・ソニーグループ:5月に最大2500億円の自社株買いを発表
日経新聞によると、下期も自社株買いの勢いが続くかどうかは不透明だそうです。
・三菱商事:4〜9月に約5800億円の自社株買い。上限1兆円規模の計画を発表しており、発行済株式の約17%に相当。ROE12%以上を目標に資本効率改善を狙う。
米国の関税政策などの影響で、4月に打撃を受けた日本株。記録的な下落があったものの、そこから足下持ち直している要因の一つが、企業の自社株買いです。 実はこの自社株買いは、企業による事業構造改革や株主還元を拡充する一環として動きが加速しています。きっかけは、2023年に東京証券取引所が上場企業に対して要請した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」です。昨年2024年、上場企業による自社株買いは、過去最高を更新し、2025年は2024年を上回るペースで増加していて、今後もこの流れが続くと予想されます。
その背景として挙げられるのが、日本企業の潤沢な資本の存在です。株主還元強化の動きは以前に比べ活発になったものの、米国やヨーロッパの企業に比べて、日本企業は未だ手元資金が豊富にあります。今後も、余剰資金の有効活用としての自社株買いがさらに広がる可能性も十分にあるでしょう。
自社株買いとは一言で言うと「企業が、すでに発行して市場に流通している自社の株式を、会社の資金を使って買い戻すこと」です。
25年上半期、企業による自社株買いが過去最高を記録しました。4〜9月の総額は6兆2732億円と去年を大きく上回り、海外投資家の買い越し額も上回って、日経平均株価の史上最高値を支える要因となっています。
ROE向上の効果もあります。自社株買いは貸借対照表上で「株主資本の払い戻し」として扱われます。自己資本(ROEの分母)が減少するため、同じ利益水準でもROEが上がり、資本効率の改善として投資家に好意的に受け止められます。
そのため、定期的なキャッシュ収入を得たい個人投資家は配当を好み、長期投資の個人投資家やプロの投資家は将来的なリターンが大きくなる可能性がある自社株買いを好む傾向があるようです。ウォーレン・バフェット氏は、企業に過剰なキャッシュがある場合、株価が本質的価値よりも割安であれば、配当を出すよりも自社株買いを行う方が、継続して株を保有し続ける株主にとって税制面でも有利で、より価値を向上させる手段である、と明確に主張しています。このため、バークシャー・ハサウェイは1967年以降無配を貫いています。
自社株買いは市場から株を買い戻すことで、流通する株式の数を減らします。これにより、利益が変わらなくても分母の株数が減るため、1株あたりの利益(EPS)が高まります。EPSの上昇は「1株の価値が高まった」と解釈され、株価にプラスに働きます。
・ソニーグループ:5月に最大2500億円の自社株買いを発表。中期計画においてM&Aなど戦略投資枠(1.8兆円)に「機動的な自社株買い」を組み込む。
筆者としても、企業が自社株買いなどの株主還元を成長への投資と両輪で行っているかどうかを注視していきたいと思います。戦略的な自社株買いが増え、日本株市場が大きく成長して欲しいという期待をしつつ、今後も日本株市場をウォッチしていくつもりです。
冒頭で述べたように、2023年に東京証券取引所が上場企業へ「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請したことをきっかけに、事業構造改革や株主還元を拡充する動きが加速しています。2024年度の自社株買い増加の傾向は、2025年度に入っても続いており、4月のトランプ政権の関税政策に端を発した株価急落の後も、むしろ自社株買いの勢いは強まっている状況です。
本記事を通じて、自社株買いの基本や影響、増加の背景をご理解頂けましたでしょうか。 企業は自社株買いを中長期的な成長につながるよう効果的に行うことが重要です。投資家も投資判断をする上で、そのような戦略的自社株買いに着目する必要があります。
こうした巨額自社株買いの背景には、23年に東京証券取引所が「資本コストや株価を意識した経営」を要請したことが大きな契機となっています。
・配当:分配対象では、株主全員に平等に現金が分配されます。また、税金面では、受け取るたびに税金がかかります。・自社株買い:分配対象では、株を売却した株主だけに資金が渡ります。また、税金面では、株を売らなければ課税されず、株主は利益を温存したまま再投資している状態になり、将来的にリターンが大きくなる可能性があります。


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