,880~6,900:直近の戻り高値圏。上抜け・定着なら高値更新再挑戦を視野。
下値支持ゾーン
- 6,700:心理的節目。終値での維持に注目。
- 6,660:直近の下値目途。割れで押し目買い後退に。
- 6,620~6,590:次のサポートゾーン。到達時は自律反発の入りやすさに留意。
シナリオ別の展開
① 基本シナリオ:レンジ継続 — 6,650~6,810での揉み合い。SMA10が上値抵抗として機能し、RSIは35~45で推移を想定。明確な方向感が出るまでは抵抗・支持を意識した逆張り戦略が有効か。
② 上振れシナリオ:反発再開 — 条件:終値でSMA10上抜けかつRSI9が50超え。目標:6,880~6,900の戻り高値を試すか。終値で上抜け・定着なら6,940方向への上値余地。
③ 下振れシナリオ:調整継続 — 条件:6,700を明確に割り込む。展開:6,660までの下落を確認、割れの場合は6,620~6,590が次の下値目標。RSIがさらに低下する局面では短期のリバウンド入りに注意し、突っ込み売りは避ける。
チャート分析 まとめ
来週は「SMA10が上値の壁、6,700が心理的な下値の支え」という構図で、6,650~6,810のレンジ推移が基本シナリオです。反発継続の鍵は「SMA10回復とRSI50超えの同時達成」。達成できない場合は6,660の再トライで6,620方向への調整圧力が強まる可能性があります。
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■対象銘柄およびスプレッド
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補足:テクニカル指標の解説
10日移動平均線(SMA10):過去10営業日の終値平均で、短期トレンドの方向性を示します。価格がこの線より上にあれば上昇トレンド、下にあれば下降トレンドの可能性が高まります。
RSI(相対力指数):過去9日間の値動きから買われ過ぎ・売られ過ぎを判断する指標です。一般的に70以上で買われ過ぎ、30以下で売られ過ぎと判断されます。50を境に強気・弱気が分かれます。
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SampP500 どうなるAI関連ハイテク株 インフレ懸念に翻弄される
これに政策面での下支えも加わる。インフレが鎮まっていないのに雇用がわずかに鈍化したからといって政策金利を引き下げる中央銀行、ことあるごとに財政支援策を打ち出す政府だ。
圧倒的な参入障壁を持ち、かつ、これら3拍子が揃ったビジネスはインターネットビジネスを除いてそれほど多くはありません。例えば、この3つの基準で世の中の様々なビジネスをみていくと、高い資本収益性を持っていても、限界利益率が低いビジネスは沢山ありますし、高い資本収益性・限界利益率を持っていても成長性が低いビジネスもあり得ます。前者は小売・流通業や卸売業のように変動費比率の高いビジネス(例としてCostco社(米国))、後者でいえば2000年代のMicrosoft社(米国)のような成熟化したソフトウェアビジネスに起きうる状況です。
2022年10月に新型コロナウイルスの水際対策が緩和されたことによって、訪日客数が回復傾向にあることも好材料です。年間訪日客がおよそ3,000万人を超えた2019年の訪日客一人当たりの平均支出額は約16万円程度でした。当時のインバウンド関連経済効果が日本のGDP全体の1%弱に相当したことを考えると、今後の観光業および関連業界の復活が景気に与えるプラス影響は小さくないと考えます。さらに、過去3年で円安が進んだことにより日本の物価が海外に比べて相対的に安くなったことを受けて、訪日客がこれまで以上に支出を増やせば日本の経済成長にとってさらにプラスになると考えます。
またコロナ禍での巣ごもり消費には「行き過ぎた」部分があり、経済再開に伴いそこが剥落したことも挙げられます。ソニーグループのゲーム事業や、シマノの自転車部品事業、メルカリのオンラインフリマ事業などは、コロナ禍をきっかけに製品やサービスの良さや利便性に消費者が気づき、それが生活様式の一部として定着したと思われます。しかし当期は一旦反動減に見舞われていると判断します。 なお、メルカリについては、国内の盤石な収益基盤から生み出されるキャッシュフローを米国事業の育成にまわすことで「意図した赤字」を継続してきましたが、昨今の金利上昇環境下では株式市場から厳しい評価を受けておりました。加えて、当ファンドが継続して行っている会社取材および調査では、米国における同社フリマ事業の成功確率が必ずしも上がっていないことが判明しており、また、国内事業の成長性がやや低下している可能性を示すデータも散見されたため、組入比率を引き下げています。
国債市場では、先日発表されたPCE価格指数の影響を受けて、利回りが低下しました。30年債は0.77%、10年債は0.91%の下落を見せています。これは、市場が引き続き高インフレ率に警戒感を持ち、金融緩和の見通しを後退させていることを反映しています。投資家は、長期にわたる利下げの可能性を織り込み始めており、これが国債利回りに影響を与えています。
2024年3月に日銀はおよそ17年ぶりの利上げに踏み切りました。昨年来、一般的に金利が上がる国の通貨は海外通貨に対して上昇するため、巷では「日銀が利上げをすれば円高になる」と言われていましたが、実際はそうなりませんでした。むしろ、当月末時点では円安になっています。 為替レートというのは、円の価値が「1ドルあたり何円」、「1ユーロあたり何円」と表示されるように、一国の通貨の価値は他国通貨との相対で表示されます。このため、日本円も国内外様々な要因を反映して外国為替市場で取引されています。そのなかでも現在重要なファクターは日本の「実質金利」と「国際収支」ではないでしょうか。 すなわち、1)日本の円金利は利上げによって名目上プラスに転じたとはいえ実質的には未だマイナスであるため、より高金利の海外通貨が選好されやすいこと、2)過去20~30年で日本の輸出産業構造が変わったことで、貿易面における円買い需要が縮小していることが挙げられます。 要因1)の実質金利とは、名目金利から期待インフレ率を差し引いた金利と定義されます。 例えば、現在の日本の物価連動国債(10年債)から計算されるインフレ予想は約1.42%、10年国債の利回りは約0.87%なので、実質金利はおよそマイナス0.55%です。また、より短期の金利と足元のインフレ率を比べると実質金利のマイナス幅はさらに大きくなります。一般消費者の生活や企業の事業投資の意思決定にとって重要なのは名目金利ではなく実質金利です。名目金利がプラスでも実質金利がマイナスであるということは、銀行預金で利息がもらえたとしても、インフレでモノの値段が上がっているため購買力は下がっています。あるいは実質金利マイナスの状況で借入をすれば、そうでない場合よりも借り手にとって有利となります。 日本の実質金利は、3月の利上げが極めて小幅であったため、マイナス状態のまま変わっていません。これに対して、米ドルの実質金利(10年米国債約4.7%、物価連動債約2.3%)はプラス2%強です。米ドルと日本円の金利差は開いたままであり、円を売ってドルを買う、あるいは円を調達してドル資産に投資をするインセンティブが働きやすい環境が続いています。2022年頃から世界各国の中央銀行がインフレを抑えるべく利上げを開始してから、多くの通貨の実質金利がプラスに転じるなか、日本は数少ない実質金利がマイナスの国です。これをグローバルの視点でみると、日本円は敬遠するべき通貨となります。もしくは日本円で借入をして、より金利の高い通貨の資産に投資したほうがよいということなります。 要因2)は貿易面における日本円需給の変化です。輸出大国であった日本は国際収支統計上の「経常収支」のなかの「貿易収支」が大幅な黒字だったため、長らく経常黒字国でした。そのため、昔は国内輸出企業が輸出対価として受けとったドルを円へ交換することが恒常的な円買い需要となっていました。他国通貨との金利差いかんに関わらず輸出で稼いだ外貨を円に交換したい企業がたくさんいたことになります。 ところが、2023年も日本の経常収支は21.4兆円の黒字であったものの、その内訳は過去20年で大きく変化しました。日本企業が国内からの輸出でなく、海外に工場を持つようになり、直接現地で生産・販売をするようになりました。いわゆる「製造業の空洞化」現象です。こうなると海外で稼いだ利益は日本に送金されることなく現地で再投資されるケースが多くなり、昔のような円への交換ニーズは発生しません。この海外から得られる「儲け」は配当などのかたちで経常収支上は「第一次所得収支」(同年34.9兆円の黒字)に計上されますが、おカネの流れとしては日本に還流されないケースが多いのです。また残念なことに電機産業などでは韓国や中国企業に市場シェアを奪われたことで輸出が伸び悩み、獲得外貨が減ったことも貿易黒字の縮小要因でしょう(同6.5兆円の赤字)。 一方で、日本では「サービス収支(経常収支項目)」が赤字基調(同年2.9兆円の赤字)にあります。これは産業構造のソフト化が進み、知的財産権等使用料などの重要性が増していることと関係しています。日本は国際的にモノづくりに長けている企業は多い反面、ソフトウェアや知的財産など無形固定資産をグローバル展開して外貨を稼ぐ企業は少ないので、海外企業にお金を払って利用しているのが実態です。つまり円を売って外貨を買っているのです。 もうひとつ無視できない円売り要因は2024年1月より非課税投資枠が大幅に拡大された少額投資非課税制度(新NISA)です。新制度のもとで個人投資家による海外株式、海外債券(投信を含む)などの投資額が無視できない規模になりつつあります。いわゆるオルカン投信などを中心に2024年1~3月累計で2兆円以上の買い付けが行われているため、勢いが落ちなければ年換算で10兆円近い円が海外に流出する可能性があります。これは国際収支統計上の「金融収支」に計上されています。日本の家計金融資産は2,000兆円を超えていますが、大半が利息は無いに等しい国内銀行預金です。ほんの僅か海外投資に回るだけでも円の需給に与えるインパクトは大きくなると考えます。Stealth capital flight(capital flight:資本がある国から別の国に逃避すること)とも言えるかもしれません。 逆に今の日本で円を買いたい人がいるとすれば、それは訪日外国人です。訪日外国人が増え、一人当たりの消費金額が増えると円買い要因が増えることになります(「サービス収支」に計上)。日本は観光資源が豊富であるうえに、円安も手伝ってドルベースでみた(=外国人からみた)ホテル宿泊料、サービス価格、飲食代、お土産代などが非常に割安です。また同じような理由で海外半導体メーカーが昨今日本で進めている工場建設(TSMC社(台湾)の熊本工場など)も、日本の地政学的リスクが低く、優秀な人材が豊富であることに加え、円安によって彼らからみた投資コストが明らかに割安になっていることが背景にあります。
2023年3月に東証より「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」が発表され、株価が純資産価値1倍を下回っている企業の是正に関する取り組みが話題になってから1年以上が経ちました。この発表には、上場企業に企業価値を高める努力をしてもらうことで株価を持続的に上昇させ、日本株式市場の魅力を向上させていくという狙いがあります。特に東証は企業が株主資本コストをしっかりと意識した経営をすればこれらを達成できると訴えています。 もともと本取り組みは、株価が純資産価値を割れている(PBR(株価純資産倍率)1倍を下回っている)上場企業の割合がおよそ5割にものぼっていたことを問題視し、改善策を開示・実行するよう要請したのが始まりでした。そのため、あたかも株価が長期低迷している企業だけが対象のようにみえますが、実際は東証の意図は違うところにあります。当ファンドでは、昨年11月に当ファンド組入銘柄でもある東証運営企業の日本取引所グループにお話しを伺いました。そこで議論となったのは「PBR1倍割れの企業だけでなく、1倍超えの企業にも株式資本コストを意識した経営を根付かせるためにどうするかが今後の課題である」というものでした。これはまさに当ファンドも問題視している点です。PBR1倍を超える企業の多くは資本収益性(=ROE(株主資本利益率))が資本コストを上回る優良企業です。しかし日本企業のなかにはいわゆる優良企業でありながら、最適な資本配分ができていない企業が散見されます。現状のままでも「資本コストを上回っているのだから、それでいいじゃないか」という反論がありそうですが、実はこのような日本企業には悩ましい問題が潜んでいるのです。 当ファンド組入銘柄のキーエンスを例に見てみましょう。同社は営業利益率、過去成長率、資本収益性、財務内容のどれをとっても超がつくほどの優良企業です。2024年3月期時点で総資産2.96兆円に対し、純資産は2.80兆円も積み上がっているのは株主還元に積極的ではないためです。しかし肥大した純資産にも関わらずROEが約14%と平均的な日本企業を大きく上回っていることや、過去15年間の時価総額増分も同社が同期間に内部留保した合計額を大幅に上回っていることなどから、なかなか株主として文句をつけがたい状況にあります。 企業の資本収益性を表す指標としてROCE(Return on Capital Employed:使用資本利益率)がありますが、同社の余剰資金を除いた実質的なROCE(*1)の値は110%以上と驚異的なレベルです。これはすなわち、財務の安定性を損なわない範囲で自社株買いを行って自己資本を縮小(適正化)させれば、同社のROEは飛躍的に上昇することを意味します。例えば、2024年3月期時点で2.8兆円ある純資産を1兆円まで縮小させればROEは約36%まで上昇、同5,000億円なら約73%、同2,500億円なら約145%という計算になります。自社株買い後の財務健全性についても、仮に使用資本(有形固定資産、無形固定資産、運転資金)に月商3か月分の現預金を加えたものを事業継続上必要な総資産(約7,000億円弱)とすれば、純資産5,000億円あれば自己資本比率は73%、同2,500億円だとしても36%と好財務を維持できることがわかります(*2)。つまり大量の自社株買いを行ってROEを高めても同社の健全な財務は犠牲にならないということです。(*1)営業利益/(有形固定資産+無形固定資産+運転資金)(*2)当ファンドが同社資本収益性の改善余地としてもうひとつ注目しているのは運転資金です。同社は売上原価と棚卸資産から計算される在庫回転期間が6か月と総資産規模に比べて金額は僅少ながらも回転期間は一般的な製造業としてかなり長めです。売掛債権回転期間もやや長い一方、買掛金回転期間は1か月と短めであるため、運転資本の改善余地は小さくありません。
3)ノイズではなくシグナルとなりうる情報 株式市場では様々な情報が飛び交い、それによって個別企業の株価が動きます。しかし多くの場合は、当該企業の本源的価値に影響を与えるような重大な情報ではありません。このような、とるに足らない情報をノイズとみなします。逆に、本源的価値にインパクトを及ぼすような情報はシグナルです。例えば小売企業の月次売上が天候要因によって不振だった場合と消費者の好みの変化によって不振だった場合では意味が大きく異なります。この場合、前者がノイズであり、後者はシグナルです。当ファンドはシグナルになりうるような情報に目を光らせます。逆に、ノイズであれば、例えファンド組入銘柄の短期的な株価下落要因になったとしても注意を払いません。
一方、苦戦が続いている日米の既存店動向については、正しい施策がすでに打たれていると考えられます。 まず米国のコンビニエンスストアはガソリンスタンド併設型が多く、来店客の多くは給油ついでに買い物するだけのケースが多いと言われています。店舗の清潔感に欠け、治安面でも不安があるため、好んでコンビニで買い物をしようというインセンティブに欠けるのが実態です。このような問題点を認識し、同社は既存店の改装(看板の刷新、綺麗なトイレの設置、駐車場の線引きのやり直しなどを含む)を大々的に進めています。品揃えもフレッシュフードを中心に拡充を進めています。 日本と米国のコンビニ店舗は似て非なるものですが、米国からの訪日客が日本のコンビニを訪れて清潔感や品揃えの豊富さに感銘を受けているのを目の当たりにすると、日本型コンビニ店舗モデルの移植に成功すれば、同社の米国における成長の道が大きく開けると考えます。同社はまた日本では当たり前のPOS(販売時点情報管理)システム導入による単品管理や、同日複数回配送の仕組みなども着々とノウハウを移植しており、今後が楽しみです。米国事業の既存店売上成長率は、たばこ販売の減少による押し下げ要因はあるものの2024年7月の前年同月比4.4%減(商品売上)を底にマイナス幅の縮小傾向がみられるのは明るい材料です。 国内コンビニ事業も問題点ははっきりしています。もともと同社はプライベートブランド(自社企画商品)「セブンプレミアム」などを通じて値段に対して「価値」のある品揃えを特徴としてきました。このため、「価格訴求」の観点からは競合他社に劣後している状況です。デフレからインフレへの構造転換によって、競争環境が変わったためでしょう。同社はこの点を認識しており、対応を急いでいます。2024年からは「うれしい値!宣言」キャンペーンを行い、同年10月頃より既存店売上成長率はプラスに転じ始め、少しずつですがトレンド変化がみられます。 同社は、1970年代からコンビニ業界のパイオニアとして、これまで店舗オペレーション面、商品開発、サービス面で数多くの革新を進めてきました。国内市場は大手3社がシェアの9割を占めている寡占市場です。セブンイレブンが競合に対して復活を遂げるのは、それほど難しいことではないように思われます。
オリックス オリックスは現時点ではプリンシパルインベストメンツ型(自社のバランスシートで投資資産を抱える)中心のビジネスモデルですが、今後の「アセマネシフト」によってフィー収入の比重が増えることが予想されます。同社の理論上の株価評価は、これまでのバランスシート上の保有資産価値をベース(PBR)としたものから、将来利益をベースとしたPERでの評価に切り替わっていくことで、当ファンドでは大きな上昇余地を見込んでいます。 しかし、この見通しが実現しなかったとしても、PERはおよそ10倍程度、PBRは1倍を長らく下回っています。もっと言うとバランスシート上に反映されていない投資資産の含み益を勘案した時価ベースの純資産でみればPBR1倍を大きく下回る(=含み益を考慮したPBR)状況です。 株主還元も積極化しており、配当利回りと総還元利回りはいずれも市場平均を上回っています。累進配当を掲げており、こちらも株価のダウンサイドリスクを抑える役割を果たしてくれると考えます。
今後当ファンドが注視したいのは、日本の「ゾンビ企業」についてです。国内金利が上昇すれば非効率な経営を続ける零細企業、いわゆる「ゾンビ企業」の経営は厳しくなるかもしれませんが、これらの企業を延命することは望ましくないと考えます。超低金利環境下のみで生存できる低収益企業の存在は長年のデフレ要因でしたが、2024年4月14日付け日本経済新聞に掲載されたインタビューで経済産業相の斎藤健氏は「これまでの中小企業政策は力の強い大企業に対し、弱い中小を支えるという発想に立ってきた。同じ中小規模でもスタートアップのように、どんどん成長していこうという企業は中小政策の主眼ではなかった」と語っています。護送船団方式で産業政策を進めるのは時代にそぐわなくなっていると認めているようです。斎藤氏は体力のない企業の退場を後押しこそしていませんが、当ファンドは「ゾンビ企業」が淘汰されることはデフレ脱却を確実なものにするために必要不可欠との見解です。社会の一部の方々にとっては痛みを伴うかもしれませんが、政策を動員することで日本が乗り越えなくてはいけないハードルだと考えます。
(長期で魅力的なビジネス) 同社が展開する損保ビジネスは、海外での成長余地が膨大にあること、また成熟化している日本国内では高水準で安定した利益が生み出されていることから、「魅力的なビジネス」であると当ファンドでは考えております。同社が経営指標として重視する修正ROEは12.7%(2022年3月期実績。会計上のROEでみても10.9%)と、資本収益性も日本企業の平均を上回っています。 日本国内における損保産業は自動車保険、火災保険ともに広く普及している結果成熟化が進んでおり、高い成長性を求めるのは難しい環境にあると考えます。しかし同社は海外の保険会社買収により、平均して年率一桁半ばの利益成長率をこれまで実現しています。 この買収戦略を可能にしているのが、過去20年でメガ損保3グループを中心に進んだ国内業界再編による市場寡占化(=高い参入障壁)と、豊富な含み益を持つ政策保有株の存在です。寡占化によって国内市場で潤沢な利益が生み出されるようになったことに加え、以前は非効率な金融資産と見なされていた政策保有株も、今日では売却資金化によって戦略的活用が可能となりました。政策保有株は、世界的にも珍しい日本のメガ損保独自の競争優位性となっています。同社の政策保有株の規模は、今日現在でも時価2.4兆円程度に上ります。このうち、毎年の売却資金額は年1,000億円規模です。 生み出されたこれらの資金は、海外企業の買収だけでなく、継続的な自社株買いにも活用されます。会計上、政策保有株の未実現利益の変動は貸借対照表の純資産の部(その他有価証券評価差額金)に反映されますが、日本の株式市場が好調な場合、未実現利益の拡大によって当期純利益の増大を伴わずに純資産が膨れ上がることを意味します。同社は政策保有株の売却資金を自社株買いにまわすことで、分母である資本面からもROEを高めることが可能なポジションにあると考えます。 自社株買い・消却によるメリットは、一株当たり利益の引き上げにもつながります。同社の中期経営計画の主要な目標は「修正純利益CAGR(年平均成長率)+3~7%」ですが、継続的に自社株買い・消却を進めることで、「一株当たりの分け前」が増えることになります。過去の実績を鑑みると、今後も一株当たり利益の伸び率は、当期純利益全体の成長率よりも1.5~2.5%程度高くなることが予想されます。従って、持続性のある一株当たりの利益成長率見通しは保守的に見ても一桁半ばから後半とみなすことができると考えます。同社の自社株買いは2017年3月期以降、少ない時でも年500億円、多い時で年1,500億円実施しています。 このように同社は、会社の利益全体を引き上げる効果がある海外買収案件が見つかればM&Aに、なければ一株当たり利益を引き上げる効果がある自社株買いに資金を活用することで、最適な資本配分を行っているのです。当然、自社株買いも自社の株価水準が割安であるかどうかが実施の判断基準となります。 さらに同社は成長投資に資金を振り向けてもなお、潤沢なキャッシュフローが手元に残るため、配当性向の継続的な引上げも行っています(2017年3月期実績:配当性向36%、一株当たり配当金140円、2023年3月期計画:同50%弱程度、同300円)。現在の中期経営計画における2024年3月期の配当性向目標は50%です。2022年6月末時点の株価だと配当利回りは4%前後になるため、同社株を保有することによる期待リターンは下記の通り年率一桁後半から10%前後となると考えます。
日本株式の上昇相場が腰折れするリスクには何が考えられるでしょうか。 日銀による拙速な利上げ判断は、日本経済の回復基調を弱めてしまい、デフレへ逆戻りさせてしまう可能性があります。また、より現実的なリスクシナリオとして、日銀が満を持して利上げ(金融政策の正常化)を行うタイミングと、米国が景気テコ入れのために利下げに転じるタイミングが重なった場合は、少なくとも短期的には急激に円高になることが考えられます。これは、国内輸出企業にとってはネガティブであり、ひいては国内景気に波及するかもしれません。春闘における持続的な賃上げの勢いもストップしてしまうことが懸念されます。さらには、金融史上前例のない量的緩和の出口政策についても、実行手順を誤れば日本経済に思わぬ弊害が生じるかもしれません。緩やかな円安は輸出企業の収益を拡大させるため、今の日本経済にとってはプラスですが、急激な円安進行は輸入物価高騰を通じた「悪いインフレ」を加速させます。2022年頃の1ドル150円の為替水準に再び戻れば、低所得者層を中心に生活が苦しくなることが予想され、インフレの好循環などとは言っていられないでしょう。 今年の春闘に限らず、継続的な賃上げは日本がデフレを完全脱却するために欠かせませんが、これは容易なことではありません。終身雇用という考え方が過去のものに成りつつあるとはいえ、企業の報酬体系はまだ米国のような完全実力主義からは程遠い状況です。このため、一旦ベースアップを決断すれば、企業にとっては全従業員に対する人件費が一律で増加することを意味し、その負担は小さくありません。来年以降も賃上げを継続するには企業収益が持続的に成長していくことが必要不可欠と考えます。
また同社株はフローの収益で評価するPERでみても割安感があります。決算説明資料において経営陣は「ベース利益」と「売却益(キャピタルゲイン)」にわけて解説しています。ベース利益とは保有している資産から毎期生み出される収入をもとにした利益、「売却益」は事業ポートフォリオ入れ替えを目的とした事業売却・資産売却をした際に不定期に発生する利益を指します。後者は毎期安定して見込めないことから、株式市場では一過性利益として過少評価されがちです。しかし当ファンドはオリックスが投資事業会社である以上、年度によって上下動は大きいものの、長期では恒常的な貢献が期待できる利益項目としてバリュエーション上は重視すべきとの見解です。過去5年平均で1,140億円を計上しており、同社経営陣は今後も年平均1,000億円程度の売却益は計上できる自信をみせています。
2022年12月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比4.57%の下落となりました。 当月の日本株式市場は、11月30日にFRB(米国連邦準備制度理事会)のパウエル議長が12月のFOMC(連邦公開市場委員会)における利上げ減速を示唆したことを受け、上昇して始まりましたが、その後は米国景気悪化懸念の高まりなどから下落基調をたどりました。月半ばには、欧米中銀の金融引き締め継続による景気悪化懸念や、日銀が長期金利の許容変動幅を修正したことなどを受け、金融政策の転換懸念から株式市場は大幅に下落しました。月後半にかけては、中国が事実上「ゼロコロナ政策」を終了したことでインバウンドや中国経済再開期待が生じる一方、米国の半導体株安や円高の進行を受けて、一進一退で推移しました。



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