
18日の香港市場は軟調か。市場では米連邦準備理事会(FRB)の年内利下げ観測が後退しているほか、AIへの過剰投資に対する警戒感もくすぶっており、AIや半導体など関連銘柄に売りが広がる可能性もある。また、米国では10月28-29日開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が公開されるほか、20日には9月の米雇用統計が発表されるとあって、様子見ムードも強まりそうだ。
一方、中国当局による景気対策への期待は強いほか、企業の決算発表などを材料に個別物色の動きが予想される。18日は小米集団(01810)や百度(09888)、ウェイボー(09898)などが7-9月期決算の発表を予定している。
17日のNY株式相場は下落。バークシャー・ハサウェイの取得が明らかになったアルファベットが3%超上昇したものの、水曜日引け後に決算発表を控えるエヌビディアが一時3%超下落したことや、政府閉鎖により発表されなかった米9月雇用統計が木曜日に公表されると労働省が発表したことで、重要指標の発表を控えた様子見姿勢も強まった。10月3日に発表予定だった9月雇用統計は、政府再開後初めての重要指標の発表となる。同日の香港株の米国預託証券(ADR)は、美団(03690)やテンセント(00700)、アリババ集団(09988)、HSBC(00005)などが香港終値を下回って引けた。
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
現在の需要は旺盛で 今後も堅調に推移する見通しです
2025年5月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)が前月末比5.10%の上昇、日経平均株価も同5.33%の上昇となりました。当月の日本株式市場は、月前半に大幅上昇した後、月半ばに調整を挟みつつも月後半にかけて持ち直し、レンジ内での回復基調を維持したまま当月を終えました。 月前半は、前月末から続く米国の関税交渉進展への期待が支援材料となったことや、日銀が展望リポートで実質GDP成長率と物価上昇率の見通しを下方修正し追加利上げに慎重な姿勢を示したことや進行した円安も相まって、株式市場は堅調に推移しました。こうした中、米英貿易協定の合意や米中双方による市場の想定以上の関税率の引き下げを受け、指数は大幅に上昇しました。月半ばには好材料が一巡したことに加え、円高・ドル安の進行や、米国債格下げをきっかけに米国の財政悪化懸念が高まったことも相場の重荷となりました。月後半にかけては、米国による対EU追加関税の延期や、日本国内での超長期国債発行計画の見直し観測による円安の進行等により主力株を中心に買いが入り、日本株式市場は再び上昇に転じました。さらに、28日に米国際貿易裁判所がトランプ政権の関税政策を違法と判断し関税の差し止めを命じたことを受けて円安が加速し、株式市場も大幅高となりました。しかしその後、米連邦巡回区控訴裁判所が関税差し止めの執行を一時的に停止する判断を下したことでドル円相場とともに株式市場は反落しました。 結果として、米国の関税政策をめぐる不透明感に振り回されながらも、日本株式市場は前月末比で上昇して取引を終えました。
アジア株式市場の大半は、1月に堅調に推移した後、当月は下落しました。⽇本を除くアジア市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、6.81%下落して⽉を終えました。 これは主に、MSCI中国(米ドル建て)指数の同10.37%下落が影響しました。中国の経済活動再開を受けた消費回復に関する好調なデータにもかかわらず、米国領空内の中国の偵察気球疑惑を巡って米中間の緊張が再燃し、人民軍と関係する中国企業に対する制裁が強化されたことで、投資家心理は冷え込みました。また11月以降に大きく上昇していた中国のインターネット関連銘柄も、高まる規制懸念やJD.com社(中国)による積極的な補助金キャンペーンを契機とした価格競争の可能性を受けて、下落に転じました。 米国の力強いインフレおよび労働市場データも、米国利上げのペース加速と長期化に対する懸念を引き起こし、新興市場の株価に下押し圧力を加えました。インドの指数は当月もAdani危機が重石となり、Adani group社(インド)関連銘柄は大幅にアンダーパフォームしました。台湾のテクノロジー企業は、2022年第4四半期決算説明会で2023年第1四半期の低調な収益見通しを発表しましたが、一部の投資家はそれをサイクルの「底」と解釈し、一部企業の株価の下支え要因となりました。また、最近のChatGPT(AIチャットプログラム)の急速な普及が、半導体やメモリの需要増につながる可能性を指摘する声もあります。
2024年10月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比1.88%の上昇、日経平均株価は同3.06%の上昇となりました。 月前半は、全米企業エコノミスト協会の年次総会に登壇したパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が今後の利下げについて「急ぐ必要はない」と強調したことや、米国雇用統計が市場予想を大幅に上回ったこと等から利下げ観測が後退したこと、石破茂首相から日銀の早期の追加利上げに否定的な見解が示されたこと等からドル高円安が進行しました。また、中東情勢の悪化により株価が一時的に下落する局面もありましたが、前述のように円安の進行や米国経済の底堅さ、石破政権が岸田前政権の経済政策を継承するとの方針が確認されたこと等から株式市場は上昇いたしました。 月半ばから後半にかけては、オランダの半導体製造装置大手ASML Holding社の決算発表で2025年12月期の業績見通しが引き下げられたことで半導体関連株に売りが広がったことや、日米長期金利の上昇基調の継続が意識されたこと、27日投開票の衆議院選挙で与党自民・公明両党が過半数議席の確保が微妙な状況と報じられたこと等から株式市場は軟調な推移となりました。 衆議院選挙では連立与党が2009年以来15年ぶりに過半数を割り込む結果となり、今後の政権の枠組みは少数与党が政策や法案ごとに野党に協力を求める「パーシャル(部分)連合」になるのではないかという見方が強まりました。財政拡張的な政策を掲げる野党との協力により景気刺激的な政策が実行される可能性が意識されたことや、リスクイベント通過に伴う先物の買戻し等から株式市場は衆議院選挙を境に一転し、前月末比で上昇して当月の取引を終えました。
金属Zijinは幅広い金属の生産と取引を手がける鉱山会社です。主な取り扱い品目は金と銅で、それぞれ粗利益の40%強を占め、残りを亜鉛、銀、リチウムなどが占めています。したがって、同社の今後の鍵を握っているのは金と銅の動向です。当ファンドはどちらについても見通しは明るいと考えています。金は現在、各国中央銀行による買い増しや、先進国政府の財政リスク上昇に対するヘッジ需要の高まりという2つの要因から、相場が上昇しています。石油と異なり、金は消費によって目減りするものではなく、これまで採掘された金の大半は依然として流通しています。年間の新規採掘量は既存供給の約1.5%に過ぎず、供給が極めて非弾力的であるため、需要が価格の主な決定要因となります。現在の需要は旺盛で、今後も堅調に推移する見通しです。銅は送電に不可欠な工業用金属です。再生可能エネルギー、電気自動車(EV)、人工知能(AI)などに関連する電力インフラ投資が進む中で、銅の需要も拡大しています。防衛などその他産業でも消費量が拡大し、需要拡大の一因となっています。そうした要因は、長期的には中国の建設需要の減退を十分に補うと見ています。一方で、主要銅鉱山の枯渇が進み、銅の供給量は低下しています。さらに供給量の拡大に欠かせない採掘のコストも上昇しています。また、銅鉱山の新規開発には通常7年から8年を要するため、銅価格の上昇に即応することは困難です。価格抑制要因としては、価格が一定水準以上に上昇すれば銅スクラップが解決策となり得ることや、用途によってはアルミニウムが銅の代替となり得ることなどが挙げられます。ただし抑制要因が働いたとしても、銅価格は長期的に底堅く推移すると考えます。
2025年7月、日本株式市場の代表的な指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比3.17%上昇、日経平均株価も同1.44%の上昇となりました。 月前半の日本株式市場は、前月末の急騰を受けた利益確定売りが優勢となるなか、米国による相互関税の動向や参議院議員選挙で与党が苦戦するとの見通しなど、先行きへの不透明感が強まり、株価の動きは限定的となりました。また、米NVIDIAによる中国向けAI半導体の輸出再開報道や、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長解任を巡る話題など、強弱入り混じる材料が相次いだこともあり、株式市場は方向感に乏しく、もみ合いが続く展開となりました。 月後半に入ると、20日に実施された参議院議員選挙では、与党が非改選議席と合わせても過半数を獲得できなかったものの、市場では想定内の結果と受け止められたため、連休明けの22日の株式市場への影響は限定的に留まりました。翌23日には、日米通商交渉の合意が報じられたことで株価が一気に押し上げられ、24日のTOPIXは過去最高値を更新し、日経平均株価も急騰する展開となりました。その後は、急ピッチな株価上昇に対する過熱感から一時的な調整が入ったものの、月末には米ハイテク銘柄の好決算の影響などを受けて反発し、日本株式市場は前月末比で大幅高となって当月を終えました。
当月、⽇本を除くアジア市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア指数(⽇本を除く、⽶ドル建て)は、前月末比1.29%上昇しました。国別で見ると、シンガポール、中国などが上昇した一方、インド、韓国などは下落しました。当月、中国の上海総合指数は10年ぶりの高値に達しました。一方、インドは、米国から50%という想定外の懲罰的関税を課されたことで、市場が低迷しました。 中国市場が上昇したのは、素材セクターと情報技術セクターが好調なパフォーマンスを記録したことによるものです。中国政府の「反内巻政策(中国国内における過度な価格競争や生産過剰の抑制を目指す政策)」によって景気循環銘柄の株価が押し上げられ、AI(人工知能)やロボット関連への設備投資の勢いが底堅かったことが、テクノロジーセクターの株価上昇要因となりました。さらに、香港市場はストックコネクト制度(上海証券取引所と香港証券取引所の相互間で行われる人民元建て上場株式の取引)により、中国本土から記録的な資金が流入したことも追い風となりました。これは中国本土の投資家が香港の上場株式に高い関心を持っていることを示しています。 一方、インド市場では、トランプ米大統領がインドのロシア産石油購入について、インドに対し25%の追加関税を課すという予想外の発表を行ったことで、株価が急落しました。この措置により、インドの対米輸出に課せられる関税率は当月後半から最大50%に拡大しました。これによりインドは他のアジア諸国より不利な立場に置かれ、主要輸出セクター、とりわけ繊維・衣料、資本財、宝石・宝飾品などに影響が及ぶ見通しです。 インドネシアでは当月後半に主要都市で国会議員の住宅手当の引き上げに対する抗議デモが発生しましたが、これは生活費の上昇と所得格差の拡大に対する国民の不満が高まっていることを示しています。この事態を受けて、プラボウォ大統領は議員手当を一部見直すと発表し、国民感情の鎮静化と市場の信頼回復に努めています。
同社はさらに、自社ローカルサービスの「Amap」への組み込みを強化すると発表しました。Amapは中国最大の地図アプリで、同社が保有するもうひとつの優良資産です。クイックコマースと主力事業のシナジー効果を発揮できれば、同社はクイックコマース事業を手がけていないPinduoduoやDouyin、Kuaishouなど新規参入組に対する優位性を取り戻すことができると考えます。 当ファンドは引き続きAlibabaの事業を注視していきますが、同社は正常な軌道に戻っていると考えています。Alibabaの主力事業は全般的に成長軌道に戻り、クイックコマース投資がまだ収益性改善に寄与していなかった2025年3月期から今後5年間で、セグメント調整後EBITA(利息・税引・無形固定資産減価償却前の当期純利益)の年平均成長率は最低でも5%に達する見通しです(当ファンドの考えでは控えめな数字)。さらに国際事業は黒字化し、クラウド事業も急成長を続ける見込みです。こうした点を総合すると、グループ調整後EBITAの年平均成長率は10%台前半に達するでしょう。加えて、同社は自社株買いを続けて発行済み株式総数を減らし、10%台半ばのEPS(一株当たり純利益)成長率を実現すると考えられます。 したがって今後、同社がクイックコマース、フードデリバリー事業とローカルサービス事業で確固たる地位を築くことに成功すれば、既存事業のeコマースからクイックコマースとフードデリバリー、ローカルサービスにまで広がる事業を大規模に展開し、消費者の日常的ニーズをもれなく充足できる中国で唯一の企業へと脱皮できるということになります。また、将来的には有料会員サービスのバンドルなどを通じてエンゲージメントを強化し、さらなるシナジー効果を生み出すこともできると考えています。
2023年12月、山本由伸投手のロサンゼルス・ドジャースへの移籍が発表されました。オリックスへの譲渡金は5,062万5千ドル(約72億円=為替レートは入団合意時)になる見通しです。12年で総額3億2,500万ドル(約465億円)という契約金は、おそらく投手としての最高額でしょう。スポーツビジネスは基本的にセレブリティ、すなわち有名人の人気にあやかったビジネスです。ファンたちは競い合ってチケットやグッズなどを購入し、売り上げに大きく貢献します。2023年9月の月次報告書でお話しした通り、インターネットでコンテンツを配信できるようになったことで、世界中の人に情報を届けることがこれまでよりはるかに容易になりました。よって、こうしたビジネスの収益力は大幅に拡大していると考えます。有名になることはいつの時代でも素晴らしいことですが、今はこれまでにない最高なタイミングと言えるでしょう。 ではどうすればセレブリティに投資できるのでしょうか。さらに言えば、有名人の収益力を生かせる優良企業はどうすれば見つかるのでしょうか。当ファンドは防弾少年団(BTS)、SEVENTEEN、LE SSERAFIM、NewJeansといったK-POPグループが所属し、さらに2021年にはジャスティン・ビーバーやアリアナ・グランデが所属しているIthaca Holdings社(米国)の買収した、HYBE(韓国/メディア・娯楽)に投資してきました。しかしセレブリティたちは有名になると交渉力を得て、より高い給与を要求したり、また仕事を選り好みしたり、働く意欲が低下する可能性があります。そしてやがては年を取り、引退していきます。したがって、そうした心配のない有名人を抱えるほうがはるかに良いということになります。その最たる例が2023年10月に組み入れを開始したサンリオで、同社は「ハローキティ」、「シナモロール」、「クロミ」、「ポムポムプリン」、その他知財を多数所有しています。
2024年9月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比1.53%の下落、日経平均株価は同1.88%の下落となりました。 月前半は米国のISM製造業景況感指数や雇用統計が予想を下回ったことで、米国経済の減速懸念が高まり市場心理に影響を与えました。さらに米連邦公開市場委員会(FOMC)による利下げ期待と日銀の利上げ期待の高まりにより、月半ばにかけて円高が進行しました。このような状況の中、株式市場は一時的に下落した後、反発が見られたものの上値は重く、投資家は慎重な姿勢を維持しました。 月後半はFOMCが0.5%の利下げを決定した後、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が緩和を急がない姿勢を示したことや、日銀が金融政策を現状維持したことから円高が一服し、輸出関連株や半導体関連株の買い戻しが進みました。また、自民党総裁選挙で高市早苗氏が当選し、金融緩和が再開されるとの見通しが高まったことで日経平均株価は26日から27日にかけて大きく上昇しました。しかし、最終的には石破茂氏が勝利し、経済政策への警戒感が高まったことなどから30日の日本株式市場は全面安の展開となり、前月末比で下落して当月の取引を終えました。
当ファンドはこのところのモメンタム株の急騰、とりわけ米国とアジアの一部地域における急騰は警戒が必要だと考えています。世界の株式市場が現在の上昇基調に入ったのは2023年ですが、それから現在まで「押し目買い」戦略(株価が上昇トレンドにある際に、一時的に株価が下がったときに株を購入する投資手法)が非常にうまく機能したことで、投資家の間に押し目を拾い続けようという心理が生まれました。これは賢明な戦略となり得ます。なぜなら、投資家が、市場の転換点を早期に認識し、多少の損失を受け入れて撤退するだけの賢明さを持っていれば、投資家が判断を誤るのは一度だけ、つまり市場が本当に転換した時点だけで済むからです。しかし、たいていの投資家は自制心に欠け、市場が反転したことが明らかになっても押し目買いをやめられず、下落相場でナンピン買い(価格が下がった株を買い増し、平均取得単価を下げる手法)を続け、さらに悪いことには、結局はバブルで終わってしまうような急騰株を買い続けたりします。米国とその他の国との貿易協定によって今後の見通しはかなり立ちやすくなったものの、市場の不透明感は依然払拭されていません。当ファンドは米中関係の動向に加え、関税の影響が本格的に表れてきた時点で米国の経済とインフレがどう転ぶかを引き続き見守りたいと考えています。これらの問題は、どちらも市場の行方を大きく左右させうるものです。モメンタム株主体の上昇によって一部保有銘柄のバリュエーションが割高になったことを踏まえ、当ファンドは当月、成長率は低くても事業が強固で耐久性に富み、バリュエーションが割安で、配当の高い銘柄、例えばオリックス(金融サービス)、伊藤忠商事(資本財)、光通信(資本財)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(銀行)などにポートフォリオを選択的にシフトしました。 2023年から現在までの実績を振り返ると、当ファンドのパフォーマンスに大きくプラス寄与した銘柄は、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company、MakeMyTrip(インド/消費者サービス)、ソシオネクスト(株価が上がり切った時点で売却済み)、サンリオ、Samyang Foods(韓国/食品・飲料・タバコ)といった高成長銘柄でした。一方で、HSBC Holdings(香港/銀行)、三菱UFJフィナンシャル・グループ、Tencent Holdings(中国/メディア・娯楽)といった株主還元が高く、より安定的な銘柄からも堅実なリターンを得ることができました。当ファンドでは、目覚ましいリターンをもたらすのは主に高成長銘柄だと考えています。定義上、利益成長率が一桁台半ばしかない企業は、株価がきわめて割安な時点で購入し、大幅な評価見直しが実現しない限り、株主に目覚ましいリターンをもたらすことはほぼできません。そうした高成長銘柄の好例が既に売却済みの三菱商事(2023年2月の月次報告書を参照)への投資でした。このように目覚ましいリターンをもたらすのが高成長銘柄なら、なぜ高成長銘柄を組み入れないのかと疑問に思う方もおられることでしょう。 現在のような強気相場では、高成長銘柄が最高のリターンをもたらすので、それだけを保有すべきだ、と言うのは簡単です。実際に当ファンドも以前はそうしたアプローチで臨みました。そして2022年に成長株の弱気相場が到来した際に、大幅なアンダーパフォームに苦しむことになったのです。現在はまさに当時と同様の環境なので、あの時に得た教訓を思い出して慎重になるべきなのです。 当ファンドの目標は、適正で比較的安定したリターンを上げることです。まず、私が考える「適正なリターン」とは何かを明確にしたいと思います。米ドルのリスクフリーレート(リスクがほとんどない商品から得られる利回り)がおよそ4%であることを考えると、年間リターンが米ドル建てで10%台半ばというのが適正であると考えます。実際に、年率15%でポートフォリオを複利運用すると、5年後には約2倍になります。当ファンドが組入銘柄で許容できるリターンの最低値は、確実性が高く安全な銘柄であれば10%台前半です。
同社の成長戦略は、地域やキャラクター、顧客との関わり方を広げる、という当ファンドの望む方向に向かっていると考えます。特に「第3の矢」は、ゲーム、デジタル、リアル体験などを通じて、顧客とのタッチポイントを強化する計画です。同社の豊富な知的財産ポートフォリオは、適切なデジタル戦略の助けを借りて、これらすべての面で成果を上げる強さを備えていると見ています。 サンリオは今後3年間で、グローバルコンテンツ開発、ゲーム開発、デジタルエンターテインメントなどに300億円の投資を計画しています。また、同社はM&Aや資本提携等の機会に備えて500億円を確保しています。デジタルゲームやアニメへの進出についてはより多くの投資を必要とするため、同社の投資規律が失われるのではないかという懸念が株式市場から出ていますが、当ファンドは経営陣と面談を行い、同社がこのような懸念を十分に認識していることを確認しました。当ファンドは、同社の大半の取り組みがパートナーによってサポートされているため、同社が大きな投資をする必要はないと考えています。例えば、Alibaba Group Holding社(中国)傘下の動画共有サービス「Youku」と提携してアニメを制作していることなどが挙げられます。一方、アニメはサンリオが取り戻すべき重要な機会でもあります。2000年代には、サンリオには「おねがいマイメロディ」のような人気アニメがありました。「おねがいマイメロディ」の登場キャラクターであるクロミの根強い人気は、彼女のユニークな個性(例えば、乱暴者に見えるけれど、実はとっても乙女チック!?イケメンがだ〜い好き。)が貢献していると考えます。よくできたアニメシリーズは、キャラクターを宣伝するのに非常に効果的なツールであり、サンリオにとって実績のある流れです。しかし、サンリオのキャラクターにはシリアスなストーリーがないことを考えると、映画に向いているのかどうかということについては懐疑的です。一方、当ファンドの保有銘柄でもあるバンダイナムコホールディングス(耐久消費財・アパレル)のガンダムシリーズは、ロボットを「モビルスーツ」という「兵器」として扱ったリアルな戦争描写や緻密な科学考証、複雑に織り成す深い人間ドラマがとても深く、映画に向いています。 同社はMTPの中で、成長戦略のほかにも財務力と株主還元にも触れています。1つの重要な目標は、事業のボラティリティを低減し、どんなに厳しい環境下でもROE(株主資本利益率)15%以上を維持することです。また、サンリオは配当性向30%以上を目標に掲げており、余剰があれば株主還元を上乗せする可能性もあります。事業のボラティリティを低減させるというコミットメントは当ファンドが期待した方向に進んでいますが、配当性向が30%というのは、キャッシュフローを生み出す事業であることを考えると十分とは言えないため、当ファンドは同社に提言を続けていく予定です。 全体として、同社のMTPは様々な面で正しい方向に進んでいると考えます。同社はこれまで当ファンドに素晴らしい結果をもたらしてくれましたが、問題は株価が上場来高値を更新している現在でも魅力的な投資先であるかどうか、ということです。まず、同社はMTPで2027年3月期までに営業利益400億円以上と目標を掲げています。しかし、2025年3月期第2四半期決算で、同社は2025年3月期の営業利益の見通しをすでに410億円に上方修正しています。また同社は、年間計画を提示する際に保守的な数値を出す傾向があることから、営業利益410億円を超えることができると当ファンドでは考えています。現在の時価総額は約1兆円で、予想PERは30倍を超える水準となります。これは見た目には安くはありませんが、当ファンドは多くの優れた企業がグローバルに拡大する際にこうした状況を見てきました。ファーストリテイリング社やアシックス社を例にとれば、株価は決して安くはありませんが、好業績を背景に堅調に推移しています。株式市場はこれらの本当に優れた企業の可能性を一貫して過小評価してきました。当ファンドはサンリオの可能性について次のように考えています。
当⽉、当ファンドのパフォーマンスは前⽉末⽐7.38%の上昇、参考指数のMSCI AC Asia Index(円ベース・配当込み)は同6.86%の上昇となりました。 当⽉パフォーマンスにプラスに貢献した銘柄は、ソシオネクスト(半導体・半導体製造装置)、Classys(韓国/ヘルスケア機器・サービス)、三菱商事(資本財)などでした。一方、Indian Energy Exchange(インド/金融サービス)、FOOD & LIFE COMPANIES(消費者サービス)、H World Group(中国/消費者サービス)などがマイナスに影響しました。 当ファンドは当月、インドネシア企業の調査を目的にジャカルタを訪問し、銀行、生活必需品、鉱業、通信、自動車部品など、様々な業界の企業と面談を行いました。インドネシアの状況は、新型コロナウイルス感染症の拡大以降、大きく変化しています。中でも顕著なのは、同国が製造業の川下への移行を進めていることです。同国はかつて、天然資源の一大輸出国でした。しかし、資源の輸出によって経済は天然資源価格の変動に晒され、付加価値もあまり生まれませんでした。そこでインドネシア政府は川下製造業の発展に力を入れるようになりました。その中できわめて有望な分野がEV(電気自動車)です。同国は一部のEVバッテリーの製造に不可欠な金属であるニッケルの埋蔵量が豊富です。同国は電池素材の製造インフラを構築中で、さらに川下産業であるEV用電池の製造を目指しています。それを裏付けるかのように、Contemporary Amperex Technology社(中国)やLG Energy Solution社(韓国)といった世界的なEV用バッテリー企業がインドネシアへの投資を進めています。同国が川下産業への移行に成功すればアジア地域のEV製造の架け橋になる可能性があり、それは同国に大幅な経済成長をもたらすと当ファンドは考えております。 企業調査の中でもうひとつ目についたのは、インドネシアにおける韓国製品の人気です。ジャカルタのレストランやショッピングモールに入ると、BGMがたいていK-POPであることに気づきます。消費財には韓国アイドルの顔が印刷され、韓国の即席麺や化粧品も人気です。また、インドネシアの企業が韓国製に似せた製品を販売しているものもありました。SM Entertainment(韓国/メディア・娯楽)所属の人気ガールズグループである「aespa」は、当月ジャカルタでのライブツアーを終えたところです。当ファンドはK-POPや韓国食品をはじめとする韓国製品の海外輸出動向をきわめてポジティブに捉えています。 当ファンドが面談した大手消費財企業の一部は、従来と同様の戦略を貫き、利益を上げながら着実に成長しています。インドネシアの消費者の志向に一貫性があり、変化が起きにくいことは、きわめて魅力的な特性です。インドネシア国内に大きな可能性がある一方で、一部のインドネシア企業は既に海外に目を向け、国外で成功を収めているものもあります。例えば、国内最大級の即席麺メーカーであるIndofood CBP Sukses Makmur(インドネシア/食品・飲料・タバコ)は、アフリカ地域や中東地域で好業績を上げ、ナイジェリア、エジプト、トルコなどで圧倒的な市場シェアを持っています。これらの国は人口が多く、即席麺の消費量がまだまだ低水準です。同社がこうした市場で継続的に地位を高め、アフリカ地域以外の国に進出することができれば、市場規模はインドネシアよりさらに大きくなる可能性があります。同社の海外事業は2022年に前年比約19%成長し、売上寄与度はおよそ30%近くに達しています。 ところで、新型コロナウイルス感染症の大流行によって様々な変化が起きたのは確かですが、変化していないこともあります。例えば、医療サービスの需給ギャップは依然大きく、拡大を続ける同国中間層の需要を満たすには供給がまだまだ不足しています。したがって、医療セクターには大いに投資機会があるとみてよいでしょう。 全般的にみて、当ファンドが話を聞いた現地の人々は比較的将来を楽観視していると感じられました。これはデータでも裏付けられており、インドネシア中央銀行の消費者信頼感指数(IKK)は過去最高値圏で推移しています。こうした楽観主義は今後数十年にわたって同国の成長の原動力になる、というのが当ファンドの見方です。インドネシアの未来を楽観視しているのは当ファンドも同様で、当ファンドは参考指数であるMSCI AC Asia Indexを上回る比率で同国銘柄を組み入れています。 なお、当ファンドは当月、ソシオネクスト(半導体・半導体製造装置)の組入比率を大幅に引き下げました。当ファンドは前年末より同社に投資を開始し、保有比率を引き上げていました。同社は自動車、5G(第5世代移動通信)ネットワーク、家電製品など、幅広い用途の顧客向けにカスタマイズされた半導体を設計する半導体設計サービスプロバイダーです。半導体は新しい石油のような存在で、その重要性はかつてないほどに高まっており、多くの企業が自力で半導体を設計することで、自社製品の性能を最適化しようと取り組んでいます。しかし、企業の多くはApple社(米国)やTesla社(米国)のようなリソースや能力を持ち合わせておらず、半導体を自社で全面開発することはできないため、ソシオネクストのような設計サービス企業と契約することで、カスタム半導体の設計と開発を行う必要があります。したがって、同社のような設計サービス企業は半導体市場全体を上回るスピードで成長する可能性があると考えられます。当ファンドは同社が自動車向けの半導体を多数手がけていることを高く評価しており、自動車向け半導体は製品サイクルが長期化する傾向にあり、さらに車載コンピュータの要件が厳格化してきていることで需要拡大が見込めると考えております。同社の株価は当月半ば、生成型AI(人工知能)の登場によってカスタマイズ型半導体需要が拡大するという期待感から、大幅に上昇しました。当ファンドでは、同社の高性能AI関連コンピューティングにおける立場はGlobal Unichip社(台湾)やAlchip Technologies社(台湾)といった競合他社ほど強くないと考えています。したがって、今回の株価上昇要因には何らかの読み違いがあり、短期的にみて過度な上昇であると考えています。そこで当月の上昇局面では組入比率を継続的に引き下げ、当月後半の株価調整直前に保有株式の半数以上を売却しました。長期的な見通しは依然良好であること、株価調整後のバリュエーションは適正に近いと考えられることから、引き続き少額のポジションを保有し、株価が大幅な割安水準に低下した時点で再び買い増す予定です。 一方、今年5月に組み入れたばかりのJSR(素材)は、日本の政府系ファンドである産業革新投資機構(JIC)からの9,040億円の買収提案を受け入れると発表しました。同社は半導体製造に不可欠な化学薬品であるフォトレジストの製造で世界をリードする企業です。同社がJICに買収されて最終的に上場廃止になれば、それは日本の半導体材料セクター再編の足掛かりとなるでしょう。半導体の重要性が世界的な高まりを見せるなかで、日本政府は自国半導体産業の競争力強化に向けた措置を講じています。日本の株式市場は、株主還元が改善することへの期待感から好調に推移しています。しかし、自社株買いや配当だけでは市場の持続的な上昇を促すには不十分であると当ファンドは考えます。政府が業界再編を主導するのもひとつの方法かもしれませんが、結局のところ企業は構造的に強くなり、いかに利益を上げるかを考える必要があります。当ファンドは同社の株価が買収報道を受けて上昇したあと、同社株式を売却しました。 2023年はここまでソシオネクスト(半導体・半導体製造装置)、ルネサスエレクトロニクス(半導体・半導体製造装置)、Samsung Electronics(韓国/テクノロジー・ハードウェアおよび機器)といった半導体関連の組入銘柄が大きくリターンに貢献したため、同セクターで引き続き新銘柄を発掘していく予定です。半導体のサプライチェーンは非常に長くて専門性が高く、国によって強みが異なります。例えば、台湾にはTaiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾/半導体・半導体製造装置)があり、その周辺で多数の設計会社がエコシステム(企業同士が協業・連携することで共存していく仕組み)を形成しています。一方、日本には世界有数の半導体材料や機器を取り扱う企業があり、異なる特徴を持つ企業がサイクルの様々な部分に棲み分けています。当ファンドの優位性は⽇本と他のアジア地域に資本を柔軟に配分できるという点にあり、当ファンドはアジアの半導体に対する投資機会を活用する上で有利な立場にあると考えています。
2025年9月、日本株式市場の代表的な指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比2.98%上昇、日経平均株価は同5.18%上昇いたしました。 月前半は、Alibaba Group Holding社(中国)による新AI(人工知能)チップ発表をきっかけに米中の技術競争激化が意識され、米国のAI関連株が軟調となり、日本株式市場でもハイテク株中心に下落いたしました。その後、トランプ米大統領が日米間の自動車関税引き下げを盛り込んだ大統領令に署名したことが安心感につながり、相場は持ち直しました。 月半ばにかけては、米国雇用統計が市場予想を下回り、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ観測が高まったことや、石破茂首相の辞任表明を受けて次期政権への政策期待から日本株式市場は上昇しました。米国株式市場では半導体やAI関連銘柄が市場を牽引し、日本株式市場でも関連株の物色が広がったほか、その他幅広い銘柄に買いが波及しました。日経平均株価やTOPIXは高値更新を続け、相場上昇のモメンタムが継続しました。 月後半は、FOMC(米連邦公開市場委員会)で利下げ再開の決定と年内の継続的な利下げ見通しが示されました。翌日の日銀金融政策決定会合では、政策金利は据え置かれたものの2名の審議委員が利上げを提案し10月の利上げ確率が上昇した他、保有するETF(上場投資信託)の売却を決定したことで指数が一時急落しましたが、売りが一服すると下げ幅を縮め、相場は底堅さを維持しました。 月末にかけては、米国経済指標が堅調だったことから米国の積極的な利下げ期待が後退し、米国株が反落した流れが波及した他、自民党総裁選を控えていることなども重なって日本株式市場は軟調に推移しましたが、月全体としては前月末対比大幅高の水準で当月の取引を終えました。
当月、アジア株式市場はまちまちの値動きとなりました。⽇本を除くアジア市場に使⽤される⼀般的な指数であるMSCIアジア(⽇本を除く、⽶ドル建て)指数は、台湾、シンガポールなどに牽引される形で前月末比1.58%上昇しました。当⽉パフォーマンスが振るわなかった市場は、インドネシア、フィリピン、韓国などでした。中国市場と香港市場は前月以降の堅調な上昇基調を維持しました。中国政府は当月、不動産セクターに対する政策支援を発表し、地方政府の支援を通じて落ち込んだ不動産市場の安定化を図る意向を示しました。一部投資家の間に中国の不動産セクターは最悪期を脱した可能性があるという見方があることから、MSCI中国不動産指数は過去2か月でおよそ17%上昇しました。 AI(人工知能)関連銘柄は前月に一時的な調整局面に入りましたが、当月は堅調な上昇基調を取り戻しました。NVIDIA社(米国)が好調な業績と見通しを発表したことは、アジアのAIサプライチェーン全体、とりわけ台湾と韓国のハイテク銘柄に恩恵をもたらしました。アジア地域でデータセンターの需要が旺盛であることから、Microsoft社(米国)、Alphabet社(米国)、Amazon.com社(米国)、NVIDIA社などはASEAN諸国に多額の投資を行い、域内の有能なエンジニアと低い運営コストを最大限に生かそうとしています。 インド市場は小幅な値動きで推移しましたが、これは投資家が選挙の行方を見定めようとして待ちの姿勢をとったためだと考えられます。モディ首相が続投して3期目に突入し、現行政策を継続して経済成長を推進するというのが大方の予想となっています。 インドネシア市場は企業業績やマクロデータの低迷や前月に発表された予想外の利上げの影響で軟調なパフォーマンスに終わりました。
当月前半、米国のトランプ前大統領のホワイトハウス復帰が決定しました。さらに議会でも共和党が上下両院で過半数の議席を獲得したことを受けて市場は乱高下しました。トランプ氏は政策について明確な方向性を打ち出しており、再任後に貿易と移民の制限強化、新たな減税策の導入、規制緩和が行われることは間違いないでしょう。そうした政策の中には経済に対して相反的な影響を与えるものもあるため、今後の見通しがまったく立ちません。例えば関税の引き上げはトランプ氏が望む米ドル安とは逆の効果をもたらします。同時に予期せぬ結果を招くことも少なからずあるでしょう。トランプ氏がパリ協定からの再離脱をちらつかせ、化石燃料の利用を後押しする姿勢をみせていることは、足元の事業環境への影響だけでなく、長期的に重大な気候変動リスクをもたらします。 アジア諸国おいて、トランプ氏の言葉通りに中国製品に最大60%の関税が課されれば、最も直接的な影響を受けるのは中国と考えられます。すべての商品に一律に関税が課される可能性は低いものの、中国に対する依存度に応じて様々な税率が課されるでしょう。一方、中国経済の成長鈍化は短期的にアジア全域に影を落としかねません。また、人民元の下落が予想されることから、その連鎖反応でアジア全域に通貨安が広がる可能性があります。ただし、中国の政策対応、特に国内経済を刺激するための政策次第で状況は変わるでしょう。短期的な地域経済への影響を乗り越えた先には、米中貿易戦争の再燃が「チャイナ・プラスワン」(海外拠点を中国へ集中させることによるリスクを回避し、中国以外の国・地域へも分散して投資する経営戦略)を加速させ、長期的には他のアジア諸国に恩恵をもたらすと考えられます。実際、2018年に発生した前回の米中貿易摩擦以降、ASEAN諸国は外国直接投資(FDI)の流入において明確な恩恵を受けており、この流れがさらに加速する可能性があります。 しかしながら、最終的には各国の政策対応に大きく依存するため、予測は困難です。明確な見通しが得られるまで、景況感は弱含むと見られますが、不透明感がなくなれば力強い回復が期待できると考えます。当ファンドはマクロ経済の問題を乗り越えられる強固な事業基盤を持つ銘柄へ投資するという戦略にしたがって、アジア全域に分散投資を行っています。同時に状況を慎重に注視し、可能な限り機動的に対応しています。現時点では慎重な姿勢を維持し、国内事業に軸足を置いた企業を優先的に組み入れています。



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