泊まれない都市 奈良 状況一変
全国有数の観光地・京都で起きている異変。 タクシー運転手によれば「日本の人ももうほとんどない。少ない。9割ぐらい外国の人やね」という状況で、今年に入って日本人宿泊者数の減少が止まらず、日本人の「京都離れ」が加速しているのです。
今、全国の温泉地で、草津に続けと逆襲ののろしが上がっている。島根県松江市の玉造温泉。ここもかつては寂しい温泉地だった。いま、そこに大挙して押し寄せるのは女性たち。驚くほど肌に潤いとハリを与えるという美肌成分を求めてやって来るのだ。源泉が湧き出る場所には人だかりが。沸きたての美肌源泉が誰でも無料でくみ放題なのだ。その場で「美肌専用ボトル」(200円)に入れれば、化粧水のミストとして使える。地元の人がこの美肌泉質の泉質に目を付けたのは、つい10年ほど前。奈良時代に書かれた「出雲国風土記」の中に、偶然、玉造温泉の「今の言葉でいえば、まさしく美肌」(松江観光協会・周藤実さん)の効果についての記述を発見した。 実際に温泉を分析すると、肌に水分を浸透させる働きがある硫酸イオンが多く含まれることが判明した。これを機に、玉造は町復活ののろしを上げる。玉造温泉美肌研究所「姫ラボ」が目玉商品として開発したのが、温泉水を配合した洗顔用「姫ラボ石鹸」(1500円)。驚くような泡立ちで年間4万個を売り上げる。極上の美肌温泉をたっぷりしみこませ、顔に効能を行き届かせる「美肌温泉フェイスパックタオル」(500円)も大ヒット商品となった。玉造は、温泉のウリを徹底的にアピールすることで、観光客が年間20万人も急増した。一方、1300年の歴史を持つ佐賀県嬉野市の嬉野温泉。押し寄せていたのはシニア客だ。1年間で1.7倍に増えたという。激変の理由は旅館だ。「千湯樓」は、スロープのある廊下、そして部屋まで、館内は一切段差がないバリアフリーになっている。ベッドも電動リクライニング。そして客の最大の楽しみ、部屋付きの温泉には、入浴用電動リフトが備えられている。嬉野では13軒の旅館が、温泉に行きたくても行けなかった高齢者向けに宿を改築した。「和楽園」も部屋全体をバリアフリーに改装、客を増やしている。女将の下田美穂子さんは「『もっと早くこの旅館に出会いたかった』というお声もありました」と言う。町には、温泉客をサポートする専用組織「バリアフリーツアーセンター」もある。電話1本で様々な補助器具が無料で借りられ、要請すれば、入浴介助のヘルパーまで派遣してもらえるという。今や嬉野はシニアに人気の温泉地ランキング1位(「楽天トラベル」調べ)。他にない戦略で名湯が復活を遂げようとしている。


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