
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年11月28日 15時30分
155円で下げ渋ればドル円は底堅さ維持、失敗なら更なる調整も
米ドル/円調整、日米金融政策巡る思惑で
米ドル/円は上値の重い展開でした。序盤こそ日本の財政悪化懸念を背景とした円売りで、米ドル/円は157.184円まで上昇しました。しかし、米国の民間雇用者数減少を示唆する指標結果や、消費の低迷を示すデータのほか、消費者心理の悪化を示す指標から米国の12月利下げが意識され、米ドル/円は155.655円まで下落。日銀の追加利上げ期待も米ドル/円の上値を抑制しました。ただ、下落一巡後は、ホリデーシーズン入りで市場参加者が減少する中、相場を動かす材料に乏しく、米ドル/円は156.00円を挟んで方向性を欠く展開となりました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
植田総裁もタカ派に一歩寄るのか注目
来週も日米の金融政策に対する思惑が引き続き相場のドライバーとなる見通しです。日本では植田日銀総裁の講演が予定されており、12月利上げ判断に関するヒントが示されるか注目されます。前回会合では「経済・物価見通しの確度は少しずつ高まっている」「春闘に向けた動きなど、もう少しデータを見たい」としていましたが、より利上げに対して踏み込んだ認識が示されれば円買い戻しの動きが強まる可能性があります。逆に肩透かしとなれば円売りが再燃する展開も想定されます。
米国ではADP民間雇用者数や個人消費支出など重要指標が発表されます。労働市場の悪化や消費減速が確認されれば、FRBの追加利下げ観測が強まりドルの重石となるでしょう。ただし、金利先物市場ではすでに12月利下げを9割近く織り込んでいるため、波乱があるとすれば好調な経済データが示され、過度な利下げ期待が後退する局面と考えられます。
総じて、日米双方の金融政策に関する期待と不透明感が交錯する中、米ドル/円は上値の抑えられた展開が続く可能性が高いとみられます。

155.00円割れで153.00円が視界入り(テクニカル分析)
米ドル/円は、上昇トレンドが変調した様子はみられないものの、11月20日に157.891円まで上昇したあとは、上値をじりじりと切り下げる展開が続いています。155.16円(執筆時点)の21日線移動平均線でサポートされれば、160円に向けて下値を切り上げていきそうですが、同レベルを割り込んだ場合、153.50円付近まで目線が下がる可能性はあります。
【米ドル/円チャート 日足】

出典:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:USD/JPY:153.500-158.000
12/1 週のイベント:

一言コメント
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