
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年11月14日 15時09分
ポンドは政局不安と財政リスクで買いは慎重に、ユーロはいくらか上目線
ユーロ/円が史上最高値更新
ユーロ/円やポンド/円は上昇。米国のつなぎ予算を巡る協議が進展し、米国の政府機関再開が近いとの観測が投資家センチメントを改善させて、円売りを促しました。ユーロ/円は179.948円と過去最高値を更新しました。また、ポンド/円は204.080円まで上昇しました。ただ、英国の雇用情勢悪化や、英FT紙が「首相と財務相は所得税率引き上げの計画を断念したもよう」と報じるなど、予算案を巡る不透明感から、ポンド/円の上昇幅は限定されました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研TEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
フランスの政治リスクは残っている、英国はどっちに向かっても悩む
ECBによる利下げサイクル終了はユーロに対する下押し圧力を緩和させ、ユーロのサポート材料として引き続き意識されるとみられます。また、10月中旬に政治の混乱が強まったフランスで年金改革法案の停止が下院で賛成多数で可決されたことも、ユーロを下支えする期待はあります。ユーロ/円は180.00円突破を視野に捉えたと見られます。
対米ドルでもレジスタンスラインを越えてきたことから、もう少し上値を期待できます。しかしながら、フランスの予算審議は遅れ、政治的な混乱が再び高まるリスクもあり、ユーロに対して強気一辺倒とまではいかないと考えます。全体的には底堅い動きが続くと考えますが、上値は限定されるのではないかとみられます。
一方、英国では政権崩壊への懸念がくすぶり始めています。リーブス財務相が、公共投資の大幅削減と引き換えに増税を行わないという選挙公約の履行は可能だと発言したことで、市場や政界に波紋を呼び、スターマー首相の解任論まで浮上する事態となりました。ただ、英FT紙が「首相と財務相は所得税率引き上げの計画を断念したもよう」と報じたことで、労働党内の分裂はひとまず回避される可能性があります。とはいえ、そうなると当然、公共投資など歳出が削られることになり、今度は英経済の低成長が懸念されるようになります。増税のないまま財政規律が緩和されるような予算編成が行われれば、英国債の下落やポンド安など「英国売り」が強まる展開も想定されます。こうしたリスクが意識される中で、ポンド買いを進めるには、慎重な判断が一層重要になると見られます。
ユーロ/円の上値目途は182.18円を想定(テクニカル分析)
ユーロ/円は右肩上がりの21日移動平均線を支えにして堅調な推移が続いています。まだ、180円台には到達していませんが、このラインを突破できれば、10月17日安値174.820円を起点とするフィボナッチエクスパンションの161.8%ラインにあたる182.18円まで目線が上がります。ただ、直近のローソク足は約5営業日連続の陽線が続いた後に21日線付近まで調整するケースが多いため、ここからの追っかけ買いは時期的に注意が必要です。短期売買を中心に、押し目買いや戻り売りを意識した戦略が有効と考えます。
また、ポンド/円は日足一目均衡表の雲の上側で推移しており、底堅さが感じられます。ただし、戻り高値が徐々に切り下がっている点は懸念材料です。直近の204.08円を早期に突破できれば、205.30円付近まで上昇余地が見込まれますが、同水準を超えられずに失速した場合、11月5日安値199.063円からの上昇幅に対する61.8%押しとなる200.98円を割り込む可能性もあります。
【ユーロ/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:EUR/JPY:177.000-182.000
【ポンド/円チャート 日足】

出典:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:GBP/JPY:200.500-205.500
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一言コメント
先日、たまたま手にした本の中で、知識を蓄える行為は、それを活用することで新たな知識が増える可能性が広がる点で、コスパの良い投資にあたると記されていました。恥ずかしながら目から鱗が落ちる思いでした。これから夜の時間が長くなる季節なので、読書に時間を割こうと思います。
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