
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年11月14日 15時14分
米政府再開で次は実体経済を確認、介入警戒高まらずドル円は155円突破
米ドル/円、堅調
米ドル/円は155円台を一時回復しました。米国のつなぎ予算が上下院で可決され、政府再開のめどが立ったことが背景にあったとみられます。また、片山財務相が「円安はマイナスの面が目立つ」と円安を牽制したものの、政府・日銀による円買い介入にはハードルがまだ高いとの見方もあり、米ドル/円をサポートしました。米ドル/円は155.04円まで上昇しました。しかし、政府機関閉鎖解除が決まると、いったん材料出尽くし感から利食い売りが入り、米ドル/円は154.12円付近まで下落しました。(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
変則的な米経済指標発表に注意
米政府機関の再開は来週以降になると予想していましたが、意外にも協議は早期に進展し、再開が実現しました。これにより、超短期の不安要素が後退し、市場では好感されています。背景には、ニューヨークでの急進左派市長の誕生、食糧支援停止への抗議、さらにサンクスギビング休暇を控えた航空網の混乱など、社会的・政治的圧力の高まりが、民主党とトランプ大統領の妥協を促したと考えられます。
今後は、政府閉鎖中に発表されなかった経済指標が順次公表される見通しであり、その結果次第で米国の金融政策に対する見通しが変動する可能性があります。執筆時点では、経済指標の発表スケジュールは未定です。
一方、円買い介入への警戒感は残るものの、現状の米ドル/円水準は年初より約2円20銭円高であり、介入に先立つ利上げが妥当とされることから、実施のハードルは高いと見られます。これらを踏まえると、米ドル/円は経済指標に一喜一憂しながらも、じりじりと上方向を試す展開が続くと予想されます。
ただし、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく広範な関税措置が違憲かどうかを巡る審議が米連邦最高裁で始まっており、中期的には不透明感が残るため、先行きに対する確信を持ちづらい状況です。
152円が短期的な下値目途か(テクニカル分析)
米ドル/円は、昨年の高値161.95円からの下降レジスタンスラインを突破してきたことで、上方向の軽さが意識されます。確かにストキャスティクスでは割高感からの調整懸念が意識されますが、21日移動平均線付近ではサポートされる可能性があると考えています。このラインを割り込んでも、一目均衡表の基準線が推移する152.21円付近が短期的な下値目途となりそうです。上方向は157円付近まで目線が上がっているように感じられます。
【米ドル/円チャート 日足】

出典:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:USD/JPY:152.500-156.500
11/17 週のイベント:

一言コメント
米政府機関が再開されました。ほっとした気持ちがある一方で、今後、これまで未発表の経済指標が次々と変則的なタイミングで発表されてくるのかと思うと、悲喜こもごもです。
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来週の為替予想 米ドル 円
2029年2月のドル円予想。当月始値 172.83、最低 172.83、当月最高 180.68。平均 176.09。月末 178.01。変更 3.0%。
2029年7月のドル円見通し。当月始値 181.45、最低 181.45、当月最高 189.69。平均 184.87。月末 186.89。変更 3.0%。
2029年1月のドル円見通し。当月始値 168.16、最低 168.16、当月最高 175.42。平均 171.14。月末 172.83。変更 2.8%。
2028年7月のドル円見通し。当月始値 174.77、最低 174.77、当月最高 182.04。平均 177.73。月末 179.35。変更 2.6%。
10/20に150円48銭から取引を開始し、10/21の臨時国会招集、首班指名選挙を控え「高市トレード(円安・株高)」の再燃が意識され、一時151円20銭へ上昇しました。しかし、高田日銀審議委員が、「利上げに向け機が熟した」との見解を示し、150円28銭へ反落。その後、10/21の首班指名を経て高市新政権が発足し、「責任ある積極財政」といった重点政策への期待から円安・株高が進行。さらに、10/31-11/1に韓国で開催されるAPEC首脳会議において米中首脳会談が開催されることが確実視される中、10/24の高市首相の所信表明演説を受け153円06銭へ一段と上昇。一方、米9月消費者物価指数が予想を下回ったことで152円30銭へ反落。それでも、米長期金利の低下を背景にNY株主要3指数が史上最高値を更新するなど、リスク選好の動きが強まったことで153円台を回復し152円86銭で取引を終えました。
インフレ率が高くなると、外国為替市場での通貨は弱くなります。1990年のインフレ率は、日本は3.08%、米国は5.40%でした。その年のドル対円相場は、年末までに1ドル160円から135円にまで下落しています。2000年のインフ レ率は日本は-0.68%、米国では3.4%と、ドル対円相場は107.8円にまで下がっています。
10月28日にはトランプ大統領と新首相の会談の可能性が報じられており、過度な円安は日米ともに望まない公算が大きいです。ベッセント財務長官から日銀のビハインド・ザ・カーブ(政策が後手に回る)を指摘する発言もあるなか、日銀の利上げシナリオが頓挫する可能性は低く、遅くとも2026年1月までに追加利上げとなる公算が大きいでしょう。これは2026年に向けた円相場の下支えになります。拡張的な財政政策への懸念が払拭され、日銀の利上げ継続が確認されれば、米日金利差の縮小と金利差へのキャッチアップが円高圧力として働くと予想します。
10/24にムーディーズがフランス国債を「Aa3」に据え置きつつ、見通しを「ネガティブ」に修正した点が引き続き意識され、フランス議会で予算成立が難航すれば、格下げ懸念が上値を抑える可能性があります。一方、ドイツおよびユーロ圏のPMI改善が確認されているほか、10/27発表予定のドイツIfo景況感指数が大幅な下振れとならなければ、10/22の安値1.1577ドルを下回るリスクは限定的と見られます。また、10/28-29のFOMCでの利下げ観測に対し、10/29-30のECB理事会は政策据え置きが確実視されており、下支え要因となると見込まれます。日足・雲の下限(1.1652ドル)を上抜け、10/17の1.1728ドルの回復を試す展開が想定されます。また、ユーロ円は、日米首脳会談の結果や、10/29-30の日銀金融政策決定会合で植田総裁が12月会合に向けて利上げをどの程度示唆するかが焦点となります。ドル円が155円台を目指す展開となれば、ユーロ円も10/9の177円94銭を上抜け、ユーロ発足以来の最高値に向けて一段高となるか注目されます。
米政府機関閉鎖の長期化懸念が続き、10/27の米9月耐久財受注や10/31の米9月PCEコアデフレーター発表が先送りされる可能性がある状況下、10/28-29のFOMCでは0.25%利下げが確実視されています。また、10/27-29にかけてのトランプ大統領来日には、ベッセント財務長官やラトニック商務長官も同行する見通しです。10/28の米中首脳会談では、防衛費のGDP比2%前倒し要請に加え、日米関税交渉で確認された日本からの5,500億ドル規模の対米投資も議題となる見込みで、高市首相の掲げる財政拡大策に対する懸念が強まる可能性があります。こうした財政懸念が日本国債の格下げリスクを意識させる展開となれば、「悪い円安」進行も否定できません。今回の臨時国会で最大のテーマとなる「物価高対策」にも影響を及ぼしかねず、現状維持が見込まれる10/29-30の日銀金融政策決定会合では、植田総裁が次回12月の会合に向け利上げ姿勢をどの程度示すか焦点になります。その内容次第では、円安進行に歯止めを掛けるか、あるいは一段の円安を加速させるか焦点となります。
2028年4月のドル円予想。当月始値 168.36、最低 163.52、当月最高 168.50。平均 166.60。月末 166.01。変更 -1.4%。
2028年9月のドル円見通し。当月始値 174.87、最低 174.87、当月最高 182.82。平均 178.17。月末 180.12。変更 3.0%。
0/20の8円63銭を安値に、米中貿易摩擦への懸念が後退し、米国の信用不安緩和を好感した欧米株式市場の堅調を背景に、南ア全株指数も反発。これを受けてランド買いが優勢となりました。10/21には、南ア8月の景気先行指数が3か月連続で上昇し、経済活動の回復が示唆されたことが好感されました。さらに、高市内閣発足を受けたドル円の上昇も支援材料となり、8円78銭へ上昇。しかし、10/22にかけては金価格の下落に加え、南ア全株指数が大幅反落したことから一時8円67銭へ反落。もっとも、10/23には金価格と南ア株式相場が再び上昇に転じたほか、金融犯罪対策を担う国際機関FATF(金融活動作業部会)が、南アを「監視対象強化国」から除外する可能性を報じたことを受け、ランドは8円82銭へ反発。また、10/24発表の米9月CPIが予想比下振れたことから対ドルでの上昇とともに8円87銭へ一段高となり、8円86銭で取引を終えました。
10/30の米中首脳会談を前に10/27には、中国によるレアアース輸出制限の解除や米国産大豆の輸入再開への期待感からリスク選好が広がったものの、100円を挟んで上下30銭程度の小動きにとどまりました。しかし、10/29に控えた豪7-9月期CPI発表を前に、10/28には日経平均株価の反落やドル円の下落(151円台後半)を受けて99円42銭まで軟化。その後、CPIが市場予想を上回ったことで、豪中銀の早期利下げ観測が後退し、100円76銭へ急反発しました。さらに、10/30の日銀金融政策決定会合で現状維持が決定され、植田総裁が利上げに慎重な姿勢を示したことから円安が進行する中、101円21銭へ上昇。もっとも、10/31は11/4の豪中銀政策理事会を控え様子見ムードが強まり、100円台後半での小動きに終始し、100円79銭で取引を終えました。
2029年8月のドル円見通し。当月始値 194.48、最低 191.35、当月最高 197.17。平均 194.32。月末 194.26。変更 -0.1%。
片山氏の発言をきっかけにしたドル売り・円買いの動きは一時的なもので、一巡後は下げ渋った。今後も口先介入の効果は限定的と考えられる。ただ、片山氏は以前に過度な円安に否定的な姿勢を示している。来週(11月3-7日)もドル・円が上値を切り上げるような動きをみせるようなら当局者による発言機会も増える可能性があり、ある程度はドル・円の重しとして意識されそうだ。


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