
◆ドル円、日米金融政策の方向性の相違から上値限られる
◆ドル円、円先安観も根強く下値も限定的
◆ユーロドル、相次ぐ米重要指標に左右
予想レンジ
ドル円 154.00-158.00円
ユーロドル 1.1450-1.1650ドル
12月1日週の展望
ドル円は、神経質な展開が想定される。まず、米利下げ観測が再燃していることが上値を抑えそうだ。21日にウィリアムズNY連銀総裁が「近いうちに再び利下げを行う余地がある」と発言したことをきっかけに一時は30%台まで低下していた12月米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ確率が90%まで再び上昇している。また、利下げに積極的なハセット国家経済会議(NEC)委員長が次期米連邦準備理事会(FRB)議長の最有力候補となっていることも利下げ期待を高める材料となっている。
来週は12月1日に11月ISM製造業景況指数、12月3日に11月ADP全米雇用報告や11月ISM非製造業指数、12月5日に12月ミシガン大消費者態度指数速報値や9月PCEデフレータの発表が予定されており、結果次第で来年以降の米利下げへの思惑を高めるかどうかにも注意したい。
一方で、日銀の利上げに対しても、増日銀審議委員が「利上げをしていい環境は整ってきていると思う」と述べたほか、「12月会合に向けて、日銀は市場の利上げに対する準備を整えるためにコミュニケーション方法を調整している」との一部報道を受けて、12月利上げ観測が50%台まで上昇している。短期的ながらも日米金融政策の方向性が明確になったことでドル円の上値は重くなりそうだ。
ただ、今週、このような状況の中でも円高・ドル安がそれほど進まなかった背景としては、高市政権の財政拡張政策による円先安観が根強いことが挙げられるだろう。10月以降、ドル円が150円から158円手前まで目立った下押しもないまま、強い地合いを続けていたこともあり、実需勢をはじめ、買い遅れている市場参加者も多く、押し目買い意欲の強さも下値を支えている。また、今週は週末にかけて米感謝祭で市場参加者がかなり少なかったことから値動きを抑制させた面もあるだろう。例年、感謝祭明けからクリスマスにかけては海外勢を中心に長期休暇に入る向きも多いため、さらに値動きが鈍くなる可能性には留意しておきたい。
ユーロドルはドルの動向次第となるだろう。米重要指標が多く発表されるため、その結果に左右されることが想定される。なお、今週は10月29-30日分欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨が公表され、「利下げサイクルは終了した」との見解が示されるなど、欧米金融政策の方向性の違いがさらに明確になっている。
11月24日週の回顧
ドル円はもみ合い。週明けこそ157.19円まで上昇したが、米利下げ観測の高まりから売りが強まり、週半ばには一時155.65円まで下押しした。一方、押し目買いも入り156円台半ばまで切り返した。ユーロドルは強含み。週前半は1.15ドル台前半で小動きだったが、米利下げ期待から週後半伊かけては全般ドル安が進んだ流れに沿って一時1.1613ドルまで上昇した。(了)
(執筆:11月28日、9:00)
(小針)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
日銀の利上げ見通しに不透明感が強まる状況は 円安の一因となろう
日銀の年内利上げ見通しにも不透明感が強まっている。9月末時点でOIS市場では12月の利上げ確率が60%台にあった。しかし、今の利上げ確率は30%台へ急速に低下。対照的に来年1月の利上げ確率は40%台へ上昇している。市場は、次回利上げが年明けにずれ込むことを織り込み始めている。日銀の利上げ見通しに不透明感が強まる状況は、円安の一因となろう。
昨日、日銀の野口審議委員が大分県金融経済懇談会で講演し、今後の利上げについて、2%の物価安定目標の実現見通しに合わせて段階的に慎重に行う必要があるとの考えを示しました。野口委員は、先行きの利上げペースについて「早すぎても遅すぎても問題が生じる」と述べていました。日銀のシナリオに沿って、2027年度までの見通し期間の後半に物価目標が達成されるならば、それに向けた適切なペースが重要と指摘。経済・物価への影響を確認しながら、「時を置いて小刻みな利上げが現実的と」語っていました。その上で、「政策調整は慎重に行われるべきだ」と主張し、インフレ期待が2%付近で定着するには、「まだ時間が必要」と発言しました。さらに「政策金利の拙速な引き上げは、賃金上昇のモメンタムを失わせ、2%目標の達成を遠ざけてしまうリスクをはらんでいる」と、全体としては想定していたよりも「ハト派寄り」の見解を示しました。野口氏は前回9月の講演では、「タカ派寄り」のスタンスを示していたこともあり、市場にはややサプライズ。株式市場では株価がやや上昇する場面がありました。



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