円安起点の物価高 警戒強める日銀

日本銀行の植田総裁は9月20日の金融政策決定会合後の記者会見で、足もとで進む円高によって、「7月に指摘していた物価見通しの上振れリスクは相応に低下した」とし、さらに「政策判断にあたり、様々なことを確認していく時間的な余裕はある」と説明した。加えて、米国経済の減速リスクを警戒する姿勢を見せた。

実は、為替市場では1年前にも同じような光景が見られた。2024年も年の瀬にかけて円安が加速。25年初めにかけて円相場は一時158円台後半まで下落し...

さまよう異次元緩和黒田体制最長の８年半（中）円安・株高誘導の功罪、「安いニッポン」助長も。

日銀「12月利上げ」は国民民主党の政策協力と円安進行が後押し!?

賃金上昇による個人消費の持ち直しやインバウンド需要の堅調維持がプラス材料になったとみられる。他方で、気象庁が8月に発表した南海トラフ地震臨時情報を受けた帰省・旅行の見合わせなどの影響（コラム「南海トラフ地震への警戒が経済に悪影響：旅行関連消費は1,964億円程度減少も」、2024年8月13日）や、台風10号に伴う外出の減少がサービス業の逆風になった可能性が考えられる。その影響は、対個人サービスが11ポイントの大幅低下となったことに表れた可能性もあるだろう。

年の瀬が近づくなかで、にわかに円安圧力が強まっている。前週には一時、1ドル=158円に迫るなど、1ドル=160円台の歴史的円安が再び視野に入ってきた。政府・日銀は円安の進行が輸入物価の上昇を通じ、懸案である国内の物価高をあおる構図に警戒を強めている。