日本人の京都離れ 受け皿は奈良
「奈良の女です。大和の国で育ちました」と語る高市早苗総理も誕生し、この勢いのまま奈良は日本有数の観光地になれるのでしょうか?しかし、取材を続けると、その前にある大きな壁の存在が明らかになりました。それが「奈良の夜"早すぎ"問題」です。午後6時前、次々とシャッターが降り、店の営業が終了します。「閉店作業中?午後5時半ぐらいですが?」という問いに、食器店は「雨ですし、あれなんでちょっと早めに」と答え、午後6時に閉店する洋服店も「早いなとは思うんですけど、ご覧の通りなので…」と話します。昼間はあんなににぎわっていた奈良公園も、夜6時を過ぎると見渡す限り人がいません。ウォーキング中の人に声をかけると「(暗いので)クマとか大丈夫かなって。そればっかり思っていました。だから今(声かけられて)クマかなと思って」と驚かれてしまいました。小一時間ほど探し続けようやく見つけた観光客は「ここらへんなにもやってない。お店全部閉まってました」「深夜なのかなって」「(午後)7時だもんね、今」と戸惑いを隠せない様子でした。
航空・旅行アナリストの鳥海高太朗さんは、「日本人の"京都離れ"が特にこの2年間、進んでいる状況があります。バスに簡単に乗ることができない、満席で乗車ができなかったり。日本人は"静かでゆったり見たい"という環境(を好む)の中で、今それができていない」と分析します。では、京都から離れた観光客はどこへ行ったのか?観光庁のデータをもとに番組が調査したところ、万博が開催された大阪を差し置いて、圧倒的な数値を記録したのが奈良でした。
全国有数の観光地・京都で起きている異変。 タクシー運転手によれば「日本の人ももうほとんどない。少ない。9割ぐらい外国の人やね」という状況で、今年に入って日本人宿泊者数の減少が止まらず、日本人の「京都離れ」が加速しているのです。
京都の観光地に異変「客の8割が外国人」「日本語聞こえへん」
奈良公園や東大寺など多くの観光地を抱えながら、2021年には年間の宿泊者数が全国最下位と、実は"泊まれない都市"だった奈良。しかし、ここ数年で状況が一変しています。紫翠ラグジュアリーコレクションホテル奈良。 客室は奈良の歴史を感じて頂けるように、正倉院の宝物からインスピレーションを受けたスタイリッシュなデザインです。ホテルの運営会社の佐藤佳子さんは「(宿泊者数が)右肩上がりに増えているのは、実感としてあります」と話します。続々とホテルがオープンする"開業ラッシュ"が続いているのです。
さらに今週、奈良県は去年1年間の宿泊者数が「せんとくん」ブームが起きた2010年を上回る、過去最多を更新したと発表。「全国最下位」から「泊まれる奈良」へ逆襲が始まりました。その背景には何があるのでしょうか?鳥海さんは「京都の良いホテルの宿泊料は、今や10万円ではなく、もう20万円越え。20万円は出せないけど、10万円台ならという需要を、(奈良は)結構取ってきている。奈良は間違いなく、京都の受け皿になっていると思います」と指摘します。観光客からも「やっぱり(奈良は)静かじゃないかな」「世界遺産もあるし、歴史的なものをもう一度見直してみたい。奈良もこれからもっと人が増えちゃうかもしれない。京都は人が多すぎて」という声が聞かれました。明治42年開業の奈良ホテルも、「我々も良いところはもっと伸ばしていけたらなと。協力し合って、奈良全体を盛り上げていける観光の状況になれたらな」と新たなホテルが次々と生まれる現状を歓迎しています。


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