在庫山積みのコメ なぜ価格高騰
一方、大手卸売業は例年並みの在庫量維持に成功。高値で仕入れるリスクは、価格転嫁で解消できた。消費者を含む実需者の買い支えを背景に、大手コメ卸では過去最高益の更新や株価上昇が起きた。
ところが農林水産省(農水省)は不足を認めようとしませんでした。なぜなら、認めれば備蓄米を放出して米価が下がることになるからです。せっかく減反を強化して引き上げた米価が下がることを嫌がった。昨年の夏には「新米が供給されれば値段は下がる」と主張していましたよね。40万トン不足しているのに、一体どうしたら下がるんでしょうか。
新米が「不良在庫」に…大手卸売りの「国は米を買い取れ」に米店は冷ややか「恥ずかしいと思わないのか」
私は当時から「嘘をつくな」と言い続けてきました。供給が減っているのだから米価は上がるに決まっている。そうしたら案の定、高騰しました。すぐに嘘はバレたわけですが、今度は「流通に目詰まりがある」と言い始めた。「誰かが米を売り渋っている」とね。そこで2025年2月に、JA(農協)と大手の卸売業者、それ以外の集荷業者や小規模な業者も含めて広範に在庫を調査したのですが、どこにも消えた米などありませんでした。結果的に備蓄米を放出することになったのはご存知の通りです。
その結果、JAグループなどの大手集荷業者はコメ集めに失敗。25年1月末時点で前年同月より集荷量が23万トン、在庫が48万トンとそれぞれ減った。
高騰が続く米を巡る動きが目まぐるしい。当初は「米不足」には当たらないとして備蓄米の放出に消極的だった政府だが、2025年3月には第1回の放出を実施。その後、順次放出を続けるもなお高騰が続いた。さらに2025年5月半ば以降には、江藤拓前農水相の失言による事実上の更迭を受け、新たに就任した小泉進次郎農水相が備蓄米の随意契約方式での売却を打ち出すなど、日々刻々と状況が変わっている。そもそも、なぜ米価が昨年の2倍近くに高騰したのか。以前から米に関する構造的な課題を指摘してきたキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の山下一仁氏に話を聞いた。
――現在日本を揺るがしている米価高騰の問題について専門家の視点からお話を伺いたいと思います。なぜ今、米の価格がこれほど高くなっているのでしょうか?
もし仮に、転売業者による買いだめや農家による売り惜しみが主因であったとすれば、政府による備蓄放出による先高感の後退で在庫の投げ売りが起きていたはずです。こうした在庫の投げ売りが起きていないことは、米価の高騰が投機に起因するものでなく、実需のタイトさを反映したものであるとみるべきでしょう。
さらに猛暑の影響で約30万トン分の品質が低下。白く濁った米や割れた米ができて、精米段階で除かれたんです。米の等級検査は秋の出荷時に行なわれますから、農水省は被害粒による30万トンの供給減少は把握できていたはずです。合計で民間在庫は前年同月比で40万トン少なくなり、スーパーの店頭から米がなくなったのです。
スーパーのコメの平均価格は、5キロ4316円で最高値を更新しました。新米が流通した後もなぜコメの価格が上がり続けるのか、コメ農家や卸業者を取材しました。


コメント