万博の海外館 解体業者が契約敬遠
混乱の影響は、現場にも不満となって広がっている。「今の万博工事は不安しかない」。パビリオン建設に関わる建設会社の幹部は、万博会場で現場作業員の声を集めた資料を手にそう語る。
海外パビリオン建設工事の遅れで予定通りの開催すら危ぶまれる万博に、建設業界は懸念や危機感を募らせている。資材価格の高騰など、業界全体にのしかかる構造的課題が対応をさらに難しくしている。
万博協会は建物の解体後、2028年2月までに土地を大阪市へ返還する契約を結んでおり、市は2026年春に跡地の開発事業者を公募する予定だ。だが、支払いトラブルが長引けば、再開発の計画自体が遅れる懸念もある。
万博は未来社会の実験場がテーマだ。新たな移動手段である空飛ぶクルマ、会場内の全面的なキャッシュレス決済、バスの自動運転などの社会実装を目指す。協会は民間パビリオンの展示内容を一斉に伝える発表会を開いたり、実力派漫才コンビを使ったユニークな万博PR動画を作成したりして工夫を重ねる。
「相手当事者の発信により万博協会や関係者等にご心配をおかけし申し訳ございません。事実に反し、誤解を与える発言が相手当事者からあったことは容認できないと考えております。当社の立場を明らかにするため、相手当事者に対してしかるべき対応を進めております」
被害の拡大を受け、万博協会は融資相談などに応じているが、立て替えや無利子融資などの支援は「難しい」としている。
協会の後手の対応は、経済界の努力や万博の機運盛り上げムードに水を差す。国や自治体、民間企業の出向者で組織する協会だが、「情報が来ない。マネジメントが悪い」(関西経済界幹部)と批判の声がある。この10月、協会内に総合戦略室が新設された。国は経済産業省出身の三浦章豪氏を3カ月で近畿経済産業局長を退任させ、室長に充てた。組織内をとりまとめ、意思決定の遅いプロジェクトの加速を狙い、挽回を図る。
「開幕に間に合わせる」という大義のもと、下請けの職人たちは昼夜を問わず現場に立った。その献身が万博の成功を支えたことを思えば、協会が「民間同士の問題」と線を引く姿勢には冷たさが残る。
この場合、告訴の相手は国内事業者なので、比較的対応しやすかったのではないかと思います。国内業者に対しては、吉村知事も6月26日の会見で、機敏な対応を見せていました。とはいえ、万博協会が有効な対策あるいは救済策を打ち出さないので、被害事業者たちは裁判に持ち込むしかなくなっています。
2023年10月20日、万博協会の石毛博行事務総長は、会場建設費が1850億円から最大2350億円に増える見通しを公表しました。石毛氏は今年8月まで「1850億円の枠内に収める」と言い続けていました。一転して増額を打ち出したのは約2か月後で、急激な円安を念頭に「想定外でやむを得なかった」と弁解しています。
そして残り3分の1は経済界の負担。特に関西経済連合会は松本正義会長が「最大の努力をする」とし、経済界の資金集めを先導してきた。関経連は万博チケットの前売り券購入にも積極関与する。
国は、参加国側の未払いに備えた「万博貿易保険」を用意していたが、対象は元請け企業に限られ、下請けは救済されない仕組みだった。
まず、万博協会や関係者に詫びをいれ、そして、訴えた業者に対しては、「誤解を与える発言を容認できない」とし、「しかるべき対応を進める」と脅していることに驚かされます。
「どれだけ(予算を)削減し、(実現)できるか考えている」。大阪・関西万博で8人いるテーマ事業プロデューサーの1人、映画監督の河瀬直美氏は自身のパビリオン「河瀬館」の経済的課題に挑む。
読売新聞「挑む万博」プロジェクトでは、2025年大阪・関西万博やSDGs達成に向けたさまざまな取り組みを伝えます。


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