
18日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、日銀の早期利上げ観測の後退や日本の財政悪化懸念から円売り・ドル買いが優勢となり155.73円まで上昇した。ユーロドルは、1.1608ドルから1.1572ドルまで下落した。ユーロ円は、高市政権の積極財政への懸念から180.29円まで上昇し、1999年のユーロ導入以来の高値を更新した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、本邦通貨当局による円安対応策に警戒していく展開となる。
ドル円は、本邦通貨当局の第1防衛線と警戒されてきた155円台に乗せてきており、口先介入の緊迫度合いを見極めながら、第2防衛線と警戒されている160円までの間のどの水準でドル売り・円買い介入に踏み切るのかを見極めていくことになる。
三村財務官は、「主な懸念は為替の過度なボラティリティーであり、水準ではない」と述べており、神田前財務官と同様にボラティリティーをドル売り・円買い介入の判断基準にしていると思われる。
過去最大規模の円買い介入を断行した神田前財務官は、「ボリンジャー・バンド+2シグマ」の上抜け局面と目安としており、本日の「+2シグマ」水準である155.80円の上抜けには警戒しておきたい。
また、円買い介入の警鐘となる口先介入は、「必要であれば適切な措置を講じる」「行き過ぎた相場の動きに対してはあらゆる措置を排除しない」「投機的な相場の動きに対しては断固たる措置を取る用意」などがあり、これまでのところは緊急性が感じられない段階にある。
昨日高市首相と初めての会談に臨んだ植田日銀総裁は、「為替についても議論したが、具体的な内容については差し控える」とし、ファンダメンタルズに沿って、安定的に推移することが望ましいとした上で、「政府と連携して為替の動向およびその経済への影響について注視していきたい」と述べている。また、金融政策への要請は「特になかった」とのことである。
昨日の東京市場は、高市首相の経済政策「サナエノミクス(責任ある積極財政・金融緩和)」と日中関係の緊迫化により、トリプル安(円安・株安・債券安)の様相を呈した。
歴代の米国政権は、台湾に関しては「戦略的曖昧性(strategic ambiguity)」(軍事介入の有無を明言しない)を標榜してきており、日本の歴代首相も「曖昧さ」を踏襲してきた。しかし、高市首相が「存立危機事態」に言及して「曖昧」から「明確」に踏み込んだことで、抗日戦争勝利80年を迎えた中国は、内政干渉だと強硬に反発している。
現状の対日制裁は、人の規制に留まっているが、レアアース(希土類)などのモノの規制に拡大した場合、高市政権が掲げる強い経済への目論見が頓挫する可能性、すなわち「高市トレード」(円売り・株買い)が巻き戻される可能性にも警戒しておきたい。
(山下)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
市場概況 東京為替見通しドル円 本邦通貨当局による円安対応策に要警戒か
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