ブーム去っても ゴンチャ独り勝ち
そこでゴンチャでは、それぞれの工程で、数秒単位で製造時間を短縮できないか試行錯誤を進める。一例を挙げると、フルーツティーはそれまでシェイカーで振っていたものの、刷新後はカップに入れてかき混ぜるように改良。味に影響が出ないことを検証しつつ、細かいロスを削っていく。
ゴンチャは、世界に2200店を展開する台湾発のティーカフェだ。カスタマイズできるのが特徴で、5種類からまずお茶を選び、次に甘さを4段階、氷の量を4段階、さらにパール(タピオカ)、アロエ、ナタデココ、ミルクフォームのトッピングから最大3種類を選び、自分好みの一杯を楽しめる。ゴンチャが日本に上陸したのは2015年で、タピオカブーム以前のこと。「日本にティーカフェ文化を作る」ことがその狙いだったのだが、2018年にタピオカブームの波が押し寄せ、期せずして売上がそちらに偏ってしまったという。
飲食ビジネスでは、店舗数を1つの成長の指標として見ることが通常の考え方です。そうした中、ゴンチャでは、店舗数よりも重視している指標があります。それが、「顧客満足度」です。
「タピオカなんてミーハーな女子高生が飲むもの……」 偏屈な先入観を抱いたまま、ブームが短命に終わっていくのを傍目に見ていたのは、たしか2019〜2020年頃だった。
そこから、ティーをベースとして商品開発を進めました。ティーということからフルーツとの相性も良く、ゴンチャではタピオカ以外でもナタデココやミルクフォーム、アロエのトッピングを用意していて、その日の気分に応じて味を変えられるようにしています。コーヒーに比べるとアレンジの方法がたくさんあり、ティーカフェならではの強みになっています。
約7000億円の市場規模があるプレミアムカフェ市場のうち、座ってお茶を飲めるティーカフェ市場は300億円くらいと言われており、その中でもゴンチャの店舗数は国内ティーカフェチェーンの中でトップに位置づけられます。
Profile つのだ・じゅん 1971年生まれ。東京生まれ、ブラジル・神奈川育ち。アメリカの大学を卒業後、大手自動車メーカーに勤務。後に独立し、約10年に亘り、スポーツや音楽イベントの企画運営・マーケティングに携わる。2010年日本サブウェイ合同会社に入社。マーケティング・経営企画等を経て、2016年同社社長に就任。2021年10月、株式会社ゴンチャ ジャパン代表取締役社長に就任。セルフオーダーKIOSKやモバイルオーダー導入でデジタルシフトへの注力、売上に繋がる顧客&従業員ロイヤルティ(推奨度)に着目したプロジェクト『Happiness Project』の発足など、おしゃべり歓迎のティーカフェブランドとして年間来客数3000万人超えの成長に導く。
──タピオカのイメージが強い御社ですが、真のコンセプトはティーカフェです。 角田 僕が着任した際に、初代代表の葛目良輔氏にゴンチャ上陸の経緯やブランドにかける想いについて聞きに行ったことがあります。そこで彼は、「タピオカ屋としてゴンチャを持ってきたというよりは、ティーカフェとして広げていきたい」とおっしゃっていました。 そのため上陸当初から、ティーカフェブランドとしての店づくりやオペレーション構築に取り組んできたそうです。そこに、たまたまタピオカブームがやってきて一気に注目されるようになりましたが、決してタピオカ屋として持ってきたわけではありません。 ──確かに、ゴンチャのタピオカはデフォルトではなく、トッピングの一種として提供されています。ベースとなるティーには、どのようなこだわりを持っていますか。 角田 まず、素材に関しては厳選した茶葉を使用しています。中でも、阿里山ウーロンティーは一般的な茶葉の値段の3倍に相当する高級茶葉です。これは、台湾の創業者のこだわりで、使用する茶葉やお茶の淹れ方などを含めて当社が引き継ぎました。 ──品質管理はどうしていますか。 角田 お茶の品質は変わりやすく、我々が基準とする美味しさを保てるのが現状で4時間くらいです。そのため、現在は抽出してから4時間経過したら廃棄するルールになっています。 ──そうなると、結構なロスが発生しそうです。 角田 お茶の種類によっては少しのロスが発生しますが、そこは抽出の量を調整してロスのコントロールをしています。そのため、一般的な飲食店と比較するとロス率は相当少なく、数%にも及びません。ですが、今後はお茶の保存方法を変えるなどして、より長く美味しい状態を保てるように進化させていきたいです。 ──素材と鮮度にこだわるティーをベースに、甘さや氷の量、トッピングを選んでいくカスタマイズ式がゴンチャの特徴です。 角田 トッピングは、アロエ・ミルクフォーム・ナタデココ・パール(タピオカ)の定番4種類に加え、季節限定が1種類となっており、お客様の7割がオーダーされます。ベースのティー5種類にカスタマイズを加えると、その組み合わせは約1万通りに上ります。 また、新商品は月に1回程度で出しており、昨年12月はあまおう和紅茶とあまおうⓇゼリーを使ったデザートドリンクを販売しました。そのほか、ハロウィンに合わせたアップル&ブラッドオレンジや、新茶の出5月下旬には一番摘み抹茶ミルクティーなどを提供しています。 ──兼ねてより一番人気のトッピングであるタピオカは、他社とどう違うのですか。 角田 当店のパールはモチモチ感を出すために、茹で・蒸らしの工程を踏んでいます。他社のことはよく分かりませんが、それなりのボリュームがないと調理は難しいので冷凍を採用しているところが多いかもしれません。手前味噌ですけど、ゴンチャのタピオカは他社と比較して美味しいとの声はいただきますね。 ──以前はコーヒーも提供していましたが、現在は取扱店が減っているようです。 角田 24年4頃までは全店でコーヒーを提供していましたが、現在は基本やっていないです。メニューを増やすことは簡単ですが、オペレーション効率やお客様視点での選びやすさでみたときに、ニーズのある商品にフォーカスした方がよいと考えました。そのためコーヒーに限らず、お客様のニーズが少ないようであれば取扱いを止めるなど、メニューの改廃は常にしています。 ──一方で、昨年からコンビニへの卸も手掛けています。 角田 24年7月2日から全国のセブン-イレブンさんで「貢茶黒糖烏龍ミルクティー」と「貢茶阿里山烏龍ピーチティーエード」の販売を行っています。 リテールは着任当初からやりたくて、各社にお声掛けしていました。何が狙いだったかというと、「お茶のゴンチャ」という認識を広げることです。「ゴンチャはタピオカ屋」というイメージがずっとありました。もちろんタピオカもありますが、お茶のゴンチャを普及させるために全国のリテールでティーを販売する機会を探していました。 結果、セブンさんと最強タッグを組めることになりました。我々のお店は47都道府県すべてにないので、セブンさんを通して全国でゴンチャの味を楽しんでいただける状況が今まさに実現できています。 ──そのペットボトル飲料の販売実績は。 角田 販売4カ月で1800万本を販売しました。リテール販売はずっとやりたいと思っていましたが、コンビニは棚取りが結構厳しいので、やったはいいけどあっという間に終売になったらどうしようという不安もありました。しかし、販売当初は3カ月分が3週間で売れるなど、思った以上に好評をいただきました。黒糖烏龍ミルクティーは、当面販売できそうです。
2018年、LCC就航で台湾旅行が人気となり、これをきっかけに火がついたタピオカドリンクブーム。しかし、ピークを迎えた2019年以後、ブームは陰りを見せる。店の乱立で希少性が薄れたのに加え、新型コロナによる外出控えで、客足が激減したのだ。しかし、完全にブーム終息したと言われる中で、今もなお出店拡大を続けているチェーンがある。「ゴンチャ」だ。かつてはタピオカドリンクの代名詞的なブランドの一つだったが、なぜブーム後も好調なのか。運営会社であるゴンチャ ジャパン(東京都)社長の角田淳氏に聞いた。
通常、社長視察というと仰々しさを感じ、従業員にプレシャーを与えるという印象もあるが、ゴンチャの場合、社長が何度も訪れ、かつ角田社長のフランクな性格から従業員は緊張することはないとのこと。逆に、角田社長にお店に来てもらえると嬉しいと感じる従業員のほうが多いようです(これは⑤の特徴にも関連します)。
では角田社長は、ブームも去り、コロナ禍で売上が低迷する中、どのようにして、ゴンチャを成長させたのでしょうか?
ゴンチャの従業員のほとんどは、アルバイト。ゴンチャでアルバイトの募集をかけると、求人倍率は10倍以上に。他の飲食店がアルバイトの採用に大苦戦している中、ゴンチャでは真逆の状態。
とはいえタピオカは、ゴンチャにとっても「こだわりの強い」トッピングではあった。店内調理をすることででの調理にこだわり、もちもちと歯ごたえのあるタピオカを提供、ブームを牽引した。だからこそ「終焉」のインパクトは大きかったはず。ブーム後も生き残っている理由について角田氏は、「アジアのお茶がメーンの大手チェーンがほかにないのが大きいのでは」と分析する。
角田社長は、「このクオリティのお茶は意外と飲めないと思います。もちろん、台湾の阿里山茶など厳選した茶葉を使用していることもありますが、お茶の淹れ方、それが一番のゴンチャの強み、こだわりです。」と話をしています。
「それこそ効率的なオペレーションを目指して、一時期はメニュー削減に踏み切ったものの、復活を望む声が多く悪手となった。逆に言えば、タピオカブームは去ったものの、コアなファンの多さを再認識したので、舵を切り替えて限定メニューを拡充した。


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