ウナギ規制拡大案 否決の背景
規制強化はEU(欧州連合)が主張した。ウナギの資源減少を理由にワシントン条約の「付属書2」の対象にウナギ全種類を含めるよう求めた。科学的な見地に基づいて輸出国に許可書の発行を義務付ける措置となる。日本はウナギの国内供給の7割を中国などからの輸入に頼っており、規制が強化されれば事務負担増の影響で輸入が停滞する可能性が指摘されていた。
ワシントン条約締約国会議で、ウナギ属全体を対象にした規制拡大案が否決された。このニュースの出発点は、2009年に同会議で規制対象となったヨーロッパウナギにある。しかし厳しい規制にもかかわらず密輸が続き、アジアで他種と混ぜられる“ロンダリング”が問題化している。そこでEUなどは「似た種もすべて規制しないと抜け道が塞げない」と主張する一方、日本は「科学的根拠が不足している」と反対している。ここでは、ウナギをめぐる国際規制の争点を三つの視点から整理したい。
ワシントン条約は生き物を守るための包括的な条約ではない。目的は、国際取引が絶滅の危険を高めている場合に、その取引を制限することだ。つまり「国際取引が主な原因かどうか」を科学的に示す必要がある。密輸対策のために、状況の異なる他のウナギまで一括で扱うのは、本来の枠組みから外れやすい。
水産庁の信夫隆生次長は会議で反対を表明し、米国に加え中国や韓国などアジア、アフリカの国々が反対の姿勢を示した。最終決定する12月5日の本会議でも否決が維持される見通しだ。
【サマルカンド=秋山洋成】絶滅の恐れがある野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約の締約国会議の委員会が27日、中央アジア・ウズベキスタンのサマルカンドで開かれ、ニホンウナギを含むウナギ全種類の国際取引の規制強化案を反対多数で否決した。採択されれば取引価格が上昇する恐れがあったが、科学的根拠の不足を理由に反対していた日本の立場が認められる形となった。
ヨーロッパウナギは2009年から国際的に取引が厳しく制限されている。それでも密漁された稚魚がアジアに運ばれ、現地の養殖池でニホンウナギなどと混ぜられるロンダリングが続いている。稚魚はどの種も見た目がほぼ同じため、「別のウナギです」と偽装されれば区別がつかない。EUなどが「似た種もまとめて規制しないと密輸は止まらない」と訴える背景には、こうした抜け道の多さがある。
ただ制度的には正しくても、資源を守る責任は残る。日本がウナギの未来をどう守るのかが次の焦点だ。
ニホンウナギも減っているが、その理由は気候、海流、河川環境など複数の要因が重なっており、国際取引が主因と断定できる状況ではない。日本や台湾は漁獲規制も進めており、「まずは現行の対策を強化すべき」という立場だ。


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