技術面でもドンキは革新を進めています
このようなレイアウトは、来店客が“目的の商品だけ買って帰る”という流れを断ち切ります。視線を横に引き、思わぬ商品との出会いを演出する──これはドンキの売上における大きな武器です。
面白いインタビューでした。ドンキといえども店舗数が拡大する中で調達構造の安定化が必要になる上、デフレから非デフレに移る際、需要の質的変化を受け止める商品群が必要になったようですね。 それに対して、まずは価格訴求型のPB情熱価格を導入し、次にそれを3ジャンルに分けるというのはタイムリーな戦略だと思いました。その青写真の中で外部から人を吸引できるところがすごいですね。
たとえば、渋谷のドンキでは若者向けのコスメやスマホグッズが多く並ぶ一方、地方のMEGAドンキでは生鮮食品や生活雑貨が目立ちます。この差異こそが、“その地域のニーズに合ったドンキらしさ”をつくっているのです。
ドンキで購入した商品をレビューできる「マジボイス」を見てみると「最近食べたかりんとうの中で1番おいしかった」「甘くておいしい!!毎回2袋ずつ買っていきます!!」「孫から何時も買ってきてと頼まれます」といった声が寄せられていました。
ドン・キホーテのもう一つの大きな特徴は、「圧縮陳列」と「POP洪水」によって買い物をエンターテインメント化した点です。整然とした商品陳列を重視する一般的な店舗とは一線を画し、ドンキはあえて“ゴチャゴチャ感”を演出することで、顧客の探索意欲を刺激しています。
「圧縮陳列」とは、段ボールごと商品を積み上げ、通路の左右にびっしりと並べる陳列方法。商品棚には空間がなく、まるで倉庫のような密集感があります。普通の小売業なら「買いづらい」「見にくい」と避けるレイアウトですが、ドンキはそれをあえて武器にしています。
このような構想によって、マーケティングの質が格段に向上しています。機械では生み出せない“人間の気づき”と、AIの効率性が融合することで、ドンキの売り場はさらに「買いたくなる空間」へと進化しているのです。
ドンキホーテは、この小売不況と言われる中、成長を続ける代表企業です。その強さは何か、と取材していると、「個店主義」に行き着きます。その店舗その店舗にくる客にとって欲しいもの、物の価値は何か…。売り場を担当する一人一人のが、競争によって鍛えられた勘を持っている。売り場から吸い上げられた顧客のニーズをもとに作られるプライベートブランド。ものづくりへの考え方をお聞きしました。
技術面でもドンキは革新を進めています。注目すべきは「ブルーマシュマロ構想」。これは、AIによる自動値付けと、現場スタッフの“勘と経験”をハイブリッドで活用する取り組みです。
しかし、ドンキでは売り場担当者が「自分が仕入れて、自分で値付けし、自分で売る」ことを基本としています。
つまり、✅「ドンキに行く=買い物を楽しむ」体験そのものが価値となっており、目的買いではなく“体験買い”の場に進化しているのです。
「松竹梅の松と梅だけがあって、竹がない」という商品構成は確かにドンキならではだと言われてみてハッと気付きました。それがドンキの強さを作ってきたわけですが、ここにきて「竹」という中価格帯を埋めるためのPB開発という話も納得です。一般的な小売店は松という見せ筋と竹という売り筋しか揃えられませんが、ドンキだからこそ松竹梅すべてを揃えられる。中価格帯のPBが成功したら、他にはないドンキならではの特徴がさらに強化されるのではないかと思います。
あの空間で「松竹梅」の「松」も売れるというのが面白いところだと思っている。「松」がうれなかったら「松竹梅そろえよう」というニーズも生まれないわけで。ハイブランドは、例えばバーバリーとかが代表的だが、店舗展開を各地域で委託していたのを自社化している。それは購買体験含めてのブランディング・体験だから。そのなかで、全く違う空間なのに、置いておいて売れる(おまけに実質機能では等しい「竹」もある)のだから、商売というのは面白い。あとPBの点だけでなく、全体管理と個店管理のバランス。チェーンの管理方法については、全体と個店、歴史や業態によってトレンドがあり、今はどちらかというと個店に権限を渡す方がトレンドだし、うまくいっている印象。たとえば小売りではないがAPAホテルも値付けについて各ホテルのトップに任せていたと記憶している。はるか昔は、情報の流通が難しかった。なのでそもそもパパママショップというか商店街が中心だった。そこに、GMSなどが現れ、規模ゆえに価格を安くできたし、その規模と合わせてPOSなどで管理して情報を集中統括した。そこに個店は構造的に勝てなかった。でも情報流通が圧倒的に簡単になった。規模がなくても安く調達できるようになって規模の優位性が減り、個店・個々の地域ごとの特徴にフィットしたほうが受け入れられる。また情報管理自体も進化して、小さいチェーンでも情報管理ができるようになった(固定費→SaaS型変動費的な変化)、全体管理を本部でしつつ、権限を各店舗に与えるといったことも容易になった。こういった情報の取り扱いやすさや、それと関連した規模メリットの縮小が背景にあると思うし、ドンキという業態が時流をとらえられている構造サイドではあると思う。
通常のPBは、メーカーのOEM(相手先ブランド製造)を使い、既存商品にロゴをつけるだけというものも少なくありません。しかしドンキの「情熱価格」は、まず“販売価格”を決めてから、そこに合わせて商品を開発します。
このユニークな姿勢こそ、ドンキがPBで差別化を図り、ブランド力を高める秘密なのです。


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