
30日のニューヨーク外国為替市場でドル円は154.45円まで大幅に上昇。植田日銀総裁の発言「利上げの是非やタイミングは現時点では予断持っていない」を受け、日銀は利上げに消極的との見立てからドル買い円売りが進んだ。ユーロドルは米長期金利の上昇などから1.1547ドルまで下落した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、12月の金融政策変更に対して消極的なパウエルFRB議長と植田日銀総裁の見解を受けて、上値を追う展開が予想される。
日米の金融政策への思惑からドル高・円安が進んでいるが、これまでは財務省による円安牽制発言やドル売り・円買い介入が上値を抑えてきた。しかし、片山財務相が昨日、日銀の金融政策現状維持に対して「景気情勢を勘案した極めてリーズナブルな判断」との見解を示し、円安への懸念を表明しなかったことで、本邦通貨当局のスタンスにも要注目。
8時30分に発表される10月東京都区部消費者物価指数(CPI)は、前年比+2.6%と9月の+2.5%からの上昇が予想されており、全国CPIの先行指標とされる。もっとも、9月の全国コアCPIは同比+2.9%で42カ月連続でインフレ目標2%を上回り、「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」である「刈り込み平均値」も同比+2.1%だったにも関わらず、日銀は政策金利0.5%を据え置いたままとなっており、インフレ率への注目度は低下している。
ドル円は、パウエルFRB議長の発言「12月米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ決定は既定路線(foregone conclusion)ではない」がドル高要因、植田日銀総裁が12月会合での利上げに言及しなかったという円安要因を受けて、154.45円まで上昇している。
ドル円のテクニカル分析では、2024年7月3日の高値161.95円を頭とする「ヘッド・アンド・ショルダー」を形成中であり、頭の161.95円から右肩の158.87円(1/10高値)を経由する「下降三角形」の上辺は、本日154.32円に位置している。本日は、月末の特殊玉が飛び交う中での攻防戦に注目しておきたい。
FOMCでは、2会合連続で0.25%利下げが行われたものの、パウエルFRB議長は9月には「リスク管理(risk management)」、10月は「既定路線(foregone conclusion)」という単語を使うことで、利下げ圧力をかけ続けているトランプ米政権に対して、タカ派的な利下げを打ち出している。ベッセント米財務長官は、パウエルFRB議長の発言に対して、組織の大幅な見直しが必要なことを示していると批判している。
一方の日銀金融政策決定会合は、6会合連続で政策金利を据え置き、植田日銀総裁は12月会合での利上げに言及しなかったことで、高市政権の「責任ある積極財政」や予算編成次期に配慮した金融政策となっている。
トランプ米政権は、関税や円安抑制を通じて日米貿易不均衡是正を標榜しており、ベッセント米財務長官は、植田日銀総裁との会談、6月の為替政策報告書、9月の日米財務相共同声明、10月の日米財務相会談などで、日銀の利上げによる円安抑制を促してきた。そして、日米関税合意での対日税率15%は、トランプ米大統領が実施状況に不満を感じれば、25%に戻す可能性を示唆していた。
27日の日米財務相会談に関して、日本政府関係者によると、ベッセント米財務長官は今年9月の日米為替共同声明の合意を守るように片山財務相に念を押したとのことである。片山財務相は「日銀による利上げを促すというようなことではなかったのではないかと思う」と述べたが、関係者は「ベッセント米財務長官の意図を理解していない」と述べており、トランプ米政権による「高市トレード」(円売り・株買い)に対するブレーキには警戒しておきたい。
(山下)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
市場概況 東京為替見通しドル円 日米金融政策への思惑から上値を追う展開か
一方で、米連邦公開市場委員会(FOMC)は前回(5月6-7日)で利下げを急がない姿勢を改めて強調。パウエル連邦準備理事会(FRB)議長も早期の利下げには慎重な見方を示しており、こちらは「タカ派的な金利据え置き」と言えそうです。今回は両中銀の方針にどのような変化が見られるかがカギとなります。
19日10:34 高田日銀審議委員 「個人消費をみると、物価上昇の影響などがみられるものの、緩やかな増加基調」 「物価上昇が賃金上昇に先行してきたが、足もとでは、昨年の春季労使交渉を受けた名目賃金のはっきりとした上昇を背景に、実質賃金のプラス転化に向けた動きが生じている」 「物価と賃金のギャップが縮小することで、個人消費も緩やかな増加を続けると考えている」 「輸入物価上昇率をみると、足もとは落ち着いており、2022年以降のように急な価格転嫁をもたらす大きさではない」 「一段のギアシフト、金融緩和度合いの更なる調整を進めることが必要だと考えてきました」 「1月にかけて米国経済の堅調さが改めて確認され、日米の金融政策スタンスの違いも縮小したといえる」 「2%の物価安定の目標に近づいているとの認識のなか、過度な緩和継続期待が醸成され、物価上振れリスクや金融の過熱リスクが顕在化しないよう、1月に実施した追加利上げ以降も、ギアシフトを段階的に行っていくという視点も重要」 19日14:43 「ギアシフト、金融緩和の度合い調整の意味で使っている」 「企業、前向きな動きが続いている」 「米経済の先行き、不確実性は低下している」 「実質金利のマイナス幅はまだある」 「経済の実態に沿った思惑で長期金利は動く」 「保有ETF売却はすぐの議論ではなく、時間かけた対応が必要」 「物価の2つの変動要因、どちらかといえば上昇方向」 「生鮮食品の価格、家計のマインドや物価予想には当然影響」 「中立金利は虹のようなもの、近づけばわからなくなる」 「先行きの利上げは、予断持って対応することではない」
本日の東京時間でドル円は、米金利の低下や日銀の早期利上げ観測もあり上値が限られそうだ。もっとも、本日は5・10日(ゴトー日)で相応のドル買いが出る可能性があることや、明日に全国1月消費者物価指数(CPI)の発表を控えて、様子見ムードが広がるかもしれない。
19日のニューヨーク外国為替市場でドル円は反落。終値は151.47円と前営業日NY終値(152.06円)と比べて59銭程度のドル安水準だった。日銀の早期追加利上げ観測が改めて台頭する中、全般円買いが先行。ダウ平均が一時240ドル超下落し、ナイト・セッションの日経平均先物が420円下げたことも相場の重しとなり、一時151.25円と日通し安値を更新した。
円やユーロ以外では、本日は豪州から1月雇用統計が発表されるため豪ドルの動きにも注目。一昨日には豪準備銀行(RBA)、昨日はNZ準備銀行(RBNZ)とオセアニア国が相次いで政策金利を引き下げたが、声明文を含めてある程度織り込まれていたことで、市場が期待したほどの値動きにはならなかった。前回(昨年12月分)発表された豪州の失業率は4.0%と、RBAの四半期金融政策報告における2024年末見通し4.4%よりも好結果となった。先日のRBA理事会後にブロック総裁が「雇用市場の強さに驚いている」と発言したが、雇用情勢が引き続き強固だった場合にはRBAの追加利下げのペースが緩やかになる可能性もありそうだ。
なお、トランプ米大統領は自身のSNSに「ウクライナ戦争終結へ向けロシアとうまく交渉」と投稿した一方、ウクライナのゼレンスキー大統領については「選挙をしない独裁者、迅速に行動しないと国がなくなる」と指摘した。市場では「トランプ氏とゼレンスキー氏の関係は間違った方向に向かっている」との声が聞かれた。
最後に今後1カ月間の経済指標や重要イベント等も確認しておきます。注目は日米の金融政策。両中銀の前回までの金融政策方針を振り返っておくと、日銀は前回(4月30-5月1日)の金融政策決定会合で物価目標の到達時期を従来から後ずれさせており、「ハト派的な金利据え置き」となりました。
日米の金融政策以外では、欧州と米国の経済及び政治的な摩擦の拡大が顕著なことで、リスク回避的な動きで円が買われやすい地合いでもある。第1次政権時からトランプ米大統領は、北大西洋条約機構(NATO)の防衛費を巡る拠出金に不満を示し、欧州連合(EU)の通商政策に対しても強硬姿勢を見せていた。
また、前述したように米国との関税交渉なども相場を動意づかせる材料として引き続き注意が必要となります。注目イベントはカナダで開催される主要7カ国首脳会談(G7サミット)ですが、日程は6月15-17日と日米の金融政策決定会合と重なっており、6月中旬は相場も大荒れとなる可能性があるでしょう。さらに期間内ではありませんが、7月9日に相互関税の上乗せ猶予期限を迎えることも併せて覚えておきましょう。
17日の東京外国為替市場で、ドル・円は1ドル=141円台で上値の重い展開か。前日は夕方に中国の関税関連報道を受けて一時ドル高が進んだが、米国時間は日米の関税交渉を前にドル売り・円買いが強まった。関税交渉にトランプ米大統領が突然出席を表明するなど波乱含みで、東京時間も米国側が求めるとみられている円安是正への思惑がドル・円の上値を抑えそうだ。
20日04:03 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(1月28日-29日分) 「当局者は経済が好調であれば、政策を抑制的な水準に維持可能と認識」 「当局者は金利調整の前にインフレのさらなる進展を希望」 「不確実性が高いため、慎重なアプローチが必要」 「インフレ率は不均一な進捗で2%に向かうと予想」 「インフレリスクは概して上向きに偏っている」 「金融安定に関するさまざまな要因を監視する必要」
もっとも、米連邦準備理事会(FRB)が公表した1月28日-29日分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で「債務上限問題解決までバランスシート縮小の一時停止や減速が必要になる公算」との見解が示されると、米長期金利が低下。ドル円にも売りが出て151.39円付近まで押し戻された。
ただし、高田審議委員はこれまでもタカ派的な発言を繰り返していたこともあり、想定の範囲内と受けとめられて円買いの勢いは限られた。ここから先の日銀の動向を占うのは、今後発表される経済指標や春闘の結果などで、ほかの審議委員がどの程度まで追加利上げへと傾くかが市場の注目となる。


コメント