
ドル円の最新動向|FRBの政策転換を受け、レンジ相場へ
10月のアメリカの連邦準備制度理事会(FRB)のFOMC会合で、政策金利の誘導目標が0.25%引き下げられ、「3.75〜4.00%」となりました。あわせて、12月1日からは量的引き締め(QT)を停止する方針も示されました。声明文や記者会見では「12月に追加利下げを行うかは未定である」とされています。
物価動向を見ると、9月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で総合・コア(食料とエネルギーを除く)ともに+3.0%と、落ち着きを見せています。景況感は強弱が分かれており、製造業は弱めの指標が続く一方、サービス業は堅調です。
米国の長期金利(10年物国債利回り)は「4%前後」で安定しており、日米の金利差に大きな変動はありません。このため、現在のドル/円相場は、上下に振れやすいものの、一方向に大きく動くことが考えにくい「レンジ相場」の局面です。
為替相場の現状
今回の利下げは「雇用や景気を過度に冷しすぎないため」の措置ですが、FRBは「やり過ぎない」という慎重な姿勢も維持しています。結果として、米国の長期金利がわずかに上昇するだけでも日米金利差が意識され、ドルが買われやすい地合いは続いています。一方で、12月の追加利下げ観測が後退するとドル/円の上値は重くなりやすく、金利の小さな動きにドル/円レートが左右されやすい状況です。
重要発言
パウエルFRB議長は「12月の判断は白紙である」「現在の政策はまだやや引き締め的だ」と述べています。FRBの理事や地区連銀総裁の間でも、追加利下げに積極的な意見と、様子を見たいという意見が混在しています。当局者の一言で金利や為替が動きやすい、デリケートな時期が続いていると言えます。
物価と経済の最新状況
インフレは低下傾向にありますが、そのペースは緩やかです。エネルギー価格の変動が落ち着く一方で、家賃や人件費に関連するサービス価格は依然として根強く、インフレの重石となっています。
景気指標では、ISM製造業景気指数は弱めですが、外食や旅行といったサービス関連のISM非製造業景況指数は拡大・縮小の境界である50を上回り、好調を維持しています。
市場のムード|投資家の受け止め
10月の利下げ後、市場では「12月の追加利下げ」に対する見方が強まったり弱まったりと、日々揺れ動いています。将来の金利見通しは定まっていません。
為替の先物市場では「円売り・ドル買い」のポジションが多く積み上がっています。これは相場上昇の燃料となり得ますが、重要な経済指標の発表や金融政策会合をきっかけに流れが反転した場合、ドル安・円高の動きが加速するリスクもはらんでいます。
今後の見通し
当面のドル/円は、「米国の長期金利の小刻みな動き」と「12月の追加利下げの不透明さ」に左右され、方向感の出にくい展開が予想されます。想定される流れは以下の通りです。
- 需要: サービス業を中心に需要は底堅く推移する。
- 物価: インフレは緩やかに鈍化するが、FRBの目標である2%との差は残る。
- 金融政策: FRBは「やや引き締め気味」のスタンスを維持しつつ、雇用情勢の悪化が見られれば追加緩和の可能性。
リスクは上下両方向に存在します。物価の粘着性が強まれば12月の利下げが見送られ、長期金利が4%台前半へ戻し、ドル/円は上昇しやすくなるでしょう。逆に、製造業の悪化など景気の弱さが鮮明になれば、連続利下げ観測が再燃し、金利差縮小からドル/円の上値は重くなります。
これからの主なイベント
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12月9〜10日:FRB会合(FOMC)
経済見通しも公表。追加利下げの有無と、来年以降の金利見通しが焦点。 -
11月26日:個人消費関連の物価指標(PCEデフレーター)
FRBが最も重視するインフレ指標。コア指数の鈍化ペースが鍵。
テクニカル分析 – USD/JPY日足チャートの詳細解説(2025年11月17日時点)
テクニカル指標が示すもの
日足チャートでは上昇基調が継続しています。ローソク足は10日移動平均線(MA10=約154円前後)の上で推移し、押し目も浅い状況です。RSI(9)は50超〜60台で安定しており、過熱感(70超)はないため「上向きの勢いは保ちつつ、過熱しすぎでもない」状態と解釈できます。直近高値155.04円手前での横ばいは上昇途中の“いったん休憩”の形であり、ここを抜ければ一段高、失敗すればMA10までの調整が入りやすい配置です。
今後のシナリオ
【上昇】
終値で155.04円を明確に上抜けた場合。RSIが65〜70へ再上昇すればブレイクの信頼度が高まります。次のターゲットは155.80〜156.00円です。
【横ばい継続】
154.00〜154.20円(MA10の近辺)を維持しつつ、155.04円直下での推移が続くパターン。RSIは50超〜60台を推移し、「強いが決め手に欠ける」状態が続く可能性があります。
【下落】
終値で153円台後半を割り込むか、RSIが50を下回ると短期的な強気ムードは後退します。まずはMA10までの調整、失速すれば152円台後半までの下落リスクがあります。
注意すべき点
- 現在は、経済指標や要人発言で、上下に長いヒゲ(急激な値動き)が出やすいゾーンです。ですのでトレード判断は終値を基準にすることを優先してください。
- 155円台後半は心理的な節目が密集しています。上抜けても伸びが鈍れば、利益確定を優先する判断も重要です。
- ブレイク直後は“だまし”が起こりやすいため、直下に明確な撤退ラインを置きましょう。
今後のトレード戦略 まとめ
- ブレイク継続型: 終値で155.10円超→上抜け確認とみなしエントリー。目標は155.80〜156.00円。撤退は154.40円が目安。
- 押し目優先型: 154.00〜154.20円(MA10あたり)での反発を確認後にエントリー。終値で153.60円を割り込んだら仕切り直し。
- 今は様子見型: 終値で153円台後半を割り込むか、RSIが50を下回ったら強気のポジションを縮小。
要点は、「155.04円を終値で抜けるか」と「MA10(約154円)を終値で守れるか」の二つです。この分岐点に素直に対応することが有効と考えられます。
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